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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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17

 調理場はオーパーツだらけなので、食材用の温室と同じで公開出来ない。

 ということで、そのまま3階の私たち親子の居住スペースに移動した。

「うわぁ、リアって貴族の館の一番上に住んでいるのね」とメグがいろんな調度品に興味津々な様子で右に左に視線を動かしながらついて来る。


 本来なら私たち親子3人は、ここで一番上の位になるので2階に住み、その他の親戚や従業員は3階や地下が妥当なのだが、階段を余分に上り下りしてでも、内装だけ新しくした2階より新築部分の3階に住む事を選んだのだ。

 全くの新築部分なので好きな様に間取りが取れるからね。


「2階は伯父さんたちの家族が住んでて、地下が使用人の居住区なの。私たち親子が3階ね」と階段を上り切ったところにあるドアを開けて3階の玄関に着いた。

「ごめんね。家は土足禁止なのでここで靴を脱いでもらって、こっちの室内履きに履き替えて欲しいの」

 それを聞いてボブとフェリーペの顔色が変わった。

 こっちは普通、寝るまで靴を履いたままなので人前で靴を脱ぐという発想がない。

 1日中靴を履くと、それも毎日履いていると、足からかぐわしい臭いが放たれる事もあったりする。

 靴下だって穴が開いていようが気にならない。だって誰にも見せないんだもの。

 それなのにここで靴を脱げと言われ、フェリーペたちが急遽挙動不審になった。


「大丈夫だよ。脱臭剤が下駄箱に設置されているから臭いはすぐ気にならなくなるし、もし、靴下に穴が開いてたとしても友達だからクラスのみんなには黙っててあげる」といたずらっぽく笑うと、「クスクス」と家の勇者も一緒になって笑った。


「どうしても気になるなら、お風呂場へ行って足だけ洗って来てもいいしね」と言うと、「それはちょっと・・・・」と言いながら観念して男子二人も靴を脱いで、スリッパを履いてくれた。

 確かに二人の靴は臭かった!

 慌てて脱臭剤付きの下駄箱に靴を入れて『臭いものに蓋をする』を実行した。


「うわぁぁ。ここの居間、とっても素敵~」とメグが陽が燦々と注ぎ込んでいる広々とした居間に感嘆した。

 店と同じ広さに親子3人だけが住んでいるので、寝室はもちろんのこと、居間もダイニングも台所も広々している。

 トイレやお風呂も広々だし、居間から出られるサンルームとその先にあるベランダも広い。


「おおお!ここにも温室が!」とフェリーペたち男の子はサンルームを端から端まで走り回る。

「ここは冬の間、家族がくつろぐスペースなの。こっちのベランダは」と言いつつ、サンルームの戸を開けベランダに出る。「冬以外に使うんだけど、父さんが好きな植物を植えてるから、小さな庭園みたいでしょ?」というと、もう肌寒いのにも関わらず男子二人はベランダを隅々まで調べる様に見学した。


「お前ん家、すごいな!なんかワクワクが止まらん!」と珍しくボブが勢い込んで言う。

「自慢のベランダなのよ。でも、そろそろカービングしないと夕食まで時間がないからサンルームに戻ろう」とみんなをサンルームへ連れ戻った。


 台所へ連れて行かなかったのは、家の台所には調理場どころではなく、私が自制心をかなぐり捨てて作りに作った調理器具が山ほどあるからだ。

 みんなを待たせたままで、フルーツとナイフやまな板等カービングに必要な道具1式を運んでサンルームのテーブルに並べた。


「りんごがやり易いのでみんなりんごでいい?」

 3人ともウンウンと無言で頭を振る。

「良く見ててね。このナイフを使ってカービングするんだけど、こうやってりんごのてっぺんに6箇所切れ目を入れてね。葉っぱの模様にするから、このくらいの長さでいいかな。でね、さっきの切り目に、ナイフを斜めにこうやって切って行くの。ほら、葉っぱみたいになったでしょ」とお手本を見せながら切り込みを入れていく。


「うわぁ。上手く切れない」

 ボブがじれったそうに言うけど、「そりゃぁ、初めてなんだから、失敗して当たり前。今日は体験する事が目的だから、失敗上等でやればいいんだよ」と言うと、「それもそうだね」と吹っ切れた様にナイフを動かして行った。

 と言うか、思いっきり良すぎて可成り変則的な模様を作ってる男子2人。


 出来て見ると日本の毬の様に花模様が中心になり多重花弁の様に模様が広がったりんごが出来た。

「うわぁ~。素敵。自分で作ったって気がしない」と比較的上手にできたメグが大事そうにりんごを両手で捧げ持っている。

 男子は女子程、指先が器用ではないのと、思いっきりが良すぎて脱線したラインが多数あり、散々な出来だったが、家に持って帰りたいと言っていたので満足しているんだと思う。

 変色を防ぐために薄い塩水に浸けながら、梅干しを作っていたら梅酢に浸けても良かったなと、心の中で梅干しと梅酒を作る事を決意した。

 りんごと梅干しはベストマッチだもんね。

 とりあえず男子2人には、小さな箱にそれぞれのりんごを入れて持たせてあげた。

 メグは今夜家にお泊りだから、私が預かって冷蔵庫へ。

 

 熱中してカービングをしていたら夕食の時間になっていたので、1階まで降り、本館のレストランの方に入って行った。


「うわぁぁ。壁が一面ガラスだよ?」とフェリーペが素っ頓狂な声を出した。

 まだ他のお客様がいない早い時間だったので良かったが、みんなのテンションが高く、大きな声でそれぞれの感想を言い合う姿は騒々しいの一言だった。

 一応、ウチのお店は高級店だからね。騒々しいのはNGだよ。

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転生者はともかく同年の幼子が十代以上に感じます。
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