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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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12

 大きな声に驚きつつも、声がした方へ急いだ。

 そうしたら闇王様とセシリオ様、アドリエンヌ様とその取り巻き2人に囲まれて、メグだけが地面に転がって摘み取ったコスモスが足元に散らばっているのが目に入った。

 大きな声を出していたのはアドリエンヌ様の取り巻きの一人だ。

 名前は憶えていない。


 闇王とセシリオ様は女性の大きなキンキン声に辟易している顔をしているが、地面に転がっているメグを放置しているので、私の目には闇王たちも十分加害者に見える。


「あなたねぇ、アドルフォしゃまの気を引きたいからってワジャとぶつかったでちょう」

 取り巻きさんのキンキン声はまだ止まらない。

 舌ったらずな取り巻きさんがいくら凄んでみても、煩いだけで怖くはない。

 まぁ5歳くらいなんでちゃんと発音できなくても年齢的にはおかしくないんだけど、学園に入園している子は発音に問題がない子が殆どだ。

 国の中でも頭と体の発達が進んだ子が入園してるってことかなぁ。

 あ、決してこの取り巻きさんが肉体的に発達してないって言いたい訳じゃないのよ~。(棒読み)


「平民のくしぇに!なまいき!」

 平民の女子は頭に飾り気のないボンネットを被っているので、すぐに分かってしまったらしい。

 貴族が平民に対する態度なんて良いはずが無い。

「いえ、コスモスを選んでて気づかなかったんです。ごめんなさい。態とじゃないです」

「まぁ、あつかましい。良くそんな嘘が言えたもんだわ」

 キンキン声が取り巻きその2からも発声されたのを切っ掛けに、私は思わずメグの前に飛び出ていた。


 うひゃぁ。飛び出たのはいいけど、どうしよう。この雰囲気。

 メグを助けたい一心だったんだけど、5対の目にがっつり見られているよ。

 あわわわわ。


 結局、土で汚れたメグの右手を掴んで引っ張った勢いで立ち上がらせ、「ぶつかってしまって申し訳ございませんでした。失礼します」と誰の顔も見ずに早口で言って、メグの手を引っ張ったまま走ってその場を後にした。


 兎に角フェリーペたちの所へ走った。

 後ろの方で取り巻き2人がギャイギャイ言っているのが聞こえるけど、ここで立ち止まってはダメ!

 折角摘み取ったたくさんのコスモスは、事件現場に置いて来てしまった・・・・。

 何はともあれ、私達の顔を覚えられる前にあの一団から離れなくっちゃ。


「どうしたの?そんなに急いで」

 私もメグも息切れですぐにフェリーペに答えられない。

 それでも何とか説明したら、もう馬車の中に避難した方が良いという事になり、早々に馬車の中に逃げ込んた。


「コスモスが・・・・」というメグの呟きに答えて、ボブとフェリーペが私たちのためにコスモスを両手いっぱい摘んで来てくれた。

 ネルの敷物や弁当の入っていた籠なんかも二人が片付けてくれて、4人で大人しく馬車で良い子にしていた。


「まぁ、気にする事はないと思うよ。闇王の所へはいろんな女生徒が粉掛けに近寄ってるみたいだから、こっちの顔なんて覚えてないと思うぞ」

 しばらく4人で馬車の中で息を殺す様に固まっていたが、漸く落ち着いて来てフェリーペがメグの肩をポンポンと軽く叩いて慰めた。

「そうだといいんだけど・・・・」

「ただぶつかっただけなんだろう?ぶつかったのは闇王に?」

「えっと、よく分からないの。誰かにぶつかって転んだと思ったら、大きな声で叱られちゃったから・・・・」

「闇王様と話したの?」

「ううん。女の子が一方的に怒鳴って来ただけ・・・・」

「そうかぁ。大変だったなぁ」


「メグ、大丈夫よ。ただぶつかっただけでずっと怒ったりはしないと思うよ」

 メグを慰める言葉を発しながらも、私の胸中は不安で一杯だった。

 1年生しか参加していない遠足の、4人しかいない平民の女子生徒の内の2人。

 調べようと思ったらすぐに分かってしまうよね。

 

 自分に言い聞かせる様に大丈夫って言っても、気休めでしかない。

 でも、ただぶつかっただけで何かされるとは思わないけど・・・・。

 何かされるとしたら、闇王様よりも、どっちかというとアドリエンヌ様とその取り巻きの方が怖い。

 でも、私たちが貴族なら闇王様をめぐるライバルと認定されて嫌がらせを受けるかもしれないけど、平民の、それも貧しそうな(ごめん!メグ)服装の女の子を敵視する事はないんじゃないかなぁ・・・・。

 うん、大丈夫だよ。きっと・・・・。


 しかし、事は遠足でのアクシデントだけに留まらなかった。

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