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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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「ここに第1回ドッジボール大会の開会を宣言する」

 え?第1回?今後もこれやるの?と思っていると、周りは闇王様の開会宣言にテンションがマックスになって「「「「おおおお!」」」」と吼えている。

 女生徒よりも男子生徒の声の方が大きい。

 まぁ、元々人数的には男子生徒の多い学園だからというのもあるけど、スポーツで競い合う事のなかった彼らが互いの体力や知力をぶつけ競い合いたくて逸る気持ちを抑えられないといった所だろう。

 斯く言う闇王様も、早く試合をしたいらしく気持ちが滾っているのが傍目からも分かる。

 そしてそんな男らしさ全開の闇王様に、女子生徒がキャアキャア言っているちょっとカオスな開会式だ。


 コートの線引きは委員がやるというのは最初から織り込み済みだったのだけど、こんなに手際よくやってくれるとは思わなかった。

 もしかして委員だけで集まって予行演習とかしてくれていたのかもしれないな。

 校医の先生もスポーツエリアの端に設けられたテントで待機してくている。

 ガスぺール先生はその校医の横にだらしなく座りお茶を飲んでいるが、ドナルド先生はそろそろ試合が始まるということでコートの辺りをウロチョロしている。


 コートは全部で10面。5面5面の2列配置だ。

 各クラス1チームと思っていたけれど、ほぼ全員の生徒が参加してくれており、1クラスで2チーム、或いは追加のチームを他のクラスと混合で作っているケースも結構ある。


 ほぼ同時刻にあっちこっちのコートで開始のホイッスルが鳴った。

 自分のクラスを応援する為に、試合中のコートを囲む様にして見ている生徒たちの多い事、多い事。


 選手と間違えられてはいけないので、テープで各コートの観覧スペースと競技スペースを区切っているのでちょっと手狭な感じだ。

「いけーー!」とか、「きゃー」とか、「そこだー」とか、普段だったらあまり口にしない下々の言葉をお貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃんが思わず大声で口にしており、声援する事そのものも楽しそうだ。


 あややクラブもチームとして参加するので、一旦大会が始まったら大会の進行は委員の人が中心になる。

 何かあったらドナルド先生に相談だしね。

 園長先生や他の先生方も離れた所に椅子を用意して、全体を観覧している様だ。


 今回の大会ではお二人の先生以外は遠巻きに見守って下さっていた様だが、金曜の授業を全部取りやめ、この大会の時間として調整してくれたり、陰に日向に随分と融通を利かしてくれていると思ってる。

 闇王様の御実家の力かと思ったけど、「学生が自主的に企画したイベント。最後まで責任を持ってやり切って欲しい。それが生徒たちの成長に繋がる」との園長先生のお言葉を聞く限り、これが学園側の考えと言う事だろう。


「もう、負けちゃったじゃない!」とタルボットにキツクあたっているナナを見かけた。

 恐らく私たち1年平民組乙チームは負けちゃったのね。

 私たち4人はあややクラブチームで抜けているから、乙チームは2年の平民クラスの人と合同なのだ。

 甲チームは勝ってるかな?


 1回戦が終り、無事私たちあややクラブは勝ち残った。

 15分の休憩の後、残りの1回戦の試合をやり、そこから勝ち残ったチームで2回戦だ。


 マジで男子生徒がヤバい。

 ボールを投げるのに全力で投げてるよ。

 1年生と4年生のクラスが当たっても、手加減なしだしね。

 試合そのものは10分と少し長めだけど、5秒ルールはこっちの世界でも適用したのだ。

 練習試合の時、条件が良い状態でボールを持って離さないチームが出て来たので、急遽適用したルールだ。

 1チームの人数は、あややクラブに合わせて8人。

 そこは主催者として自分たちの都合に合わせてもらいました。


 1回戦は32チームで16試合、2回戦が終って8チーム、これから3回戦。

 4つのコートで同時に試合が進められているのだけれど、もう自分のチームが敗退しているところは闇王様、つまりあややチームの応援に駆けつけてくれているので、観覧席がとんでもない事に。

 3つの試合は横並びのコートで、私たちの試合は別の列のコートで、応援席が広がっても別の試合に支障を来さない様に急遽この様にしました。ふぅ~。


「くそっ!後ちょっとだったのに」

 はい、私たちは3回戦で負けてしまいました。

 応援してくれていた女子生徒たちの口から「「「あ~あ」」」という声が漏れてます。


 次は準決勝なので1試合づつ行う事にしているのだが、あややクラブの手が空いているので、学園から借り出した拡声の道具を使って試合の解説をしてもらう事にした。

 え?誰がって?

 ヘルマン様ですよ。こういうのはヘルマン様でしょ?

 一人でずっと話してもらうのは大変だろうから、大盤振る舞いで暇そうにしていた風属性魔法のフント先生もくっつけちゃおう。

 先生には事前にルールや解説のコツを紙に書き出したモノを渡し、あややクラブの部室で簡単に説明したけど、大丈夫かな?それで足りるかな?

 今、必死に読んでくれていて、大事な所に赤線まで引いてくれてる。

 流石先生だ。勉強の仕方が堂に入っている感じだ。


「あーあー。準決勝からは試合の解説をと急遽駆り出されましたヘルマンです」

「風魔法の教師、フントです」

「先生、お忙しいのに急遽解説を引き受けて下さってありがとうございます」

「いえいえ。ところで、この大会はヘルマン君の一言から始まったんですよね」

「いやぁ、僕の不用意な一言がこんな大会にまで発展するとは思いませんでしたが、ちゃんとこの様な大会としての形を作る事ができたのは、アドルフォ様の手腕とあややクラブの面々、そして何より委員会のみなさんの力ですね」

 なんて部員を募集もしていないのに、ウチのクラブの宣伝をしちゃってますよ、この二人。

 宣伝は程々に願います~。

 でないと、また、入部希望者が声を掛け易い平民の私たちの方へ殺到するんですからぁぁぁ。

 でもちゃんと委員会のみなさんを持ち上げてくれてる所が大人です。

 この二人を解説に選んだ私、グッジョブ!

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