ボトルメール
ラウンツさんが手に持っていたのは、紙が入っている透明の瓶だった。蓋には術式が描かれている。
みんなの元へ戻ったら、ラウンツさんがボトルメールをルルさんに渡す。
「こんなのがあったわぁ。 蓋に魔術式があるからルルさん見てくれなぁい?」
「…………魔力を込めると開くようだけど、かなりの魔量を要求されるわね。 それこそ魔族にしか開けられないような」
ルルさんが蓋に魔力を込める。
……長い……。
しばらくしたらやっと開いた。
「ちょ、ちょっと……座らせて……魔力が殆ど空だわ」
「ルルさん大丈夫!? 今敷物出すね!」
「……魔量回復ポーション……」
ルルさんがメイリアさんから受け取ったポーションを飲み干す。
ルルさんの顔が少し歪んだ。
あ、やっぱりマズいんだ……。
「ルルさんの魔力が空になるくらい魔力を込めなきゃ開かないなんて、人族が見つけても開けられなかったな」
「レイスター、って事は、魔族宛の手紙かもよ! イケメンから私へのラブレターとかさ!」
アーニャ宛ではないと思うよ!
「……魔族宛……有り得る……はやく読みたい……」
ラウンツさんが中の紙を取り出して広げる。
[ 隷属の首輪の製作方法を探して全て焼却しろ ]
「なによぉこれ!」
「隷属の首輪って人族が奴隷に付けている物かしら? 人族の奴隷を無くすために魔族に依頼する手紙……? 人族の奴隷は人族よ?」
「なんで俺たち魔族が人族を助けなきゃいけないんだ?」
「……意味がわからないわ」
なんでこんなメッセージがダンジョンにあるんだろう……。
「とりあえず保留にしましょ! 今日中に帰らなきゃ!」
「2人が湖の中にいる間に隠し部屋の探索をしといたからもう帰れるわ。 残念ながら何も無かったけど」
「……樹液……」
「そうだ! トレントの回収!! 行きましょう!」
トレントまで戻って来たら樹液は採れてた。
メイリアさんは樹液を、私はトレントを丸ごと亜空間に入れる。
「入ったよ!! 落ちてる枝葉も入れるね!」
空間魔法で枝葉の素材だけ引き寄せて入れた。
「ローシャちゃんに念話で踏破報告しといたわ! じゃぁまた全力疾走よ!!」
ぎゃぴぃいい!!
ダンジョンの入口が見えた!!
メイリアさんが瀕死だ。 ポーションを飲んでた。
あのドロドロのまずいやつだ……。
外に出るともう夜中だった。
「ニーナちゃん、今から町に帰るのは体力的に無理そうね……ごめんねぇ、ここで野営だわぁ」
「気にしないでくださいラウンツさん」
いつも通り野営セットを組み立てて、 もう夜中なので調理不要の携帯食料で晩ご飯を済ませる。
湯浴みして寝袋に入ったけど、トレントの黄色い眼とボトルメールの事が気になって中々眠れなかった……。
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朝一番でカイに乗ってダースグランの町へと急ぐ。
ダースグランへ挑戦する冒険者は多くないから、定期運行の馬車は無い。
ダンジョンに入る前に予約しておかない限りは帰りの馬車は無いという事だそうだ。
瞳が光るのはどんな条件なんだろう……少なくとも人族で光る人はいない。 魔量の多さ……?
ボトルメールは誰が書いて、何故宝箱に入っていたんだろう……。
そんな事を考えてたら町の手前まで来たので、カイから降りて町へと入る。
「まずは冒険者ギルドでいいか?」
「ラウンツちゃんにお任せするわ」
「あ! おかえりなさい。 グランドダースバードは倒せましたか?」
ギルド受付のお姉さんがニコニコ迎えてくれた。
バージョン3の対応でありますように……。
ラウンツさんが小声で話すとお姉さんはプルプル震えて無言になった。
「お、お待ち下さい……」
バージョン2だ……。
しばらくしたらお姉さんが戻って来て、2階のギルドマスターの部屋へどうぞと言われた。
未来予知スキルが開花したといっても過言じゃない。
「失礼する」
「……座れ」
ひぃ! バリトンボイスが怖いよぅ!
「…………たった2日程度で踏破しただと?」
「そうだ」
「ギルドカードの記録を見たぞ。 ここ20年で発見された新しいダンジョンばかりに行っているな。 しかも全て未到達ダンジョン踏破だ。 お前ら何者だ?」
ひぃぃいいい!! 未だかつて無いくらい疑われてる……!!
「私達は世界樹を探して旅をしているのですわ」
「未到達ダンジョンの中にあるとでも?」
「そう考えています」
「2日間でのダースグラン踏破が事実ならば、なぜこれ程の実力がありながら急に沸いてきた? どこで訓練をした?」
「……私とこの子ニーナは生まれつき亜空間が大きいですから……辺境で商人の荷運びや旅芸人をして稼いでいましたわ。 旅の途中で魔物に襲われるのは日常茶飯事、自然と戦いを覚えましたの。 ニーナは精霊使いですわ」
「他の4人は? ガキばかりだが」
「事情がある……としか言えませんわ。 この子達には、あまり詮索して頂きたくない過去がありますの」
「……フン。そういう事にしてやろう」
そのあとダンジョン内の話を聞かれて、買取所へ案内された。 早く帰りたい……。
買取所でスグリーヴァの毛皮を出す。
グランドダースバードで残っている素材は全部メイリアさんの物だ。
「上位種のトレントやらは?」
「ここだと狭くて出せないです……」
「……港の倉庫へ行くぞ」
港にあるギルドの倉庫は広かった。 亜空間からトレントを出す。
枝葉はメイリアさんに渡すから出さない。
「本当に見た事のないトレントだな……わかった、調査が終わったらダンジョン踏破報酬2000万を振り込もう。
ギルド会議でこのトレントの名前を付けておく、だから素材の一部はギルドで買い取らせてくれ」
メイリアさんがトレントの眼をくり抜いて亜空間にしまう。 私は少しだけ枝葉を出してギルドマスターに渡した。
幹はメイリアさんもルルさんも加工が大変だから使わないとの事だったので、アレイル都市で売る事にした。
幹の皮を少し剥いで、これもギルドマスターに渡し、幹を亜空間に片付けた。
「未知の素材だからな、スグリーヴァと合わせて200万でどうだ」
欲しい素材は確保してあるのでそれで即決する。
ラウンツさんも早く終わらせたい感じだ。
「宝は無かったのか?」
「……この子の杖だ」
ぎゃぴ!? ボトルメールの事は隠すのかな?
余計胃がキリキリしてきたよぅ……。
「……フン……そうか」
「……こちらからも聞きたいことがある。 エルフを見たという人間はアレイル国の人間か?」
「知らん。 アレイル都市のギルドで聞くんだな」
「……わかった」
ギルドマスターとは倉庫で別れた。
早く宿でゆっくりしたいな……。
疑われるのって精神的にすごく辛い……。




