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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
110/549

7

「皆、用意はいいか?」

 そう言ってガスペール先生は計算問題が書かれた紙を黒板に張り出した。

「早く終わった者から教室を出ていいぞ。では、はじめ!」


 皆一斉にカリカリと羽ペンで紙に計算の答えを書いている。

「あ、それとな。45点以下は補習だからな。慌てずにちゃんと計算しろよ」とガスペール先生が釘を刺す。

 ガスペール先生は一番大事な事を一旦話し終わった後につけ足して言う癖があるみたいで、もう、最初に言ってよっていう事が時々ある。


 数学ではなく算数の計算なのであっという間に計算が終った。

 さっさと解答用紙を提出し、私は錬金術クラブの部室へ向かう。

 だって55分間の授業なのに、7分で問題を全て解いたので次の授業まで時間がたっぷりあるのだ。

 勿論、この7分の間に検算も終えてるよん。


 食堂でお茶をしてもいいんだけど、時々何故か授業のある時間にも関わらず貴族な方々がいらっしゃるので、君子危うきに近寄らずで食堂へ行くという選択肢を早々に外した。

 しかし、彼らは授業に出なくてもいいのかね?

 それとも私みたいにさっさと問題を解答して、休憩しているのかな?

 まぁ、錬金術クラブの部室にも小さなキッチンが付いているので、そこでお茶を入れよう。


 教室より大きなガランとした部室には誰もいなかった。

 ストレージからクレープパンとクレープの材料を取り出し、ぱぱっとクレープを焼いてみる。

 寮の部屋にはキッチンが付いてないので料理ができないのだ。

 なんでもお貴族様の部屋には小さなキッチンが付いているらしい。

 部屋の大きさも平民の部屋の三倍はあるらしい。

 平民の部屋は3階建ての3階に集まっている。

 3階には下位貴族の女子の部屋もあるが、腐っても貴族、彼女たちの部屋は平民の部屋の倍の広さがあるのだ。

 でも、名家の上位貴族はクリサンテーモ地区の寮になるが、それ以外の上位・中位の貴族が下の階に部屋が用意されているのに比べ、下位貴族の生徒は階段を上がらなければならない最上階や2階に部屋が集められているのだ。


 貴族の部屋のキッチンは、使用人を生徒に付ける事が禁じられている学園において、使われる事はめったにないので無用の長物と化している。

 どっちかっていうとキッチンが必要なのは平民の方なんだけどなぁ。


 ふんふん♪ふふん

 ストレージから既に泡立ててある生クリームとバナナとチョコシロップを出す。

 バナナはウチの温室で作ったもので、このチョコシロップは私のスキルで作った物をストレージに溜めているのだ。


 お昼前なんだけど・・・・前なんだけど・・・・久し振りのクレープなので2枚作っちゃいました!!!

 小さ目のクレープなので、これくらい良いよね。

 このバナナ!

 前世の〇疋屋で売っていた様な皮はまっ黄色で少しも茶色になってないのに、実はとってもむっちり甘いバナナなのだ。

 ふふふん♪苗は私のスキルで呼び出しちゃったからね。

 前世でたった1回食べた事のある千〇屋のバナナ。

 貰いものだったのだが、あれは一体どれくらいの値段だったんだろう。

 下手したら1本数千円?


 パクっ。

 美味しい~~。

 あ、紅茶淹れるの忘れてたよ。

 部室の薬缶に水を入れ、火に掛ける。

 きっと2つめのクレープに齧り付く前には紅茶が出来るだろう。


 アムアム。パクパク。

 あま~い。


「ガラガラ」

 大きな口を開けてクレープに囓りついていたら、不意に部室の引き戸が開いた。

「やっぱりここに居たな。俺も終わったから来たぞ」とフェリーペがズカズカと部室の中へ。

 そしてその目はテーブルの上に乗っていたもう一つのクレープに。


 うっ!嫌だ。これは久し振りのクレープなのよ。

 2つとも絶対私が食べるのだぁ。

 実家にいる時と違って、甘い物を食べる機会がぐっと減ってしまったこの寮生活。

 しかも大好物のクレープ、あ~んど、千〇屋もどきのバナナウィズチョコなのよ~~~。


「何か甘い匂いがするな。それって甘いの?」

「う、うん」

「もらっていい?」

 うきゃーーー!言われてしまった。貰っていいって・・・・。

 涙目になりながらも、クレープの乗っているお皿をフェリーペの方へズズイと押し出した。

 皿を押し出した私の手が震えていたとしても、誰も責めないと思う。


 パクっ。

「何、これ。旨!このフルーツは何ていうの?ってか、この黒い液体っぽいのも何て言うの?見た事なんだけど」

 聞いちゃいますか?それ聞いちゃいますか?

 この世界には無い、いや、あるかもしれないけど、少なくともオルダル国には無いんだよ。

 どうやって説明しよう・・・・。


「ウチの家、食堂だって言ってたでしょ?」

「うん」

「ウチ、フローリストガーデン 光なのよ」

「ええええ!?マジ?」

「うん、マジ。でね、温室っていうのがあって、そこで育ててるフルーツなので売ってないの。バナナって言うの。で、その黒いソースもウチのレストランで作ってるので他では売ってないのよ」

「おおお!フローリストガーデン 光なんだ。お前の家。すごい!」

 えへへへとテレていたら、フェリーペがガバっと顔を上げ、はたとこっちを見つめて来た。

「って言う事は、お前、大公様の精鋭なのか?」

 あ、知ってたのかぁ、

「うん。というか、今は違うけど、卒園出来たら精鋭集団の一員になれるかも?」

「おおおお!すごいな、お前。綺麗で頭が良いだけじゃなかったんだな」

 ゲフン、ゲフン。

 本人を目の前にしてそんな事シレっと言わないでよ。照れる。

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