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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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 水曜日、部室に到着すると、私達4人が最初だったみたいで、即売会の後放置されたまんまだった。

「取り敢えず掃除しちゃう?」というメグたんの一言で、4人で一気に掃除を始めた。

 机を動かすのは重すぎて私たちだけじゃ無理だった。

 でも、箒だけじゃなくモップも使って本格的に取り掛かった。

 まずは机と椅子を拭いて、椅子は机の上に。


 本当は窓まで綺麗にしたいんだけど、如何せん部室が広すぎるのと、殆どの壁際は原材料のストックになっている。

 窓を拭くには足場を組む必要があるけど、そんなの私たちだけじゃ無理。

 どっちにしても床掃除や机を綺麗にするだけで大変なんだよね。


 部室の前半分の床掃除が終わった頃、タチアナ先輩やランビットが顔を出した。

「あら、お掃除ね。手伝うわよ」と貴族であるタチアナ先輩が手伝うと言えば、平民のランビットが手伝わないとは言えない。

 6人でせっせと掃除をして、ほぼほぼ終わり頃に「あら、掃除なの。ありがとう~。全員でしなくちゃいけないのに、本当にありがとう」とサラサ部長が嬉しそうに入って来た。


「今日は、この前の即売会の反省会をやるけど、夏休み前には部員全員で部室の大掃除も一度しないといけないわね。早めに業者に足場づくりをお願いしないとだわね」と、サラサ部長は机を拭くのを手伝ってくれた。

 人数が増えると作業が一気にスピードアップするね。


 そうこうする内に部員が集まり、全員が机に着いた。

「この前の即売会、みなさんお疲れ様でした。収支の発表と総括をしたいと思います」

 サラサ先輩の凛とした声でサクサクと反省会が進められた。


 香水瓶は思った以上の売り上げで、香水瓶を売るというアイデアと瓶のデザインも褒められたけれど、エッセンスオイルを抽出する2種類の道具の方が部員にはより評価された。

 ミニ冷蔵庫は台数は少なかったが、高級品なので売上額は相当な額に上ったとのこと。

 望遠鏡は殆ど売れなかったし、表札は売れたのは売れたけど経費を引くとあまり儲けが出なかったと言われて、表札組はしょぼんとした顔をした。

 今回の目玉の一つである掃除機なのだが、集客はできても貴族が多かったので客の食指があまり動いていなかったらしい。

 掃除機を本当に欲しがる可能性があるのは実際に掃除をする使用人であり、彼らに雇い主のために高い道具を買う動機も資金も無い。

 雇い主にしてみれば安い給料で使用人を雇えるので、掃除機より使用人の方が安くつくのだ。

 で、もう一つの目玉商品はキーホルダーだった。

 これは3年男子2人組がせっせこ作っていた物で、丸カンをたくさん作り、その先につける飾り部分を私たちと同じで購入したい人自身で作ってもらったり、貴族用に既に作った物を並べて売ったそうだ。

 シンプルに革を纏めて吹き流しみたいにしたものや、ガラスにお客様のイニシャルを刻んだ物など、面白デザインがいっぱいだったらしい。


 メグも私も、即売会中は自分たちの商品を売ったり、調合教室を開催するのに忙しく、他の人の作品をじっくりと見る事ができなかったのだ。

 そんな素敵なキーホルダーなら私も欲しかったなぁ。


 各自の売り上げから部より排出してもらった資材の費用を引いた半分は、作って売った者の取り分で、残りは全部錬金術クラブへ寄付となる。

 私の様に家からエタノール等の材料を持って来たりした場合、その分の金額は先に売り上げから引いて良い事になっている。


「みんなからの寄付、ありがたく受け取ります。ありがとう。また秋の即売会の時、どういった物を作って売りたいか、早い段階で決めて取り組んで下さいね」

 サラサ先輩が小銭で一杯の袋を揺すってジャラジャラ言わし、満面の笑みを浮かべた。


 今日の錬金術クラブは部室掃除と即売会の報告会だけで終わってしまったため、早い時間に部室を出る事になった。

「あややの方へ行くかぁ。リアの作るおやつも食べたいし、お風呂にも入りたいしな」

 なんて、フェリーペの一言で4人揃ってあややクラブの方へ移動した。


 部室の入口にはいつも通り数多くの女子生徒が屯しており、中を覗く事も、入る事もできないのによく出待ちみたな事が出来るなぁと感心しながら、玄関口に居る使用人に軽く頭を下げて中に入った。


「お!今日は錬金術クラブの方じゃなかったのか?」

「もう、ちぇっかく二人の時間をたのちんでたのに」

 そう言いながらもアドリエンヌ様は「今日のおやつは何にちゅるのでちゅか?」等と、速攻食べ物の方に気を取られた様だ。

 私イコール食べ物という図式、もう出来上がっちゃいましたよね?

 おほほほほ。


「アドリエンヌ様は今日、何を召し上がりたいですか?」と聞いてみたら、間髪入れず「そうでちゅねぇ。フローリシュトガーデン 光で出してるケーキが良いでしゅわ」なんてすぐにリクエストを言ってくるあたり、本当に私の料理がお気に入りの様だ。

 だから、ここのところ悪態を吐く事もなく、穏やかになったのかな?

 高価なサマーヤーンもふんだんにプレゼントしてくれたし。


 今からデコレーションケーキを作るには時間が足りないので、こっそりスキルを使いながらフルーツたっぷりの生クリームのケーキを仕上げた。

 桃のリキュールとか、オーブンに入れる直前までに仕上げた生地や、泡立てた生クリームなんかはスキルでポンポン出しちゃいました。

 スポンジの間に挟む缶詰めのパイナップルは、まだこの国にはないフルーツだけど、他のフルーツと混ぜちゃえば分からないはず!


 ちゃっちゃと作ってみんなをダイニングに呼ぶと、アドリエンヌ様が何時もの様に紅茶を淹れてくれた。

「今日はあまり時間がなかったので、飲茶は無しです」と宣言すると、闇王様はこの世の終わりとでも言いたげな表情になったが、「でも、今日のスイーツはウチのレストランで出している物よりワンランクアップの味に仕上げてあるので楽しんでくださいね」と言うと、すっかりご機嫌になった。


 ケーキをカットし食べ始めると、「オレとセシリオから女性陣にプレゼントがある」と言って、綺麗にラッピングされた箱を手渡してくれた。

 開けてみると私達が売っていた香水瓶が出て来た。

「お前たちが作って売ってた物だけど、すごく綺麗だったので女性陣だけで悪いが・・・・」と照れた様に言う闇王様。

 顔を真っ赤にして今までになく恥じらっているアドリエンヌ様。

 香水瓶の入った箱をしっかり胸の前で両手で抱え込んだまま、今にも倒れそうだ。

 でも、アドリエンヌ様、それは多分きっと、ウチの勇者にプレゼントしたい闇王様が苦肉の策で私たち二人を口実に使ったんだと思うよ。恐ろしいから、口には出さないけどね。

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