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ローブとアーニャ

連続投稿です

魔道ローブが出来上がったと、ルルさんから念話があったのが出発日の前日だった。


「お兄ちゃん、ルルさんから念話があったからルルさんのお家に行くけどお兄ちゃんも来る?」


「!! ……いや、俺は用がないからいいよ」


「お兄ちゃんのマントはこないだ作り置きの買ったもんね。でもサイズあってる? 手直しとか必要ない?」


いつも私が失敗してもフォローしてくれるお兄ちゃんのために、一肌脱いであげようフフフ……。


私が子供の頃おもらしして夜中に起きた時、どうしようどうしようとシクシク泣いてたら、おもらしに気付いたお兄ちゃんがコッソリ自分のシーツと変えてくれた。


お父さんの本を読みたくて、本棚から取ろうとした本を落としてしまった拍子に色々な紙もバサバサと落ちてきて呆然としてた時も、お兄ちゃんが身代わりになってお父さんに怒られた。



「ゴホン……そうだなそういえばマントが少し長いな。

ルルさんに直してもらおうかな」


「うん! じゃぁ行こう!」





「「ルルさんおはようございます!」」


今日もお兄ちゃんはキリッとした顔で、発光の魔法を歯にかけていた。

うん、もう二回目だから確信した。


「おはよう、レイスター、ニーナちゃん。

早速ローブを着てみて?」


ルルさんが部屋の奥から取り出した白いローブがテーブルの上に広げられる。


「うわぁ……可愛い!!

フリフリでレースでお花で刺繍です!!」


「ニーナは興奮すると語彙力が落ちるよな……」


お兄ちゃんに呆れられた!!




ルルさんが渾身の作と言ったローブは、真っ白なローブで、袖口や裾にレースのフリフリが着いている。

魔術式の刺繍は銀の糸で、術式のダミーの為に花柄に見えるよう工夫されていた。


「銀の刺繍はニーナちゃんの髪に合わせたのよ?

あんまり奇抜な色だと人界で目立つから、布地は無難な白にしたわ。

銀色とも合うし、清楚な感じでしょう?」


「はいっ! とっても気に入りました!」


ルルさんに促されて羽織ってみる。


「へぇ……流石ルルさん、ニーナにピッタリだ、似合ってる」


「ふへへ……」


思わずニヤけてしまいとろけそうな顔を、ルルさんか両手でぐにぐにと揉んできた。


「リュリュしゃん……」


「うふふ、喜んでもらえて嬉しいわぁ。

それにしてもニーナちゃんのほっぺってこねくり回したくなるわね」


「確かに、つねりたくなる」


「ふりゃりともひゃめてくらひゃいぃ……」


この場を逃げるためお兄ちゃんの茶色のマントを掴んで合図、もとい兄を差し出す。


「ああそうだ。ルルさん、マントが少し剣の動きの邪魔をするんです。

今日直して頂くことはできますか?」


「あらーそう? じゃぁ外でちょっと剣を振るってみてちょうだい」


ルルさん宅の庭に出て、手直しが始まった。


マントを着たまま仮止めしていくので、お兄ちゃんとルルさんとの距離が近い(物理的にだけど)。


良かったねお兄ちゃん。

今日のミッションコンプリート!



マントはお昼にはお直しが終わった。

お兄ちゃんは帰り道、腕をさすってはニヤニヤしたりキリッとなったりしていた。


なんだろう、「クッ……!封印されし腕が疼く……」とかっていう〈成人前病 〉かな?


成人前病とは、成人を迎える前の14歳頃の子が、就職や大人になることへの不安から現実逃避をして闇の世界に呑まれるアレだ。


冬に金属製のドアノブを触るとたまにパチッっとなるけど、その時に「チッ……結界か……」って言うのが上級者らしい。


私も14歳だけどよく分からない。

そのうち闇の何かが蠢くような事があるのかな。

色んな意味で怖いな。




そんな事を考えながら歩いていたら、アーニャが水色のサイドポニーテールと手を振りながらやってきた。


アーニャは幼なじみで、お兄ちゃんと同い歳だ。

お父さん同士が第一分隊と第二分隊の隊長なので、家族ぐるみで仲がいい。


「レイスター! ニーナ! 魔王様特別探索隊になったんだよね!?」


「おう、ダスティンおじさんから聞いたのか?」


「それもあるけど、私も昨日特別探索隊に任命されたんだよ!!」


「えっ! アーニャも!? わぁい嬉しい!!」


「ふふふ……私の左目が疼くよ……」


アーニャは完全に成人前病だ。


魔王様の事を尊敬してるから、私と2人きりの時は魔王様の話ばかりしている。

左目が疼くのは魔王様をモデルにしているらしい。

失礼な、魔王様は確かに髪で左目が隠れてるけど、きっとオシャレなのだアシンメトリーってやつだ。


「アーニャも魔王様が好きだからな、抜擢されてよかったな!」


「レイスターだって魔王様が好きでしょ!

とにかく、幼なじみ三人揃うなんてチームワークはバッチリだね!」


確かに小さい頃から一緒に戦いの練習をしてきた私達なら、経験値が無くてもそれを補えるだけのチームワークはあるかもしれない。


お兄ちゃんは剣と魔法、アーニャは体術と魔法、私は魔法しか使えないけど誰にも使えない魔法が使える。

お互い苦手な相手と戦う練習は嫌でもしてきた。


それにいつまで続くか分からない旅だ。

仲良しの人がいた方がいいに決まってる。


あの怖い人達も色々考えてくれたのかな。

「怖い人」から、「顔が怖いけどちょっといいおじさん達」にランクアップしてあげよう。




「お兄ちゃんとアーニャが一緒で嬉しい!

そういえばルルさんも一緒なんだよ!」


「え! そうなんだ! じゃぁ旅先で出会うイケメンは全部ルルさんに取られちゃうね!ギギギ……」


アーニャはイケメン好きだ。

魔王様もイケメンだから、最強で尊敬する魔王様へのイケメンフィルターが留まるところを知らない。

成人前病でイケメン好きの幼なじみ……残念だけど明るくて魔王様を崇拝してるいい子、うん。


「アーニャ、人族のイケメンがいても恋愛出来ないと思うよ?」


「そういえばそうだった。ならいっか♪」


「アーニャも目隠しのマント用意した?」


「うん! ルルさんのとこで買ってきたよ!」


「じゃぁ準備はオッケーだね!」


「俺ら以外にあと何人来るのかな?」


「明日のお楽しみだね」


「レイスター、ニーナ、じゃぁ私は家で残りの準備するからまたね!」


「おう、また明日、魔王城で」


「アーニャまたね!」




お兄ちゃんと自宅に帰ってきた。


明日は魔王城から、人界の基地に設置してある転移陣へ移動する

ちなみに転移陣は魔族魔法だ。

魔族魔法だから人族は使用できないし、魔族程の魔力が無ければ発動出来ないので、人族が悪用して魔界に来ることは出来ない。


人界で何があるか分からない。

今日は家族水入らずで過ごすのだ。




夕食時


「レイスター、ニーナ、ついに明日だな」


「二人とも無理はしないでね? 毎日念話するのよ?」


「うん、約束するね」


「父さん、ニーナは俺が守るよ」


「……そうだな、レイスター、お前が守るんだ」


そんな話をして、早めにベッドでグッスリ寝た。





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