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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「まぁ、今年は洒落たモノがあるのね。自分で好きな香水をつくれると言うわけね」

 土曜日は保護者も来園しての即売会で、子供も幼いので、まだ若い母親なども結構な数顔を出してくれている。

 そんな中、自分で香水を作れるというのと、綺麗な香水瓶が人気を呼び、多くの奥方の注意を引く事に成功した。


 でも、お貴族様というのは他の人たちの前で何かを作っているところを見せるのは美しくないという理由で、なかなか調合に至るお客は出てこない。

 不思議なのは刺繍とかは女貴族同士で集まっておしゃべりを楽しみながら一緒にやるのが普通にあるらしい。

 何故に物を作っているところを見られると沽券にかかわるのか?

「あなた、私に調合してちょうだい」とメグや私に頼んでくる強者もいたが、これは自分で調合する楽しさを味わってもらいたい私たちの狙いからはちょっと外れてしまう。

 勿論、どうしても自分で作りたくない人には、私達のどちらかが調合をするけど・・・・。


 他人様の前で調合できないというのなら、そうでない条件を揃えればいいじゃないかとばかりに、急遽、空いている教室の使用許可を取り、時間を決めて調合教室を開く事にした。

 不特定多数に見られる事なく、同じ教室内に別の貴族がいても同じ習い事の生徒同士と言う事になれば問題にならない様だ。

 毎日の様に行う作業ならNGらしいけど、こういう風に余興としての教室なら1回だけだし沽券には関わらないというのが平民からすれば理解に苦しむ。


「リアって、こう、何かすごいよね」

「え?何?突然。メグの言うスゴイってどういうこと?」

「いやぁ、お客さんが興味を持っているにも関わらず参加できない理由を調べて、次にちゃんとそれを解決する様に動いているから、スゴイなぁって」

「あはははは。だって勿体無いからね。本当は自分で作りたがってる人結構いるのに、人前ではダメって、変だよね?」

「そうだね」


 私たちが借り請ける事ができたのは1階の貴族教室の一つだ。

 机が豪華なので、お貴族様が参加しても大丈夫な感じだ。


「それではこれから香水の調合教室を始めまーす。昔から香は高い文化水準を持つ方々の楽しみでした。今日は、皆さまもご自身で身に纏う香を調合してみて下さい。それぞれのデスクの上に並べてあるのが、香水を作るための材料です。左の瓶が無水エタノールで、続いてエッセンスオイルが並んでいます。中身は各フラスコに表示してありますので間違えない様にお願いします。さて、先ほどお買い上げいただいた瓶を取り出して頂き、中に無水エタノールをコレくらい入れてください」と、自分の香水瓶を持ってデスクの間を行ったり来たり。

 分かり易い様に、エタノール水の水位を瓶の外から指で指し示しながら歩く。


「では、各フラスコを順番にこうやって揺らして、手で香りを確かめる様に扇いでくださ~い。くれぐれも直接瓶に鼻を近づけないでくださいね。エッセンスは1種類でも良いですし、全部を混ぜてもいいですが、全部で20滴を瓶に入れてくだい。失敗してもやり直しはききませんので、慎重にどのエッセンスを使うか決めて下さいね~」

 なんて、化学の先生よろしくノリノリで説明をしていたら、参加者であるお貴族の奥様方って結構気さくな方が多く軽口で合いの手を入れてくれる方もいらっしゃって和気藹々とした香水教室になった。


 みんな思い思いの香水を手に、残りの即売会を楽しむために教室を出るのだが、保護者もあっちこっちで知人同士で立ち話等をするらしく、あっという間に香水教室の評判が広がった。

 お陰様で香水の調合教室は計5回も開催する事になり、生徒数も毎回満席になる程に揃った。


 奥様が調合教室に参加されたお貴族様の一人から、店舗を用意するのでこれを商売として展開してみないかとまで言われたが、レストランだけで手いっぱいだし、4年間は勉強の方が優先なんだよね。

 飛び級制度がないので、4年間というのは動かせないしね。


「こういうのはアイデアが出たらすぐ実行しないと、別の商売人に真似られて、美味しい所を全部持っていかれるぞ」と言われたけれど、お断りしたら、「では、家で店を出すが文句は言わないか」とまで言われたので、「瓶のデザイン以外は、お好きにどうぞ」と言っておいた。

 実際、このお貴族様はやり手らしくすぐに店を開業し、大成功したらしい。

 後日、綺麗な花束とお菓子の詰め合わせ、香水調合の無料券を数枚頂きました。

 お貴族様なのに律儀だなぁ。


「いやぁ、それ、評判を気にしただけだと思うよ」とはボブ談。

「学園の即売会で香水の調合を体験させてたっていうのは貴族の間でも有名な話だし、その後、同じ様な店が出来たんだから、アイデアをパクったのは丸わかりだろうしね。そこへ持って来て、最初からお礼の品を贈ったとなれば、アイデア元の女学生も納得の上で開店したって分かるしね」

 ふぅ~ん、そういうもんなのか。

 じゃあ、ありがたくプレゼントは頂いておこう。


 何よりお店の方は自分で調合するのではなく、香水のプロが目の前で調合するらしく、客がするのは好きな香水瓶を選ぶ事と、どんな香水が欲しいか、どのエッセンスを使って欲しいかを店舗で伝え、その場で調合されたものを確認するだけらしい。

 今までは貴族といえど既製品の香水しかなかった所、自分だけの香を楽しめると言う事が画期的だと大いにウケ、繁盛しているらしい。


「お前ら、自分で経営する気がなくても、俺ん家を通せば取り扱う事は難しくなかったのに・・・・」とフェリーペは悔しそうだ。

 違うんだよ、フェリーペ君。

 お貴族様は100%自分で経営だけど、君ん家を通すと色々と助言したりとかその後の作業が付いてくるじゃん。

 そういうのが面倒なのよ。

 やんわりと説明したけど、「金の成る木を・・・・」と、納得できないみたいだった。

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