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今日もあややクラブの部室前には女子生徒が複数たむろしている。
メグも私も出来るだけ絡まれない様に足早に玄関へ行き、表に立っている使用人に庇ってもらう様にしながら中へ入る。
「この玄関辺りにたむろしてる人たちって何気に邪魔だよね」
「リアが言いたい事は分かるけど、まぁ、使用人が表に立ってくれてるから安心だよね」
家の勇者様は相変わらずポシティブシンキングだなぁ。
こういうメグたんが好きです。
「今日は私たちが一番乗りだね。直ぐに料理するの?」
「うん。一緒に作ってみる?」
「いいの?リアが教えてくれるなら一緒に作ってみたい」
「了解~。じゃあ前に一緒に作ったクレープにしようか。何回も練習した方が覚えやすいしね」
「いいねいいね」
二人でキャイキャイ言いながらフルーツをカットしたり、生クリームを泡立てたり、クレープを焼いたり。
いつもは一人で料理しているだけに、二人で作ると楽しい。
そして流石闇王様の家。ストックされているフルーツの種類が可成り充実しているのだ。
恐らく輸入されてるフルーツも入ってるよね。
そんなこんなで料理をしていたら、段々メンバーが集まって来た。
ダイニングテーブルに座っておやつタイムの時に、闇王様がこの前のドッジボール大会の周知に関するアイデアを出してくれた。
「学園側にはOKを貰った。で、委員を募ろうと思う。臨時の委員で、全クラスに1人か2人。委員になった奴らに自分のクラスメイトにドッジボールのルールを教えさせ、大会までに最低でも1度は練習させる役だ。大会当日のコートの線引きや審判も委員にやってもらうってのはどうだ?」
「「「「おおおお」」」」
流石、将来人の上に立つ様に育てられているおぼっちゃまだ。
目の付け所がスゴイ!
ちなみに貴族のクラスとはホームルームの事を指している。
教科毎に成績順に毎回教室移動をするのが貴族クラスなのだが、ホームルームは入園した時や、学年が上がるタイミングで決まり、1年間は移動がないのだ。
「しかし、アディ。何の見返りもなく委員をやってくれる人なんているかな?」
「オレもそれは考えた。で、そこでだ。委員の会合は期間限定でこの部室を使うってのはどうだ?」
一瞬ボブとセシリオ様の顔に嫌悪感が浮かんだ。
自分たちの城とも言えるこの部室に知らない人が、それも可成りの数が入ると思うと、素直に喜べないんだろう。
私も部外者を部室に入れるのは抵抗がある。
「このクラブの部室って多くの生徒が興味持ってるだろ?だから、ここに数回でも入れるとなったら委員をやりたいって奴はいると思うんだ。2階は使わせない。しかも、何時でも入って良い訳じゃない。会合がある時だけだ。考えたんだが委員会設立の時に一度、途中2回くらい進捗状況の確認、大会前日の確認、大会終了後の打ち上げでここを使う勘定になる。打ち合わせの時は、このダイニングテーブルは取り除いて、作戦本部のデスクの様な長机をいくつか搬入する。階段下の本棚は空にして、本は一時的に2階に持って上がる。食器類もいたずらされない様に使用人に2階へ持って上がってもらう。これでどうだ?」
眉間に皺を寄せたフェリーペが最初悩んでいた様だが、とうとう口を開いた。
「すいません。俺が思うに、別に部室でやらなくても良い気がします。要はアドルフォ様やセシリオ様と一緒に委員会活動が出来るってだけで可成りの女子生徒が委員になりたがると思います」
おおおお!フェリーペが珍しく闇王様に直接意見したよ。
部室では寛いで好きな事をしている割には、教室にいる時とは違って、直接意見を述べる事が少なかったんだよね。
やっぱりお貴族様相手だから遠慮があったのかもね。
でも、これはナイス意見だよ。
「え?オレたちが一緒に活動するってだけで参加する子がいるのかな?」
「いまちゅよ。もう、何で自覚がにゃいの?」
アドリエンヌ様が鼻息荒く言うものだから、闇王様がちょっと引いているよ。
「しょの証拠に乗馬クラブにたくしゃん女子生徒が入部ちたでちょ」
うん、一理あるね。
「じゃあ、学園の広間とか、学食を借りて委員会を開催すればいいんじゃないかな?」
セシリオ様のナイスアシストで、委員を募るけど、その活動は学園内の別施設ということになった。
やっぱりこの部室は隠れ家的な感じなので、部外者は入れたくないよね。
「あと・・・・ポスターの下書きを持ってきました」と私は鞄からポスターを取り出した。
大きくドッジボール大会と書いてある下に、一目で闇王様だと分かるイラストが。
漫画あーんどアニメ大国の住人、元日本人としてはイラストを描く事は難しい事ではなかった。
しっかり闇王様をデフォルメして可愛らしく描いてみました。
「おお!いいね。アディの顔を持って来た事で誰が主催するのかはっきりするし、背景として描かれているのがドッジボールだって分かるね。なら、ここに開催日だけじゃなくって委員募集も書いておけば一石二鳥だね」
「分かりました。じゃあ、付け加えますね」とみんなの前でパパっと書き込んだら、「お前、本当に芸達者だな」と闇王様から半分呆れ顔でお褒めの言葉を頂きました。
あじゃじゃーーーす。