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カイとメイリアとラウンツ

ザリザリ……ザリザリ……。


子供の頃、お父さんに頬擦りされて痛かったなぁ……。


ザリザリ……ザリザリ……。


ん? 夢じゃない……痛い……。




!?


「ぎゃぴぃ!」


目の前に小型ドラゴン、もとい、カイがいた。


「カイ、おはよぅ……痛いよぉ」


「お主がずっと儂の世話をせなんだ悪いんじゃ

ここ最近儂の存在忘れておったじゃろう?」


「う……ごめん、魔王様から念話が来てからバタバタしてて……控えめに言って完全に忘れてた。てへぺろ?」


「全然控えめじゃないがの……まぁいいわい、儂も人界に連れていくのであろう?」


「うん! お願い!」





カイは魔界で見つけたドラゴンだった。


喋れない下竜をテイムすることが出来る魔族はいるが、高い知性を持った飛龍などをテイム出来た魔族は未だかつていない。


これが私のユニークスキルの一つだ。


人族は竜種をテイム出来ないが、精霊を召喚出来るらしい。

魔族はその逆で精霊は召喚出来ない。





前にうちの家族とアーニャの家族で近場の火山付近へプチ旅行に行った際、お兄ちゃんとアーニャと火山で魔物狩の練習をしてた。


夕方になってそろそろ帰ろうかという時に、物凄い魔量が近づいてくるのがわかった。

ドラゴンかと思ったがそんな大きな生物は見渡してもいなかった

飛龍にはステルススキルがあるらしいから姿だけ消しているのだろうかと思った。


とにかく私達三人は一目散に逃げた。

……が、その物凄い魔量が迫ってきてもうダメだと思い、ありったけの魔力を込めてソレに向かって〈 炎天 〉を放ったがかき消された。


その後、スポッと私の胸元に魔量が潜り込んできた。

あぁ……心臓逝ったかな……と思ったが、何の変化もない。


胸元を覗いてみると、赤いトカゲがいた。


「助けておくれぇ! 腹が減って死にそうだったんじゃ……」


なぜか三人とも毒気を抜かされて、旅行先の宿へ連れて帰った。


夕食の一部を分け与えてあげたが、今度は「腹一杯じゃ」とぬかした。

遠慮してるのかと思い、三人で「ご飯食べていいよ」と説得したら、なんとも言えない顔で食べていた。

奥ゆかしいドラゴンである。爺さんだからだろうか。

ドラゴンの寿命は4000〜5000年だ。カイは約4000歳とのことだった。


旅行から帰ってきてからもカイは当然のように家に棲みついた。

爺さんなだけあってふてぶてしい。

最初の奥ゆかしさはどこへ捨てた。


圧倒的な魔量が常にそばに居るのは心臓に悪いので、普段はトカゲ姿で魔量もステルスして貰えるよう頼んだ。


でもドラゴンの姿になった時の大きさは圧巻だった。

人を丸呑み出来るくらいの頭部を持っているというだけで、その大きさが分かると思う。


ともかく、そんなひょんな経緯で1年前カイは新たな家族となった

名前は好きに呼べと言われたので、名付け親は私だ。






「完全に忘れられておったしのぅ……儂どうしよっかなーチラッチラッ」


「ぎゃぴ……着いてきてくださいカイ様」


「あのムチムチが一緒ならいくぞい」


エロ爺め。


「ルルさんも特別探索隊だよ!」


「しょうがないのう行ってやるわい、ムフムフフ……」


「人界に行くんだから、ドラゴンの姿は不味いんだよね、トカゲのままでいてくれる?

いっそ、精霊のサラマンダーって事にしよう!

怪しまれても人族だって言い張れるし!」


「儂、サラマンダーじゃ!」


「ノリノリだね! いい感じ! トカゲのままでも…戦えたよね?確か」


「うむ、小さくなっても大して変わらんぞい! 任せるんじゃ!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「マリリア、二人を魔王城まで送ってくる」


「お母さん、行ってきます」


「母さん、元気で。ニーナの事は俺に任せて」


「うん……うん……絶対に子供達だけで行動しちゃダメよ? 1年前みたいに」


カイ事件の事だ……。


「俺もう成人してるんだけどな……」


「ちゃんと大人と行動するから安心してね!」


「行ってらっしゃい! 魔王様を見つけてきてね!」





「魔王軍第一分隊隊長、ガルスター、魔王様特別探索隊員レイスター及びニーナ、ただいま参上致しました」


「ご苦労、面をあげよ」


お父さんに連れられて、魔王城の謁見の間に再び訪れていた。

王座には誰も座っていない。

魔王様……必ず見つけます。


他には、アーニャとルルさん、その他に女性が一人と男性が一人いた。

同じ特別探索隊員かな?


リオル様が再び口を開く。


「隊員が揃ったので、自己紹介をしておこうか。 ニーナからだ」


「ひゃ! ひゃいっ!」


私が一番末席の左側にいたので私からになったようだ。


「に、にににニーナでしゅ」


噛んだ。


「皆様もご存知の通り、魔王様に拾って頂いた元孤児です。 一週間前に魔王様から念話が届きました。 戦闘は魔法と使い魔です。以上です」


「魔王軍第一分隊隊長、ガルスターの長男レイスターと申します。 ニーナは妹です。戦闘は剣と魔法を少々、以上」


「魔王軍第二分隊隊長、ダスティンの次女アーニャでございます。 戦闘は体術と魔法です。以上でございます」


「……メイリアです……宰相は祖父です……錬金術師です……悪い子は溶かします……」


怖いよこの子……!

でも歳が近そうだから仲良くなれたらいいなぁ。

エメラルドグリーンの髪色で前下がりボブの素朴な感じの子だ。


「元魔王様近衛隊!!ラウンツだ!! 俺にはこの大剣あるのみ!!よろしく申す!!」


ぎゃぴぃ! 鼓膜痛いよぅ! 顔怖いよう!

金髪短髪のムキムキのおっきいお兄さんだ!

このお城で偉い人は顔が怖くなきゃいけない決まりでもあるのかな?


「ルルと申します。魔道具師、魔法服師などとも呼ばれますが、総じて魔具師とでもお呼び頂ければ幸いにございます。 戦闘は魔道具と魔法です。以後お見知り置きを」


「これで全員だ。転移の前に方針を説明する。 宰相、前へ」


「はい、ではご説明致します。

ニーナへ届いた念話では、人界に会いに来い、との事でした。

これは、魔王様がニーナの力を求めていらっしゃる危機的な状況かと思われますため……」


「待った。ニーナ殿が魔王様から念話を受け取ったという証拠は?」


ラウンツさんがなんか疑ってるよう! ホントだよぅ!!


「しょ、証拠はございません。ただ、わ、私は魔王様に命を拾って頂いた身、ま、魔王様の為に命を捧げることはあっても、魔王様を謀るような事は、命をかけても無いと断言致します」


リオル様がラウンツさんを手で制すような形を取って話し始める。


「ラウンツの疑問は最もだ。

だが、彼女には魔族には稀なユニークスキルがいくつもある。魔王様がそれを求めている可能性は高いと、私達は判断した。

何より魔王様の捜索は難航しているため、人員を増やしても良いと、結果的に判断した。

これまでも、魔王様不在の為、暇を持て余した近衛隊員を隊長としていくつも探索隊を派遣しているが、次はラウンツ、お前も隊長になったんだ、励むように」


「そのような理由であれば納得できます、失敬致した」


どうやらラウンツさんは疑ってたというより、自分自身で物事を確かめたいタイプのようだ。

こんな人ならリーダーにピッタリかもしれない。


「では方針について話を進めましょうかな」


ポツンしてた宰相さんが気を取り直した!


「10年も念話が無かったことから、魔王様が念話を送れない状況にあり、魔界へ帰るためにニーナの力を求めていると推測されます。

そのため、念話が通じない場所を探すのが先だっての目的ですな。

今までも、ダンジョンなどに念話の届かない場所が無いか探しておりましたが、未到達のダンジョンや遺跡などを探索すべきかと思われます。

そして今最有力候補なのが、世界樹ですな」


「……世界樹……見えない樹……世界樹の葉欲しい……」


「そうねぇ、世界樹なんておとぎ話の世界よね? 本当にあるのかしら?」


「世界樹の情報に関してはほとんどないですなぁ……そこから探して頂きたい」


「魔界での世界樹の情報は調べ尽くした! だがほとんど情報が無い! 人界の方が情報がありそうだ、頼んだぞ皆の者」


リオル様がそう言うと、転移陣へ移動する流れとなった。





魔王城地下にある転移陣の間


10m四方の部屋の床に複雑な魔法陣が描かれている。


そこへ特別探索隊6人全員が乗り、各自魔力を転移陣に込める

皆の眼が赤く光る。


すると魔法陣から光が円柱状に上ってきて、頭の上を通過すると、私達は別の部屋にいた。






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