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月曜の午後は錬金術クラブなので、未だに魔石を使った道具の開発、特に銅線のつなぎ方を教えてもらってる。
早くミンサーとかミキサーを電動、もとい魔動?にしたいなぁ。
今月末には錬金術クラブの即売会があるしね。
クラブ活動には毎年学園から決まった活動費が支給されるけど、様々な素材を取り揃えないと活動できない場合は、支給金だけでは足りない事が多い。
錬金術クラブなんてその最たるものだ。
そこで年に2回程、部員たちが作った道具の即売会を行い、売上げを不足している活動費に割り当てているのだ。
だから私も何か作って売りたいと思っているんだけど、即売会までに魔石で動く道具をちゃんと作れるだろうか。
一応、既に何を作るかは大体の案を持っていて、父さんの協力まで得てはいるけれど、魔動を視野に入れられるのなら、別の案を考えてもいいかな~。
最近、サラサ部長は即売会に向けて忙しくなって来た様で、2年のタチアナ先輩が良く教えてくれる。
お貴族様なのに嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれるので、優しい錬金術クラブの先輩たちの中でも一番タチアナ先輩大好き。
卒園したら政略結婚が決まってて、錬金術を続ける事が出来ないのが残念って良く言っているので、結婚後も錬金術をさせてくれる旦那さんだといいのになって思う事暫し。
まぁ、こればっかりは実際に結婚しないと分からないしね。
ある意味宝くじの様な物だよね。
結婚しても恋人時代と同じ様な感じで対してくれるかとかは恋愛結婚ですら分からないものね。
前世の旦那を思い出したよ・・・・。平成の時は結婚してたんだよね。それも恋愛結婚。
あの浮気野郎!
はぁ、思い出したら気分が暗くなってきた。
よし、考えを切り替えよう。
「ほら、これってこの線が間違いなんだよ」
「えええ。今度は上手く行くと思ったんだけどなぁ」
ボブは最近、オスカル先輩を捕まえては質問を繰り返してる。
今、作ってるのは掃除機の様な物らしい。
どうせならルン〇みたいな全部自動でやってくれるのを作ってくれたらいいのになぁ。
設計図を見る限りはハンディタイプの掃除機に近いかもしれない。
ゴミを吸い込みたいのに、圧縮空気を吐き出しちゃうみたい。
それはそれで別の道具が出来そうだけどね。
温風にする事ができたらドライヤーとかに使えるのでは?
「ねぇねぇ、ボブ。それさぁ、空気を吐き出すんだよね。なら、空気を温めたら、洗髪した後に髪を乾かすのに使えるんじゃない?」
「お!」
ボブではなく、横にいたオスカル先輩の方が反応した。
「アウレリア、その発想の転換、面白いな」
「うん。冬に髪の毛を洗っても風邪を引かずに済むし、自分の思った様に髪型を作る事も出来る様になると思う」
「ん?髪型を狙った様に作れるってことか?」
女子には比較的丁寧な言葉遣いのオスカル先輩が素に戻っているのは、このテーマに本当に興味があるってことかな?
「そうです。温風、つまり暖かい風を吹き付けた後に、冷風、冷たい風を吹き付けたら髪を好きな方向へ流せますよ」
「ほぉぉ。それは初耳だ。ボブ!その道具、同じのを作りたいからちょっと設計図をコピーさせてくれるか?」
「いいですよ」
何か、にわかにドライヤー作りでオスカル先輩が盛り上がって来た様だ。
「アウレリア、言い出しっぺだから聞くけど、この道具をお前の言う様な用途で使う場合、どんなデザインだと使い易くなると思う?」
「えっと、まず機能的には風を吹き出す量を丁度良い量に調節する必要があるかな~。風量を変更できるならいいんだけど、一定の風量しか出ないなら、最初っから丁度良い風量に設定する必要があるかもしれません。後はさっき言った様に暖かい風と比較的冷たい風を一つの道具で作り出す様にする事ですかね。後、デザインは片手で持てる感じですかね」
「面白い!君が言うやり方で思った髪型に出来るかどうかっていうのはどうやったら確かめられる?」
「風魔法の人に風を吹き付けてもらって、火魔法の人に暖かくなる様な温度にしてもらえたら出来るかもしれませんが、二人以上で別々の魔法を掛け合わせるとか出来るのかなぁ・・・・」
「それって、風属性の人だけで、物理的に暖かくするもの、例えば松明とかを持ってやってもらえば試せるかな?」
「う~ん、それだと吹き付けた風に運ばれて髪に直接火が当たっちゃう可能性がありますよね。そうしたら髪が焦げちゃいますね。それよりも先に魔道具で作ってから確認した方が早いかもしれませんね」
「そうか。俺の髪、良く跳ねるからな。まずはお前の言うやり方で好きな髪型が作れるかどうか試したかったんだが・・・・」
オスカル先輩はボブの掃除機そっちのけで、ドライヤーの方に集中しだした。
「先輩!出来上がったら是非私にも作ってくださいね」
「おう。アウレリアは発案者だからな。特別安くしておくよ」
錬金術クラブであろうと、個人の発想で新たな道具を開発した場合、錬金術省に登録して特許の様にその発想や技術を保護してもらえるのだ。
共同開発者でなければ当然お金を出して購入しなければならないのだ。
まぁ、多少高くても使い勝手の良いドライヤーが手に入るなら、断然買いだよ。