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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
114/549

11

「おはよう」

 教室のあっちこっちで週明けの朝の挨拶が繰り返されている。


「はい。これ。バナナね」

「おおお!あの甘いやつか」

 そう言ってフェリーペとボブからは銀貨を2枚づつ徴収。

 流石に銀貨2枚ももらうから、一人あたり6本ずつの房を、外からは見えない様に綺麗な紙で作った紙袋に入れて渡した。

 もちのろん、メグにはタダだよ。

「うわぁ、ありがとう。美味しそう」と言って見せてくれた微笑みだけで十分っす。


「席に着け~」

 顎に無精ひげを生やしたガスペール先生は教室に入りながら誰を見る事もなく言うセリフは毎度同じだ。

「先週言っておいた様に、今日はこれから全校生徒で遠足だ。馬車については先週お願いした通りだ。くれぐれも3人以下で移動しない様に。4人以上でな。でないと馬車が多くなり過ぎて渋滞するからな」

「「「は~い」」」

 ガスペール先生は出席を取り、出口へ向かったところでハタと立ち止まり、「あ、忘れるところだった、学食が用意してくれる弁当を受け取って各自の馬車に乗れ~」と、いつもの様に大事な事を後から付け足して教室を後にした。


 それにしても何故月曜に遠足なのか。

 家から寮に戻ってくるのに馬車を使う貴族生徒の数が多く、その馬車をそのまま使わせてもらうという学園側の思惑があるのだ。

 ただ全ての生徒の馬車を使うと相当な数の馬車になるので、事前に学園がお願いしていた家の馬車に友達同士で乗り合う形にしてあるのだ。

 あぶれた者も一纏めにして、誰かの馬車に乗せてもらう事になる。

 知ってる者だけじゃなく、同じクラスの良く知らない者も乗せての片道1時間、その間に会話をして親睦を図って欲しいというのが学園側の考えだ。


 ありがたい事に私達はいつもの4人でフェリーペの馬車に乗せてもらっている。

 お貴族様が持つ豪奢なモノではないが、さすが魔道具を売っている大店の馬車、乗り心地が良い。

 揺れが少ないんだよね。

 しかも外見は非常に質素なのに中に入ると椅子は豪華でクッションが良く利いており、内装もとても綺麗なのだ。

 しかも大きさも小さ目なので、4人で座席が埋まってしまうところが良い。

 そうでなければ、ハートマークが浮かぶ目で毎日フェリーペに熱い眼差しを送っているナナやマリベルが一緒の馬車になる確率が高かったので、ほんと~にこのサイズの馬車で良かった。


 そんなこんなで片道1時間の道のりを何台もの馬車を連ねて大移動。

 着いた先は大草原。

 綺麗な色とりどりのコスモスが咲いている。


「はぁ~。大自然だぁ。気持ちいい」とメグは馬車を降りるなりコスモスの方へ駆け寄って行く。

 私も遅れまじとそれに続いた。

 お弁当はフェリーペとボブが運んでくれてる。

 こういうところは紳士なんだよね、二人とも。


 散々コスモスを堪能して二人のところへ戻ると、ネルの敷物の上に4人分のお弁当と飲み物が置いてあり、ちゃんと番をしてくれていた。

 もちろんあの紙袋も忘れずに置いてある。

「私たちコスモスを見て来たからボブたちも行ってくれば?今度は私たちが場所取りしておくから」と言ったら、「男二人で花見って・・・」と言いながらフェリーペとコスモスの方へ歩いて行った。


「フェリーペってさぁ、アウレリアの事をお前呼びしてるよね」

 ぶふぉっ。

 メグって急に何を言いだすの?

 ネルの敷物の上に座り込んでほっと一息ついていた所に、思わぬメグの発言にアタフタしてしまったジャマイカ。

「ちょっ、ちょっと」

「二人、仲が良いもんね」

「いやぁ、仲は悪くはないけど・・・・。この前、お前って中身は男だなって言われたよ?フェリーペに」

「あははははは。確かにリアって女の子女の子してないよね。見た目はこんなに女の子らしいのね」

「ええー?」という下らない会話をしていたらフェリーペたちが戻って来たのでみんなで昼食にした。


「このバナナっていうのめちゃくちゃ美味しい」から始まって、バナナを賛美する言葉が続いた。

 普段無口なボブが熱弁をふるっているって珍しい。

 お弁当を食べた上に、更にバナナ2本をあっという間に食べちゃったよ。

 フェリーペも2本食べ終わって、「これ、売ってないってどうにかならないの?」なんて言っている。

「ごめんね。市場に出回ってないし、ウチの温室でしか育ててないみたいだから家族用なんだよね。量が少ないからお店でも出してなんだよ・・・」

「しかし、リアん家が『フローリストガーデン 光』だったなんてねぇ」なんてボブがしみじみ言うから、ついつい「いつかウチに遊びに来てね」なんて言葉がポロっと零れ出てしまった。

 週末に母さんがみんなを家に連れておいでって言ってたしね。


 そしたらすかさず、「おおお!『フローリストガーデン 光』で食事!何時俺たちを招待してくれるの?」なんてシレっとフェリーペにお食事までオネダリされてしまった。

「次の週末に父さんたちに相談してみる・・・・」

 遊びにおいでって言っておきながら、レストランなのに食事を出さないっていうのも結構イケずだよね。

 まぁ、しょうがないなぁって肯首したので、招待する事がほぼ確定されてしまった。

 むむむ。


 その後、先生たちから好きなだけコスモスを持って帰って良いと言われ、メグと二人でハサミ片手に摘みに行った。

「私、オレンジのが好きだからオレンジだけで大きな花束を作りたい」とメグも張り切っている。


 私はいろんな色の花束にしようと夢中で採集していて、さっきまで横でコスモスを選んでいたはずのメグがいないと気付いた時、ヒステリックな大きな声が響いた。

「あなたっ!何アドルフォしゃまにぶちゅかっているの?その服、平民クラシュの子でしゅね。どきなしゃいよ!」 

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