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読書クラブを見学するために食堂の2階にある図書室へ行ってみた。
図書室で思い思いの本を部室で読んだり、同じ作品を部員全員で読んで意見交換したりが主な活動で、その他には日本で言う図書委員の様な事もしているらしい。
「あんまり活発なクラブじゃなさそうだったね」
「うん。本を読むって基本一人でする事だからな。どうしても活動は地味になるかもな」
メグもあまり食指が動かなかった様で、付き添いで一緒に見て回っているフェリーペにもあまり魅力的には見えなかった様だ。
「じゃあ、次はクラブが集まっている部室棟へ行きましょうか」
メグの音頭で部室棟へ移動しつつ、どんなクラブがあるのかワクワク感が戻って来た。
クラブの部室が集まっている建物が学園の敷地中央奥に2棟ある。
学園の敷地を田の字で考えると左上の枡あたりが一般寮で、左下がスポーツエリアで様々なコートや走るためのトラック、魔法の授業を行う講堂なんかがあり、教室棟は右下になる。
田の字右上のところにクリサンテーモの方々の専用の寮や食堂があるのだが、まぁ、あそこは私たち下々の者と交わる事は無いので、木立の先に建物があるなぁっていう認識に留まっているんだよね。
次の部室は美術クラブだった。
静物画を描いている様で果物が盛ってあるお洒落なガラス容器が皆の真ん中に鎮座しているのを、背の高いキャンバスで囲む様にして絵を描きなぐっていた。
高い画材を使う事もあり、貴族率が高い。
平民の着ている服と貴族生徒の着ている服には明確な違いがある。
生地の上等さも違うのだが、女子生徒がボンネットを被っていたら平民だと一目で分かるのだ。
メグも私もボンネットを被っているので、美術クラブの上級生の対応も塩対応だ。
私はこっそり心の中のリストから美術クラブを削除した。
その後も、ダンスクラブや騎士クラブ、魔法クラブなど色々回ったが、これらのクラブもほとんどがお貴族様なので例えメグが入部したとしても私は入部しないだろうなぁ。
一緒のクラブに入りたい気持ちはあるけど、お貴族様が多いところに入るくらいなら一人でも錬金術クラブに入ると思う。まぁ、錬金術クラブならフェリーペやボブがいるので一人ではないしね。
貴族多めのクラブを候補から削除していたら、心の中の候補リストが段々短くなって来たよ。
いよいよ錬金術クラブの戸を叩いた。
「お!フェリーペじゃん。入部してくれるの?」とフェリーペより更に美しい男子生徒が親し気にフェリーペの肩を叩いた。
彼の微笑みは天使の様な美貌を更に眩しいものにしている。
「オスカル先輩、もちろん入部しますよ。ボブもね」
「おお!ボブもか。ようこそ、錬金術クラブへ。で、そちらのお嬢さん2人も入部してくれるの?」
メグはにっこり笑って「今、色んなクラブを見て回ってるんです。もしこちらに入部したら、その時はどうぞよろしくお願いします」と爽やかに説明をしてくれたので、私は無言で横に立って頷くという省エネモードで答えた。
「おおお!是非入ってくれよ。ウチで錬金術を学べば作った物を売ってお小遣い稼ぎもできるぞ」とオスカル先輩がグイグイ押してくる。
「あのぉ、魔石で動く様な商品も作ったりするんですか?」
調理器具を作るのに一番必要な事なので、ここは遠慮せずに質問してみた。
「もちろんだよ。ウチで作ってるモノの半分くらいは魔石で動かしているよ。あ、もし入部してくれなくても、年に2回即売会イベントを開いているから、その時は是非見に来てね」と美しいご尊顔を笑みにして宣伝もされてしまった。
オスカル先輩の神々しい笑顔を見て、綺麗は武器。綺麗は正義と脈絡もなく思ってしまった。
本当に美しい少年だ。
次の部室へ移動する時、メグが「リアは錬金術興味があるの?」と聞いてきたので、「うん。調理器具とかを色々作ってみたいなとは思ってる」と言うと、「うんうん♪」と頷きながらメグは次の部室の戸を叩いた。
次はマナークラブだった。
茶会等を開いたりするクラブで、殆どが貴族の女子だった。
クリサンテーモの象徴である青色の制服を着た人が多かったので、ここは真っ先に私のリストから除外してしまった。
メグも何か感じる所があったのか、「リアはマナークラブはあまり好きじゃないの?」と聞いて来たので、「お貴族様が多いクラブは何かと気を遣わないといけないので・・・・」と言葉を濁しておいたら、メグも大きく頷いていた。
スポーツのクラブは男子が殆どなので飛ばして、最後に演劇部を見に行った。
ここは今までで見たクラブの中でも一番貴族と平民が交ざっていたクラブだ。
平民の数も可成りいるのだが、クラブ内での棲み分けができているのか、平民の上級生は平民だけで一か所に集まっているのが見て取れた。
う~ん、ここも無しかな。
どのクラブが良いかなんて話ながら寮に帰った。
寮は入口は男女一緒で、直ぐに食堂があるのだが、そこから左右に建物が分かれており、左が男子専用、右が女子棟だ。
「じゃあ、夕方の鐘がなったら一緒に夕食を食べようぜ」
「「は~い」」
一旦男子と別れて、メグと一緒に女子棟の階段を上りつつ、今夜の夕食のメニューは何かなとか、どんなクラブが良かったかなんて話が出来るのが嬉しかった。
メグとは、いいえ、フェリーペたちとも良い友達になれる気がする。