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料理魔法なんて魔法あったんだぁ  作者: 花明かり
天色の章 <前半>
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3

 (まば)らに顎髭が生えているこの中年男は教壇の前に立つと「お前らの担任のガスペールだ。お前らが就学する4年間、ホームルームと一般教科全般を担当するからよろしくな。で、魔法スキルのある奴は何人くらいいる?手を挙げてみろ」と超短い自己紹介の後に生徒の把握に入った。


 クラスの殆どの子が手を挙げた。

「そうか、13人か。で、火魔法スキルの奴は?」

 さっきこっちを見ていた男子と女子が両方とも手を挙げた。

 その他にも2名、男子が手を挙げている。


 ガスペール先生は水や風、土も順次手を挙げさせ、最後まで手を挙げなかった私を見て、「お前が例の奴か」と言われたので、恐らく料理魔法スキルの事を指しているのだろうと無言で頭を縦に振った。

 変わった魔法スキルなので自分からは積極的にそれを周囲に伝えたいとは思っていないし、大公様の意向もあるので、教師の間でも私のスキルについては言及を避けてくれるハズだ。


「で、お前らが魔法スキルなしだな」と教室の端っこに座っていた男子二人が無言で頷いた。


「よし。魔法の授業だけは貴族生徒と一緒になるが、魔法の属性によってクラスが変わるから気を付けておけ。お前」と私の方を指さし、「お前はどの属性のクラスに行ってもいいぞ」と付け加えて、出席簿らしいモノに何かを書き込んだ。


 先生の説明によると、魔法の授業などはお貴族様と一緒なのだが、地理や歴史、読み書き、計算などの一般教科は平民だけでこのホームルームで受講する。

 しかし、お貴族様の子弟は平民とは違い、教科毎に成績順で教室が振り分けられているらしい。

 つまりホームルームはCクラス、算数はAクラス、歴史はCクラスみたいに生徒の方が教科毎に教室を移動して受講するのだ。

 そりゃあ、小さな時から本に囲まれて家庭教師までつけてもらっているお貴族様の子弟と、普段から親のお手伝いが優先される平民の子供では入園した時から知識に大きな差があるのは当たり前だよね。

 一緒に学ぶ事なんて出来ないだろう。

 入試の上位2名が平民という今年が例外で、普通は貴族が上位を占めるらしい。

 本当は、魔法の授業も貴族と平民で分けて欲しいくらいだけれども、魔法の教師の数は限られているらしく、苦肉の策で貴族と平民の子を一緒に教えているらしい。


「そんじゃぁ、自己紹介をしてもらうか。こっちの端から始めてくれ」

 先ほどこちらを見つめていたイケメン男子が立ち上がった。

「俺はフェリーペ。家は王都の商人。スキルは火魔法。よろしく!」

 さすが幼くても学園に入学できる程の子だ。自己紹介もちゃんとしている。

 さっきからフェリーペの方をガン見していた女子二人がきゃいきゃい言っている。


 フェリーペの横に座っていた背が低くて大人し目の男の子が自己紹介をはじめた。

「名前はボブ。王都で工房をしている家です。スキルは風魔法。よろしく」


 何人かの男子生徒の自己紹介が済むと今度はさっき私の方を見ていた女子の番になった。

「メグです。ゴンスンデの町から来ました。火魔法スキル持ちです。よろしくお願いします」

 あれ?メグって学年2位の子では?

 そんな事を思ってたらガスペールが「お前は入試2位の生徒だな」とわざわざ念押しをした。

 こんにゃろーーー!2位で念押しってことは、1位の私も念押しされるってことじゃん。

 悪目立ちするからやめろぉぉぉぉ!と心の中で叫んでみても、結局念押しされるんだろうなぁ・・・・。


 残り2名の女子はマリベルとナナという名で王都出身らしい。

 常に目がハートマークでフェリーペにロックオンされていて、とてもお友達になれる感じじゃなかった。

 女子の数が少ないからとても残念。

 でも、メグさんとはお友達になりたいなぁ。


 とうとう私の番が来て「アウレリアと申します。王都出身です。どうぞよろしくお願い致します」と何の魔法スキルかは明かさないまま自己紹介を終えると、案の定、ガスペール先生が「お前は入試1位だな」と念を押して来た。

「「「おおお!」」」と男子中心に声が上がった。


「今年は入試1位と2位が平民ということで俺も鼻が高い。このまま成績を下げない様、がんばってくれ。みんなも努力を怠らずドンドン成績を上げてくれ。後ろ盾のない平民が大成するには、学園で成績優秀っていうのが一番箔が付くんだぞ」と幼い子供たちに世間のリアル事情をぶっちゃけた後、時間割を配りはじめた。


「貴族教室の裏に食堂がある。授業のある日の昼はみんなそこで食べる様に。で、朝食、夕食、休日の昼は寮の食堂だ。週末は実家に帰りたい奴は帰っていいが、事前に寮長に所定の申請書を提出する様に。医務室は教室棟にも、寮にもあるが、クラブ部室棟にはない。あ、そうだ。この学校では生徒は全員、何かのクラブに所属しなければならないぞ。運動系もあれば、文科系もある。この1週間の間にあっちこっちのクラブを訪問して、自分に合いそうなクラブに所属しろよ」


 入園前からの知人がいる生徒はお互いにどのクラブにするかと小声で話し始め、教室内がちょっとザワザワしはじめた。


「よし!今日は入園式だけなのでホームルームはこれで終了。今日の昼は教室棟の食堂な。後、上級生が午後からクラブの勧誘のために、各クラブの部室にいるはずだ。怖がらずにできるだけたくさんのクラブを訪れてみることだな。それではまた明日」と言って、ガスペール先生はさっさと教室を出て行った。


 どんなクラブがあるんだろう?

 でも、その前に友達作りよね。

 4年間の学園生活をボッチで過すなんて、ガクブルモノだわ。

 私はさっさと席を立って、入試2位のメグの元へ移動した。

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