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「おは・・・・」よう、と言う前にマリベルとナナに教室の後ろの方へ引っ張って来られた。
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「ちょっと、ウチのクラスの練習試合は何時やってくれるの?」
ああ、ドッジボールかぁ。
ウチのクラスはこの二人が委員だものね。
「う~ん、それを決めるのは闇王、アドルフォ様なんだよね。で、今チーム結成の通知が早かったクラスから試合を始めてるんだけど、ウチのクラスは結構後の方だったと記憶してるんだけど」
「何よ!あんたたちあややクラブなんだから何とか融通して順番を早めなさいよ」
前から思ってたんだけど、どうしてこの二人は私たちに上から目線で命令できると思ってるんだろう?
謎だ。
「一応、アドルフォ様かセシリオ様にお願いしてみるけど、私やメグたちには決定権がないから、それだけは覚えておいてね」と言いおいてさっさとメグたちのいる所へ行った。
「あの二人って言葉遣いというか、他人に対する態度がねぇ・・・・」と普段おっとりしてるメグでもそう思ってたのかぁ。
「だよね~。失礼しちゃうよね」と頬を膨らしたら「リアがハムスターになった」と変に受けてしまった。
ドッジボール大会の話しは教室だけではなく錬金術クラブでも良く耳に入ってくる。
なんかの道具を作ってるのだろう、3年生の男子が手を動かしながらしきりと情報交換をしている。
「しかし、闇王様やるなぁ。今までなかった学校行事を1年生が立ち上げて曲がりなりにも形になりそうなんだからな」
「今までスポーツでこういう大会が無かったから、ウチのクラスの奴ら張り切ってるぜ」
「俺も参加するんだ。先にあややクラブの奴らと練習試合したチーム同士がかなりの頻度で練習試合してるみたいだぞ」
「こりゃ、早くウチのクラスも練習試合してもらわないと遅れを取るな」
「しかし賞品の飲茶ってなんだ?」
「ポスターにイラストが描いてあったけど、何か湯気みたいのが出てたから温かい物かもしれん」
「おやつって書いてあったから、食べ物なんだろうな。甘い物かな?」
そんな会話を小耳にしながら自分の道具作りに励んでいたフェリーペが、「細かく切った肉を美味しいスープと皮で包んで蒸したものですよ」と説明してくれた。
しかし、実際に見た事のない物を想像するのは難しいと思うよ。
初めてのレストランで文字だけのメニュー表を手に、聞いた事もない料理を注文するか悩む時、ウエイターに色々聞いても出て来る料理は全然想像と違う物っていうのは良くある話。
知ってる料理でさえ、店が違えば量も思ってたのより少ないとか多いとかあるんだしね。
ここはまぁ、「美味しいおやつ」の一言で良いと思うよ。
「フェリーペ、お前らあややクラブでおやつ食べてんだろう?その飲茶も食べた事あるのかよ」
「はい。飲茶は色んな種類があるんですけど、今回の大会ではスープがたっぷり入ったこれくらいのおやつになるはずです」と手で小籠包の大きさを表している。
「チっ、お前らいいなぁ。クリサンテーモのおやつなんて貴族であっても一般生は食べられないんだぞ」
「え、いや・・・・」
フェリーペが先輩たちにあややクラブのおやつは私が作ってると言い掛けた様に見えたので、必死に首を振って止めた。
何とか私に気付いてくれて良かったよ。
闇王様がほぼ毎日食べてるおやつを私が作っているなんてバレたら、他の上位貴族から無理難題を言われて、毎日大量にお菓子や点心を作らなくなるジャマイカ。
頼むよ、フェリーペ君。
テヘペロってな表情をして誤魔化そうと思っても、ダメだよ。
もしうっかりバラしたら、お前の命は無い!とばかりにしっかり睨んでやりました。おほほほほ。
さぁ、今日は折角の錬金術クラブなので、ミキサーを作りましょうかね。