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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
128/549

25

 この前の応接室には既にいくつかの本が図書室から取り寄せられていた。

「今日はテーマを決めてやってみようと思ってな、使用人に関連しそうな本を持って来てもらってる」

 流石闇王様。手際が良い。とても6歳児とは思えんよ。


「で、今日のテーマは何?」とセシリオ様がすかさず合いの手を入れた。

「書き取りや計算に関しては意見を交換するまでもないと思ったから、候補として挙げたのは歴史と魔法なんだけど、お前らどっちが良い?」

「私は歴史でしゅわ」

「私はどちらでも」

 私はメグの意見に合わせて無言で首肯した。


 声に出して自分の意見を言わなかったからか、闇王様のスナイパーかと思える鋭い眼差しを頂いてしまいました・・・・。


「んじゃ、今週は魔法の合同授業だったし、魔法にしよう。で、お前ら全員魔法スキル持ちだよな?」

 闇王様、それって唯一自分の意見を述べたアドリエンヌ様ガン無視っすね。

 みんなが頷くと「それぞれどの属性か言ってもらおうか」と言われ、私はギギギと音がしそうな感じで闇王様の方へ顔を向けた。

 やばい!私の属性は学園内では秘めてもらってるのだ。

 大公様が出来る限り伏せておいた方が良いとおっしゃっていて、学園の教師たちには大公様の意向として私のスキルは他者には伏せるという事が伝わっている様だ。


「まず、オレは火と水だ」と闇王様が椅子に踏ん反り返りながら口火を切った。

「僕は風だよ」

「私は土でしゅわ」

「私は火です」

 私以外全員のカミングアウトが終り、みんなの視線が私に集まった。

 暑くもないのに額に汗の粒が浮かぶ。ジワリ・・・・。


 4人の瞳が私にロックオンされ、羽が床に落ちても音が聞こえそうなくらいの静寂。

 それでもすぐには答える事が出来ず、時間を掛けてゆっくり考えて出した答えが「珍しい魔法スキルを持ってるのですが、大公様の意向で公にしない事になってるんです。だから学園の先生方も私のスキルについては言及されません」と素直に現状を説明したものだった。

「へぇ~、珍しいスキルねぇ」

 うひゃぁ、闇王様の視線が痛いよぉぉ。


 じぃーっとこちらを見つめた後、「まぁ、いいや。魔法スキルに変わりないなら、新しい魔法を作り出すっていうテーマでも問題ないはずだしね」と、サラリと今日のお題を発表されました・・・・。

「新ちい魔法!何かしゅてき」

「はい。とっても興味ありますね」

「僕もどういう発想であれば新しい魔法を作り出せるのか知りたいので、今日のテーマはそれでいいと思うよ」

 またまた私以外全員賛成だったので「私も新しい魔法を作る考え方、興味あります」と賛成しておいた。


「僕思うんだけど、何にもアイデアがないまっさらな状態より、今ある魔法と結び付けて考えた方が良い気がするんだよね」

「そうだな。合同授業でも今ある魔法を掛け合わせた感じだったなぁ」

「アドルフォしゃまの言う通りでしゅわ。今ある魔法のどれとどれを掛け合わしぇるか考えるのがおもちろいと思いましゅ」


「あのぉ・・・・」

「何?」

 思い切って意見を述べようと小さな声を上げたら、全員の目がこっちを向いたので、肩がビクっとなって固まってしまった。

 そんな私を見てセシリオ様がまた暗い笑みを浮かべ、「緊張しなくていいんだよ。この勉強会は意見交換が目的なんだから。ね、アディ」と闇王様の視線をその身に引き受けてくれた。

 

「あのぉ・・・・。1つの属性を持つ魔法使いが掛け合わせる魔法って同一属性の魔法って事ですよね。2つの属性の魔法を掛け合わせ様としたら、2つの属性を持つ魔法使いか、2人の魔法使いが魔法を重ねて使うとかになるんでしょうか。それって可能なんでしょうか」

 何とかさっき言いかけた事は口に出せた。


 闇王様の目がランランと輝いて「お前、面白い事を考えるなぁ。2つ以上の属性を掛け合わせて新しい魔法を作るってことか」と、私が言いたかった事をパッと把握してくれた。

 やっぱり青い血。地頭が良いんだろうなぁ。

「はい。一つの属性だけだと出来る事が限られてしまうので、独りで複数の属性を持つ場合と、別々の人間が同時に魔法を発動して2属性以上にする方法とで考えてみたら、新しい魔法の範囲がぐんと広がるかなぁって」

「うむ、面白い」

 闇王様は腕を組んで熟考し始めた。


 この応接室にいる5人では、2人以上で同時に2属性以上の魔法を発動し、一つの魔法として使えるかを知っている者はいなかったので、早速実験を始めた。

 

 まず、土魔法で泥を呼び出し、お皿の形に成形してもらう。

 って、実は成形できるところまでアドリエンヌ様の魔力操作の練度が高くないので、皿には見えないのだが、板状にはしてもらえたので、それを火魔法で焼いた。

 つまり、土器を作り出す事ができるかどうかという実験だ。

 

 私たちの魔法レベルが低いからなのか、土器は出来なかった。

 二人同時に魔法を掛ける事が出来なかったのだ。


「でも、土器を作りたいだけなら、マッドロックで陶器の形に作ればいいんじゃないのかな」というセシリオ様の意見に、みんな目から鱗だった。


 今日はもう時間が無いから続きは来週という話になり、クリサンテーモの使用人が持って来たお茶を飲み終わりになった。


「あ、アドルフォ様。ウチのクラスの生徒が、この勉強会へ参加したいと言っているのですが、来週から一緒に参加してもいいですか?」

 家の勇者はちゃんとナナたちの依頼を覚えていたのね。

「あ、この人たちの友達がしゃんかできるなら、私の友達もしゃんかしゃしぇたいでしゅわ」とアドリエンヌ様が言っているのは、例の取り巻きの事だと思う。

 あのキンキン声でキャンキャン言われるのをじっと聞かないといけないなんて、どんな拷問?

 謹んでお断りしたい!

 そんな事を思っていたら闇王様も同じ様に感じたのか、「男なら参加を許す!」とだけおっしゃった。

 アドリエンヌ様の一言で、結局は私にとって麻姑掻痒(まこそうよう)となった。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ途中なのに勇者様が素敵過ぎて激励送りたくなってしまいました。 この後も素晴らしい!?活躍をされることを期待して読み進めさせていただきます。 勇者様お友達だったらとてもとても心強いけど、…
2024/08/14 22:34 退会済み
管理
[良い点] 毎日楽しく読んでいます [気になる点] 喉頭?首肯ですかね?
感想一覧
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