ハルキアへ
昨日は散々だった……あれがお兄ちゃんの言ってた悪魔……。
悪魔達の宴の中で、ラウンツさんはこれ以上無いくらいに輝いていた。
悪魔達と対等に渡り合える魔族はラウンツさんしかいない……あれは魔王様でも勝てないかもしれない。
カイは最初「どこがムチムチのお姉ちゃんじゃ!!」って怒ってたけど、すぐに悪魔達に溶け込んでいた。
さすがドラゴン……。
…………そういえば!! お兄ちゃんは見事に逃げ切った! 許さないぞ絶対に! ぷんすかぴーだ!!
「ニーナ聞いてる!?」
「はひぃっ!!」
「もう! 今日の予定聞いてなかったでしよ!!」
ツヤツヤで元気メーターが振り切っているアーニャに怒られた。
あんな事になるならホストクラブで永久奴隷契約の方がマシだったよ!!
「あぅ、ごめん。 何だっけ?」
「冒険者ギルドでルーガルの勇者パーティ募集の情報を集めてからハルキアへ行くんだよー!」
「あ、そっか、ルーガルの事も調べるんだね」
「うむ。 ダンジョンを巡りながら次は北のルーガル国へ行く予定だ」
「ルーガルの方へ行って、木材屋が言ってた珍しい木材の話も確かめないとな」
「お兄ちゃん、どうして珍しい木材の事を調べるの?」
「珍しい木があるなら普通の森とは違うかもしれないって事だよ」
「うむ。 世界樹そのものの可能性は低いが、世界樹の周りに特殊な木がある可能性は十分あると思う」
「その木がある辺りが怪しいってことだね!!」
「なるほど……」
「……ハルキア……新しいダンジョン?……ダンジョン生成についても調べる……」
「む……そういえばそれもあったな……ギルドで聞こう」
「じゃぁ食糧を買ってから行きましょう」
「……ルルさん……急がないけど魔道具作って欲しい……」
メイリアさんが資料の束を出してルルさんに渡す。
「……設計図は資料が無かった……でもどういう原理かは書いてある……お願い……」
「…………わかったわ。 マナの調査用の魔道具ね? 作ってみましょう」
ルルさんが難しい顔で資料を見ながら言った。
「……ありがと……」
冒険者ギルドでまずは依頼票などが貼ってある掲示板へ向かった。
「あ! 勇者パーティの募集があったよ!」
アーニャが指さした所を読む。
[ ルーガル都市にて勇者パーティを募集する
目的:人界へ攻め込む魔族の捕獲・討伐
報酬:魔族一体につき1000万〜1億ルイン
資格:Bランク以上
かつ、ルーガル都市冒険者ギルドの専属冒険者になる事
審査:ルーガル都市冒険者ギルドにて行う]
「…………みんな読んだな?」
全員が頷いたのを確認して、ラウンツさんは受付のお姉さんの方へ歩き出した。
「少し聞きたいのだが」
「はい、なんでしょう?」
「ルーガルの勇者パーティ募集について、この街の反応はどうなんだ?」
「皆さんも志願を迷ってるんですか? 報酬は大きいけどみんな悩んでますね。
魔族の強さは昔ルーガルでかなり噂になっていましたから」
「噂とは具体的にどんなものだ? ある程度までしか知らなくてな」
「ルーガル城の上空で物凄い爆発があったそうですよ。 それこそ城を建て直すくらいの。
その爆発の際に大きな赤い光が街中に広がったので、魔族がルーガル城を攻めたと、当時の一般市民は思ったようですね。
魔族が魔法を使うと眼が赤く光るのはご存知ですよね?」
「……うむ。 その魔族はなぜ城を攻めたんだ?」
「分からないそうです。 攻め込んだ魔族は1人で、その爆発しか無かったことから、自爆テロだったのではないかとの噂です」
「なるほど……魔族に城を破壊できる程の力があるのであれば尻込みするのも分からなくないな」
「魔族と直接戦った事のある人間は軍人くらいしかいないですから、情報が入ってこなくて実際の強さは分からないですけどね。
自爆さえ止めれば何とかなるんじゃ……という希望的観測で志願を決めた冒険者もこの街にはいますね」
「確かな情報も無いのに志願する奴がいるのか?」
「魔族がルーガル城を攻めた際に魔族を追い詰めたのは今のルーガル国王、つまり勇者様だそうですよ。
その勇者様が対策を練っているみたいです。
勇者様が、人界の平和のため。 と謳っているので、正義感の強い人が志願している傾向にありますね」
「正義か……」
「Bランク以上の冒険者なら普通にいい生活が出来るんですからお兄さん達もよく考えてくださいね!」
「我らはCランクだからそもそも資格が無いな」
「あ、そうでしたね。 ハルキアの依頼を受けてましたもんね」
「ああそういえば、ハルキアはいつからあるダンジョンなんだ?」
「ハルキアは確か150年位前らしいですよ。 魔物が弱いので初心者が挑戦するのにちょうどいいダンジョンですね。
最下層まで攻略されているんですが、宝部屋がどうしても見つからないんです。
最下層までの地図も売ってますが購入しますか?」
「……うむ、いくらだ」
ラウンツさんが20万ルインを払って地図を受け取る。
「情報感謝する」
みんなで踵を返しギルドを出て、ハルキア行きの馬車乗り場へと向かう。
「……情報収集はあんなものでよかったか?」
「オッケーよ」
「……初めての古いダンジョン……」
「一応攻略されてるんだな。 あとは宝部屋だけか!」
「うむ。 走ればすぐだな」
ぎゃぴ!! やっぱり!!
初心者御用達とあって、ハルキア往復の馬車は沢山出ていた。
みんなでフードを被り、他の冒険者達と乗り合い馬車に乗ってガタゴト揺られる。
ハルキアはアレイル都市の東側にある。
「メイリア、ハルキアまで寝ていいぞ」
「……ん……」
メイリアさんが亜空間からクッションを取り出して枕にした。
あれは多分アレイル基地までの野営中に夜なべして作ってたグランドダースバードの羽毛クッションだ……。
お布団はさすがに作れなかったんだね……。
ハルキアまでは緩やかな坂道だ。 道を進み森を抜けると遠くに山脈が見えてきた。
「あの山大きいですね」
「あれはオルガからアレイル、ルーガルに沿ってフレーナ国まで続いているキャラリア山脈よ。
大陸の東にある大きな山脈で、急勾配だから登山が難しくてあまり人はいないわね」
「ローシャさんは何も言ってなかったね! ダンジョン無いのかな!?」
「鉱山として一部掘られているけど、全貌に関してはあまり情報が無いわね。
陸から行くには大変だし、反対側の海から行くにしても座礁しやすいから船でも難しいみたい」
「へー。 なんか未知の場所って感じでワクワクするな!」
未知の場所……ダンジョンが無くても、あの山脈のどこかに魔王様がいないかな?
「あ、あのっ! キャラリア山脈は行かないんですか?」
「む。 そういえば世界樹とダンジョンの事しか考えてなかったな」
「……キャラリア山脈を探索しながらルーガルへ向かうと、満遍なく大陸を探索できるわね。
でもその分、ルーガルまで遠回りになるわよ?」
早くサレノバ大森林に行きたいけど……キャラリア山脈もなんか気になる……。
「念の為キャラリア山脈の情報も集めてみるか……」
「はい!」
「ダンジョンを探しにキャラリアを探索した人の本が確か図書館にあったわ……」
「うへぇ……また図書館は嫌だぁー!」
お昼を過ぎてしばらくしたらやっとハルキアへ着いた。
アーニャが伸びをする。
「ん〜〜! ダンジョンにしては街から近いっちゃ近いんだろうけど、疲れたね!」
「メイリア寝れたか?」
「……ん……」
ハルキアの前には露店が並んでいたのでキョロキョロ見渡す。
「お店がいっぱいあります! 沢山冒険者が来るからかな?」
「だな、何日もこもる人も多いんだろうな」
お兄ちゃんと露店に少し近づいたら露店商のおじさんに話しかけられた。
「お嬢ちゃんハルキアは初めてなのかい? なら麻痺抵抗のあるネックレスが必要だよ!」
「麻痺を使ってくる魔物が多いの?」
「そうさね。 ハルキアで出た宝石で出来てるから効果はバッチリだよ!」
「ハルキアで出た宝石?」
「なんだい、ダンジョン自体初めてかい?
ダンジョン内の宝箱から出る宝石は、そのダンジョンの魔物に抵抗出来る効果があるものが多いんだよ。 それを更に魔道具に改良したのがこのネックレスだ」
宝部屋は見つかってないって事は、道中にも宝箱があるのかな?
今まで最短距離で突破してたから知らなかった。
「武器以外にもやっぱり宝石が出るんだね」
「……は? ダンジョンから武器が出るわけないじゃないか」
「……???」
「……少し見せてもらっていいかしら?」
ルルさんがスッと来てネックレスを見た。
「同じような効果の物を持っているからいいわ。 ごめんなさいね」
「そうかい。 攻略に困ったらまたおいで! 相談に乗るよ!」
ルルさんに手を引かれてみんなの所へ戻った。
『武器が出るのは新しいダンジョンだけなのかしら……? 難易度の高いダンジョンしか挑戦していない私達の認識を改める必要があるかもしれないわね……』
『……普通のダンジョンは武器が出ないって事?……』
『そうね、ニーナちゃんが見つけたダンジョンに関する記述には、確かに武器の事は書かれてなかったわ』
『宝石とか金銀って書いてあったね!』
『……宝部屋を見つければハッキリわかるかも……』
……ボトルメールが異質なのは確かだけど、武器が出るのも普通じゃないの……?
念話しながらダンジョン入口へ来た。 ここも洞窟型のダンジョンだ。
ラウンツさんの掛け声で中へ入る……。




