第2話
朝を迎え、窓から日差しが差し込んできた。
まだ夜であってほしいと願った祐希は、瞼の裏から見える光が朝を悟らせる。
祐希は、いつもより静かな朝だと感じた。
「面倒だな…学校休も」
身支度を済ませ、学校に向かう素振りをした。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
祐希は、優子との会話を交わして家を出た。
中学生の穂乃香は、この時間には既に学校に行っているが、祐希は中学校以上に家から近い高校に通っているためこの時間に家を出れば間に合う。
家を出た祐希は、少し歩いた先の公園で足を止めた。
「もしもし、百合川先生ですか?」
祐希は学校に嘘をついて貴重な休みを獲得した。
その後、祐希は一人で街を徘徊していた。
高校を通り過ぎ、中学校を通り過ぎ、気づけば祐希は隣町まで来ていた。
今日の祐希は学校に行くのに、どうしても気が乗らなかった。
自分は頑張っているから、少しくらい休みが必要だ、と考えたのだ。
何も考えずにぼんやりしていると、
「危ない!」
と、女性の声が聞こえた。
状況が理解できていない祐希が、その状況を理解するのには、そう時間はかからなかった。
祐希の身にクラクションを鳴らしながら車が迫ってきていた。
それに驚いた祐希だったが、同時にこう思った。
このまま轢かれてしまえば…楽になれるかも、と。
そのようなことを考えているうちに、車は刻々と迫ってきている。
車は残り1メートル程度のところまで来てきた。
その時、突如として後ろから背中を押された。
「えっ…!」
車が迫ってきていた時よりも驚いた祐希は、体制を崩しながら後ろを振り向いた。
その人は女性だった。
祐希が、先程の女性の声の主だろうと思った時に、彼女の体はすでに車の進行方向に吹き飛んでいた。
車は急ブレーキをかけていたことから、そこまで遠くには飛ばなかった。
しかし車は、かなりの重量を持っていたことから、彼女は無事では済まなかった。
彼女は目立った血こそ出ていないが、体を動かせないようだった。
祐希は、とても驚いた表情で、
「大丈夫ですか!?誰か救急車を!」
祐希は、自分が彼女に怪我をさせてしまったという罪悪感を抱えながら祐希は周りに助けを求めた。