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「春の遠足ぅ?」
ホームルームが始まる前だからか、疎らに席に着いていた同級生たちに変な目で見られた・・・・。
「お前なぁ、なに変な声上げてんだ」と、フェリーペから軽い拳骨を頭に頂きました。
うぃーっす。
「遠足は毎年の行事らしいぜ」
「えええ。何か面倒・・・・」
「おまっ!何、本心をもらしてんだ」
「えへへへ」
「えへへじゃないよ」
なんか最近、フェリーペとの会話がお笑いの様になって来た気がするのは気のせいだろうか?
なんかいつの間にかお前呼びになってるし・・・・。
あ、ほら、メグが目じりに涙を浮かべて笑っているよ。
「それはそうと、おやつを持って行っていいらしいぜ」
「え?おやつ?バナナはおやつには入らないよね?」なんて前世のノリで言ってみたら、「え?バナナってこの前の美味しいやつ?ぜってぇ持って来いよ!」と、何故かフェリーペから指顧された。
何で?
〇疋屋もどきのバナナが美味しいのは分かった。
バナナはおやつに入らないもの定説。
でも、何故に私が貴重なバナナを此奴に持って来ないといかんの?解せぬ。
「あれから家の者を通じてバナナについてフローリストガーデン 光に問い合わせてもらったんだよな。でも、売り物じゃありませんって言われてさぁ」
早!対応、早!早すぎじゃん。
だってバナナ食べたの2日前だよ?
言われてさぁじゃないよ!あれは家族というか私が消費するために植えてもらってるんだよ。もう!
「売り物じゃなくって家族用ってんだったらお前、持って来てくれよぉ」
「むむむ」
「えええ?リアってフローリストガーデン 光のところの子なの?」と無口なボブが前のめりになって聞いて来た。
「フローリストガーデンって?」と王都に来てからまだ日数の経ってないメグは聞いた事がなかったみたい。
「今、王都で一番ホットなレストランだよ」と無口なボブが力説してくれる。
一般的にウチの店ってそういう認識なんだぁ。鼻高々だよ~。
「金なら出すぞ」
きらり~~ん。
自分の目が今光った自覚あるよ、私。
フェリーペ君、金を出すとな?
「いくら出すの?」
「そうだなぁ。俺のお小遣いで出せる上限を考えると、銀貨2枚までかなぁ」
「銀貨2枚!」
銀貨1枚は日本で言うところの千円くらいだね。
正直言って、種や苗から育てなくても、バナナそのものを自分のスキルで呼び出せる私としては銀貨2枚は美味しい!
めっさ美味しいでござる・・・・。
「乗った!」
「やった!」
「今週末、家に帰った時に持ってくるよ」
「おう!頼むぜ」
フェリーペとこんな会話をしていた間、ボブとメグの2人は私たちの会話をじっと聞いていた。
「銀貨2枚もするフルーツってどんなん?」と無口なボブがポツリと言ったら、「めちゃくちゃ旨いフルーツだ。甘くてねっとりもっちり・・・・」とフェリーペが返し、ボブもメグも欲しいと言い出したが、ボブはともかくメグの実家は裕福ではないゴンスンデの小さな雑貨屋だ。
メグにだけこっそり「大丈夫、ちゃんと無料で持って来るよ」と約束して、男の子2人からはそれぞれ銀貨2枚をせしめる事にした。
どっちにしても私は毎週末、家に帰るつもり。
特に今週は学園が始まって最初の週末なので店がちゃんと回ってるかの確認する意味もあって絶対に家に帰るつもりで、既に申請書も提出済みだ。
家から寮に戻る時、忘れずにバナナを持って来よう。
「それより遠足って?」と学園の行事に対して知識がないので聞いてみた。
「遠足ったって、王都たるオルダンテから馬車で1時間の所にある草原でのんびりするってだけの話さ」
「フェリーペはそこへ行った事あるの?」
「ないよ」
「じゃあ、どうして知ってるの」
「ああ、従兄が学園に通ってた時も同じで、馬車に乗ってお弁当持って花を見て帰ってくるんだってさ。目的は親睦を深めるとかだったな」
「クラスで親睦を深めるってこと?」とボブが不思議そうに聞いた。
「貴族クラスは親睦を深めないとクラスがバラバラだからね」
「ん?どういうこと?」
平民クラスじゃなくって貴族クラスだけってこと?
「あっちは教科毎に学力順にクラス分けされるからホームルームが一緒でも、なかなか仲を深められないから遠足をって事らしいぜ」
「へぇ~。でも、面倒臭いよな。貴族だけがやればいいのに」
「そうだよね~」と思わずボブに同意してしまった。
それまで大人しく話を聞いていたメグが、「お弁当って各自が用意するの?それとも学食が?」と身を乗り出して来た。
メグさんや、君は食べ物の方が気になるタイプ?
「どうなんだろうなぁ。馬車は用意しろって言われてるのに弁当については何も言われてないから、学食が用意すんじゃないの?だって俺たちに料理しろって言われても料理なんて出来ないぜ」
「それに寮の部屋も、平民のはキッチンついてないしね」と思わず鼻息荒く言ってしまった。
だって、部屋に小さくていいからキッチン欲しいじゃんね。