レイスター:悪魔回避
部屋に戻って着替え、黒のジャケットを羽織る。
「レイスターちゃん! 今日もアタシに付き合わない? ウフッ!」
……来た!! 悪魔の巣窟に連れ込まれる……!!
「ラウンツさんすみません。 今日メイリアが図書館に行くのでちょっと聞きたい事があって」
ラウンツさんは俺の顔をジッと見ると、真面目な顔になって言った。
「……ニーナちゃんの瞳の件ね?」
「はい、メイリアは詳しそうですし、今日図書館に1人で行くならちょうどいいと思って」
「……そうね……わかったわ! アタシ1人で楽しんじゃって悪いけどごめんね☆」
是非これからも1人だけで楽しんでいただきたい!!
頬に人差し指を添えたウィンクは勘弁してくれ……。
「何かあったら相談してねぇ」
「はい!」
宿のオジサンに聞いたおすすめのレストランに着いた。
人界の料理は美味いから楽しみだ。
「このエビチリっての美味いな!」
「もぐもぐ……私はこの点心てやつが好き。 ふわふわのパンみたいな中にお肉とか色々入ってる ……あぁ! 肉汁がこぼれた! これが美味しいのに!!」
小動物みたいに両手で持ってちまちま食べているニーナが言った。
俺が物心ついた時には既に、いつもニーナと一緒にいた記憶しかない。
ドジでちょっとおバカでたまにいじめたくなるけど、可愛い俺の妹だ。
ニーナが本当の兄妹じゃないと聞いた時も、だから何? って思った。
ガキの頃はニーナとアーニャとよく魔王様の所へ遊びに行って、剣を教えてもらった。
魔王様に全然勝てなくて不貞腐れたこともあった。 魔王様は笑ってたけど。 今思えば勝てなくて当然だよな。
一度、魔王様からニーナを守るために強くなれって言われたことがある。
いつも笑ってる魔王様がやけに真面目な顔だったから、強くなってニーナを守ると魔王様に誓った。
俺はお兄ちゃんだからな! 当たり前だ。 とその時は思った。
そして10年前、魔王様が人界から帰って来ない日が続くにつれて、俺達3人はいつか魔王様を探しに行くため密かに特訓し始めた。
今思えばガキらしいゴッコ遊びだったけど、結果的に特別探索隊になれたから無駄じゃなかったと思う。
特別探索隊に選ばれた時はニーナと同じくらい心中喜んだ。 アーニャもだろう。
5年くらい前、ニーナが父さんの本棚の一番上の棚から盛大に本を落とした。
本が好きなニーナは父さんから、本を取る時は父さんの許可を得ること。 って言われてたから、父さんがいない時に書斎に忍び込む際は、何かやらかさないか着いて行ってやってた。
ニーナが落とした本の隣にあった紙束もバラバラ降ってきたので片付けを手伝ってやった。
その時、手に取った本に違和感を感じた。 封筒のようなものが挟まっていた。
好奇心に負けてそれを開くと、やはり父さんへの手紙だった。
中を見てビックリした。
「あの子を守れ、力をつけさせろ」 って書いてあった。 他にはよく分からない簡単な地図みたいなものが書いてあった。
魔王様にニーナを守れって言われてた俺は、ニーナの事だと直感した。
ただの優しい子供のニーナが誰かに狙われてる? 何で?
何となくニーナには見せたくなくて、急いで手紙と本を元に戻し片付けた。
1人で中途半端に抱えるには大きすぎる秘密だったので、ニーナの代わりに父さんに怒られてやった際に、手紙を見てしまったことを言った。
父さんは俺が誰にも喋ってない事、ニーナに見られていない事を確認してから、諦めたようにため息をついて話し始めた。
あれは魔王様から父さんへの手紙らしい。
あの子とはやっぱりニーナの事だった。
父さんが詳細を魔王様に聞いたらしいけど、魔王様は「その時になればわかる、その時が来ない事を願ってるから言いたくない」と仰ったそうだ。
父さんと俺は約束した。
この手紙の件は父さんと俺だけの胸に閉まっておく事。 そしてもし「その時」ってのが来たらニーナを守ろう。 と。
それから父さんの俺への剣の訓練はキツくなったけど、強くなるために頑張って教わった。
俺達3人の秘密の特訓も父さん公認になった。
でも俺は、バッシュ達がニーナを人質にとった時何も出来なかった……「その時」が来るまでに、もっともっと強くならなきゃいけない……。
「美味しかったわね。 この後はみんなどうしましょ?」
ルルさんがお茶を飲みながら言った。
茶器を手に取る些細な仕草ですら優雅だ。 ルルさんには憧れているけど、高嶺の花すぎて、ルルさんとどうにかなりたいとまでは思わないなを
今はパーティの裏ボスって感じだ。 ボスより女王の方が似合うけど。
ああそうだ、今日もルルさんはホストクラブで女王様の様にイケメンをはべらせるのかな?
その様子が鮮明に想像出来て笑ってしまう。
「ルルさんに一生着いていくって決めたからね!! 私は行くよ!!」
「アーニャ、まだルルさんがどこへ行くか言ってないよ……」
ニーナがウンザリした顔で言うとアーニャは顔面蒼白になった。
「……ルルさん!! 図書館で私のHPはゼロだよ!? お願いします!!」
「クスクス……わかったわぁ。 メイリアちゃんは図書館ね?」
「……ん……そのまま錬金術ギルドで……素材の加工と調合したい……そろそろ素材がダメになる……」
「俺がメイリアの護衛で一緒に行きますよ。 女の子1人で夜道は危ない」
俺はキリッとした顔でルルさんに言った。
瞳に発光の魔法をかけて、今回は前より弱くキラキラさせてみた
控えめにさりげなくやるのがコツだ。
裏ボスだけど、何となくルルさんの前ではカッコつけたくなってしまう。
クッ……これが男の性……か……。
「メイリア、どうせ泊まり込むんだろ? 寝る時は俺だけ宿へ戻るよ。 朝迎えに行く」
「そうね、メイリアちゃんそうしてもらいなさいな?」
「……ん……ありがと……」
「俺は仲間の店で情報収集してくる。 この街にもあるか楽しみだ!」
「儂も楽しみじゃのぅ! チラッチラッ」
「わ、忘れてないってば!! 」
「ニーナちゃん……女の子1人じゃカイちゃんの行きたいお店には入れないわよ?」
「えっ!? あ、そっか! ……どどど、どうしよう!?」
カイが尻尾をペチンペチンとテーブルに叩きつけてニーナに無言の重圧をかけてる……。
「ふむ。 ではカイ、俺が酒場へ連れて行ってやろう! ニーナも1人じゃ危ないからこれで決まりだな!!」
「ひぃい!!」
「綺麗なムチムチのお姉ちゃんと酒が飲めるんじゃろな?」
「そうだ、任せろ」
ラウンツさんが行くのはガチムチのおネエさんがいる店だろ!!
ニーナにとっては夜道より危険な所だぞ!!
……ニーナ、カイ、墓なら建ててやるからな……。
レストランを出たら、既にHP全回復してそうなアーニャとルルさん、死んだ魚の目をしているニーナとラウンツさんとカイ、俺とメイリアで別れた。
図書館へ歩きながら言う。
「メイリア、これからマナについて調べるんだよな?」
「……うん……」
「実はメイリアにマナの事について教えて欲しくてさ、後でちょっとだけ話聞いてくれよ」
「……?……わかった……」
図書館に入ったら、メイリアが借りた本を運ぶ係をする。
10冊もあると重い……来てやってよかったな。
書見台が置いてある机に本を置いて座った。
「……先に聞く……」
「おお、ありがとう。 あのさ、トレントの時にマナの色の話してただろ? なんだっけ、分子?が大きいのが赤だっけ?」
「……うん……」
「トレントの眼が黄色く光ったよな? ていうかトレントの瞳が黄色だった」
「……うん……瞳は持ってるから確認済……」
「俺達……えと、人間……は黒と茶色の瞳が多いだろ? あと俺が見た事あるのは緑、青、紫だ。
黄色は見た事ない。 黄色は魔物だけとかって決まってるのかな? 瞳の色がマナの色に関係してたりするのかと思ってさ」
「……瞳の色がその人や魔物の持つマナの色……の可能性ということ……?」
「うん、なんか関係あるのかなって。 例えば俺やメイリアは茶色のマナを持ってるのかな?」
「……黒や茶色のマナは無い……」
「……そっか。 じゃあトレントはたまたま瞳と光が同じ色だったのかな。 魔物だしなぁなんでもありだよな。
ていうか、マナの色なんて普通見えないよな? マナのある空気は透明だもんな。 どうやってマナの色を調べたんだ?」
「……マナは光の色で調べられた…………空気の色……瞳の色……ちょっと待って……調べる……レイスターすごい……」
「ん? ……おう……何が凄かったのかわかんねぇけどよろしく」




