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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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22

「昨日の続きは私が教えましょう」今日の魔法の合同授業ではマデレーン先生が一歩前に出た。

「新しい魔法を作る事ができる人は極僅かです。誰かがやった魔法を真似るのだって難しいのですが、全く新しい魔法は発想の転換が必要だったりします。そうですね・・・・一つ、土魔法でデモンストレーションをして頂きたいので、サーサラ先生、お手伝いをお願いします」と言うと、恰幅良い、どちらかというとモサイおっさんであるサーサラ先生が「もちろんです」と一歩前に出た。


「イメージしてみて下さい。ここに大きな亀裂があって、あなた方は土魔法のスキル持ちであるとします。大きな亀裂を塞ぎたい場合はどうしますか?」

 大人の色気ムンムンなマデレーン先生を間近に見たかったのか風魔法スキルしか持たないタルボットが最前列に位置取っていたのが災いした。

「そこのあなた、どうしますか?」

 憧れのマデレーン先生に質問されたタルボットが挙動不審になり、どう答えて良いか分からずモジモジしだした。


 タルボットは家のクラス一番の腕白坊主で、普段から騒がしい事この上ないのに、今は借りて来た猫状態だ。

「・・・・」

「あなたの属性は何?」

「か・風です」

「そう。属性が違うと難しいかしらねぇ。そうねぇ、まず、目の前に大きな亀裂があるとイメージしてみて。あなたの後ろには商隊がいて、あなたはその商隊の護衛さんです。その亀裂の先へ行かないと馬車で運んでいる商品が腐って売り物にならなくなります。あなたの属性は土です。さぁ、どうする?」

「き・亀裂を魔法で埋めます」

「そうね。それが一番手っ取り早い解決方法ね。じゃあ、どんな魔法があれば亀裂を埋める事が出来ると思う?」

「お・大きな岩をたくさん出して埋めます」

「いい考えね。じゃあ、サーサラ先生、今実際には亀裂はありませんが、このスペースを埋める様に岩を出してもらえますか?」と言いながらマデレーン先生は足で土の上に2本の線を描いた。

 この2本の線の間が亀裂という事なのだろう。

「もちろんですよ。マデレーン先生。クリエイトロック!」とサーサラ先生が呪文を唱えると比較的大きな岩が2つ2本の線の間に現れた。


「ありがとうございます。さて、君はこれで商隊の馬車が問題なくこの亀裂の上を通れると思いますか?」

「通る事はできるけど、隙間に馬車が嵌ってしまうかも・・・・」タルボットの顔はまだ赤い。

「そうですね。()()()()、大きめの隙間がありますね。もしかしたら馬車の車輪が嵌って立往生してしまうかもしれませんね。では、次はどんな魔法が必要ですか?」

 タルボットはまだ赤くなってモジモジ君になっているので、マデレーン先生は隣の女子生徒に質問をした。

 マデレーン先生と直に話すのには照れを感じているらしいタルボットだけど、自分ではなく他の生徒に先生の意識が向いてしまうのは嫌だったらしく、隣の女子生徒が答える前に「隙間を埋める土か泥を出します」と答えた。

 相手の事をあまり慮る事のないガキ大将のタルボットらしいと言えばタルボットらしい。


 するとその答えがマデレーン先生の狙っていた答えだったらしく、先生は再びタルボットの方を向き「そうですね。ただ、砂だとサラサラしているし粒も小さいので、隙間から下にいっぱい落ちてしまうかもしれません。ここは粘度の高い粘土の方がいいかもしれませんね。では、サーサラ先生、ここら辺に粘土を出してもらえますか?」

「クリエイトマッド」と唱え、サーサラ先生は指定された所へかなりの量の泥を呼び出した。


「ありがとうございます。でも、泥は固まっていないので、その上を重い荷物を乗せた馬車が通ると、これまた車輪が嵌ってしまって立往生してしまいます。ということは、この泥を固めないとダメってことになりますね。では、サーサラ先生お願いします。

「はい!マッドソリッド」

 今度は泥がちゃんと固まった。


「「「おおおお!」」」数人の生徒から声が上がった。

「サーサラ先生の魔力量は多いので、この3種類の魔法を続けて詠唱しても問題はありませんでしたが、あなたの魔力が少なかったら3つもの魔法を立て続けに唱えられなかったり、そもそも亀裂がもっと大きかったりしたら膨大な魔力が必要になったり、それこそ魔力切れになるかもしれません。そこで、この問題を解決できる様な新しい魔法がないかなって考えるとすると、どんな魔法になりますか?」

「・・・・」

 タルボットには何の案も無かったのだろう。無言で俯いた。

 マデレーン先生の視線は先ほどの女子学生に向いたが、彼女も答えられない様だ。


 ここは生徒に答えさせるより、自分で説明した方が早いと思ったのかマデレーン先生は説明を続けた。

「例えばですね、泥を出して更に固めるという2つの魔法を1つにまとめる事ができたら、もしかしたら必要な魔力は少なくて済むかもしれません。こういう発想が新しい魔法を作るのに役立ちます。では、サーサラ先生、お願いします」

「はい。マッドロック!」

 サーサラ先生の呪文の後に別の隙間に泥が現れ、接着剤が固まるかの様に固まった。

 これによりレンガの様に決まった形ではなく、その地形に合った形で固まった泥になったのだ。

 どういう原理なんだろう?空気に触れると一瞬の内に結合するとか?

 この世界の人にそんな知識を持ってる人っているのかな?それとも単にイメージ?

 う~ん。魔法って理解が難しい・・・・。


「実は、この泥を呼び出し瞬時に固める事を一つの魔法にまとめ上げたモノは既に存在します。でも、この魔法を考え付いた人はさっき説明した様な状況になった時に思いついたそうです。みなさんも自由な発想で新しい魔法づくりにチャレンジしてみてください」

 タルボットが好きな先生に促されて、新しい魔法についていろいろ考えを巡らしているのが傍から見ても分かって笑えちゃった。

 拙作をお読み頂いて、ありがとうございます。

 どうか良いお年を。

 来年もどうぞよろしくお願い致します。

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