夜遊び
トントン
アーニャと男子部屋をノックする。
「ニーナどうした? ……って、うぇ!?」
「えへへ、お出かけするからルルさんにしてもらったんだ♪」
「アーニャも……うん、可愛いよ」
お兄ちゃんがらはにかみながら私とアーニャを褒めてくれた。
「それでね、アーニャのお出かけ用の服を買いに行くんだけどお兄ちゃんたちも来る?」
「あらぁ二人ともっ! 可愛いじゃなぁい!」
「あ、ラウンツさんもお洋服買いに行きますか?」
「そうねぇ、ちょうど夜レイスターちゃんとお出かけしようと思ってたから行くわぁ」
「じゃぁルルさん呼んでくるね!」
5人で再び商業エリアに来た。
ルルさんがある服飾店に入るので着いて行く。
「いらっしゃいませレディ、本日はどのようなものをお求めですか?」
オールバックにキチッとしたスーツを来たおじさん店員がルルさんに声をかけた。 店長さんっぽい。
「この子と、男性陣の服が欲しいわ」
店員さんはアーニャとラウンツさん、お兄ちゃんを見てからルルさんと私を見る。
「なるほど……かしこまりました。こちらへどうぞ」
店内の真ん中にあるソファーを勧められる。
パンッパンッ!!
「ぎゃぴ!」
店長さんが手を叩くと、若い女性と男性の店員さんがやって来た。
アーニャが女性の店員さんに促されてルルさんと洋服を選びに行った。
ラウンツさんとお兄ちゃんには男性の店員さんが付いた。
私はソファーでみんなの買い物を眺めていた。
ここにある服はちょっとお高めの普段着からフォーマルな衣装まである。
でもルルさんが作ってくれた私のローブより心くすぐられるものは無かった。
男性陣の衣装はすぐ決まった。
黒のズボンにシャツ、少し光沢のある黒のジャケットだ。
普段着にしてはちょっとオシャレだな位のやつだ。
うん、いいと思う。
アーニャは着せ替え人形になっていて終わらない。
「ニーナぁ! 助けて! どれがいいか選んでー!」
「アーニャは水色の髪だから、今来てる青のドレスワンピがいいと思うよ?」
膝上丈のワンピースだけど、パニエが入っていてスカート部分のボリュームがあって可愛らしい。
袖はデコルテを横切るような形になっていて、肩が出ていてちょっと大人っぽい。
ドレスとワンピースの間って感じだ。
「そうね、そろそろお出かけしたいしこれでいいかしら」
「かしこまりました」
外はもう夕焼けだ。 各自買った服を着たままお会計をする。 いままで着てた装備は亜空間だ。
「またお越しくださいませ」
店を出た。
「この後はどうするんですか?」
「私が行きたいお店はまだ空いてないから、みんなで豪華なレストランへ行かない? どう?ラウンツ」
「うむ、我らもまだ時間があるのでな、そうしよう」
ルルさんの案内でレストランへ来た。 メニューはルルさんにおまかせだ。
「じゃぁせっかくだから、ダンジョン踏破のお祝いをしましょう!」
「賛成!」
「じゃぁ乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
ここは人族がいるので、魔王様に乾杯! って言えなかった。
でも心の中で言う。
魔王様、からなず見つけます。その第一歩に踏み出したことに乾杯……。
料理はとろけるくらい美味しかった……。
人族と仲良くなって交流が復活したら魔界でもこんな料理が食べれるのかな……。
レストランを出た。
「お兄ちゃん達はどこに行くの?」
「ラウンツさんと酒場にでも行こうかって話になってるよ、ニーナたちも来る?」
「ごめんねぇレイスター、私達は男子禁制の酒場に行くのよ♪」
「男子禁制? なんじゃそりゃ」
「ほぇ? そうなんですか? カイはいいのかな?」
「カイちゃんは大丈夫よ、じゃぁここで男性陣とはお別れね、楽しんでね!」
「うむ、ではまた明日」
「お兄ちゃん、ラウンツさんまた明日!」
「男子禁制ってルルさん!! イケメンはどこへ行ったんですかぁぁあああ!」
「いいからいいから、アーニャちゃんの期待は裏切らないわ」
そう言いながらルルさんは酒場通りに歩き出す。
とあるお城っぽい彫刻の建物の前でルルさんが止まった。 怪しい……。
「じゃぁニーナちゃん、今だけ15歳ね!」
「はひっ!」
「カイちゃんはごめんね、お喋り禁止よ」
「なんじゃ、つまらんのぅ」
「お酒は飲んでいいわよ」
「ほうかほうか、じゃぁ酒でも舐めておるわい」
なんだろう……怖いよぅ……。
ルルさんが彫刻のなされた黒い扉を開ける……。
「お帰りなさいませプリンセス!!」
「「「「「お帰りなさいませプリンセス!!」」」」」
「ぎゃぴぃっ!!」
「キャーーーーーーー!!!!!」
私の悲鳴とは反対に、アーニャの黄色い悲鳴がこだまする。
そこには通路の両端に、イケメンのお兄さん達がズラリと並んでいた。
その中からひときわイケメンなお兄さんがルルさんへ挨拶する。
「プリンセス、当店は初めてでいらっしゃいますか?」
「いえ、私は違うわ。アスティはまだいるかしら?」
「代表ですね! 呼んできますので先にお席へどうぞ」
シャンデリアから淡い光が漏れているが少し薄暗い店内を移動して席に座る。
ルルさん、私、アーニャの順だ。
店内を見渡すと、背の低いワイングラスみたいなのがピラミッド状に重ね建てられていた。
「お酒はどうされます?」
「この子、ニーナはお酒が弱いからピーチの果実水を、後はそうね……先ずはシャンパンでお祝いしましょう?
とりあえずモエピンをお願い」
「モエピン頂きましたぁー!!」
「「「「「ありがとうございます!!」」」」」
「ひぃいっっ!! 何この空間!?」
「ルルさん! イケメンがいっぱい!! 一生ついて行きますっ!!」
「うふふ……ここはホストクラブよ。 イケメンとお酒を飲むところ♪」
人界にこんな世界があったなんて!
アーニャは喜んでるけど私は怖いよぅ!
って思ってたらお兄さん達がゾロゾロやって来て、ルルさんとアーニャの隣に1人ずつ、あと私の向かい側に1人来た。
「ルルさんお久しぶりです、相変わらずお美しい……」
「久しぶりね、アスティ、貴方も変わらないわよ」
「フッ、そういう台詞は僕達に言わせてくださいね?」
フッって言った! フッって!
現実に言う人がいると思わなかった!!
騎士物語でしか読んだことないよ!
アスティさんは金髪でちょっとだけ長めの髪の、ルルさんと同じく年齢不詳なイケメンだ。
「僕はルイスって言うよ。君の名前を聞かせてくれる?」
アーニャの隣のイケメンがアーニャに話しかけている。
この人は赤っぽいブロンドだ。髪型はアスティさんに似ている。
「ア、アーニャです……」
アーニャがモジモジしてる!!
「アーニャちゃん、可愛いね、ドレスも髪の色にピッタリ合っている」
「そうなんです! ニーナ、あ、この子が選んでくれて!」
私に話をふらないでぇぇええ!
「ニーナちゃんって言うんだね、俺はシャール、よろしくね?」
黒髪がちょっと左目にかかってる切れ長の目のお兄さんが話しかけてきた!
「ひゃ!ひゃい!」
あああ! 反射的に返事しちゃった! よろしくしたくないですぅ!!
「二人とも、ホスト達は入れ替わりで色んな子が来るから、気に入った子がいたら指名してあげなさい」
「指名するとどうなるんですか?」
「担当になるのよ、つまり専属ね。指名は変えられないから慎重にね♪ 永久指名制度よ」
何その永久奴隷制度みたいなやつ!!
怖いよぅ……お金が払えなくなったら鉱山とか魔物の巣窟とかで永遠に働かされるのかなぁ……ブルブル。
その後、ルルさんはポンポンとシャンパンを入れて、その度にシャンパンコールって言うお祭りの掛け声みたいなのがされた。
その度にビクゥッ!! ってなった。
拡声魔法をかけてるのかな?
アーニャは代わる代わるイケメンホストさんが来てきゃぁきゃぁ言ってた。
私は色んな人と喋るのなんて無理なので、シャールさんが席を離れようとした時に苦渋の決断で奴隷契約を結んだ。
お金なら沢山あるから今日の酒場代位大丈夫だろう……やばい時はルルさんがストップかけてくれるだろうし。
「ニーナちゃん、俺を選んでくれて嬉しいよ! どんな所がよかったのかな? 参考に聞かせてくれる?」
「えっ!? えっと!!奴隷契約を結ぶなら初めての人がいいと思って!!」
「ニーナちゃん……Mで、初めてがまだなの? 俺そういうの大好きだよ」
シャールさんがニヤリと笑った。
Mって何!? よくわからないけど愛想笑いをしておく。
気付いたらカイがシャンパンをちょびちょび飲んでて、テーブルの上でおつまみに擬態していた。
唐揚げと一緒に食べられるぞ。
ルルさんはいつの間にか3人のホストさんをはべらせていた。
アーニャは目移りしすぎて指名を決められなかった。
最初に席に来たルイスさんがまた来てて話してた。
私はシャールさんの質問に答えるだけだったけど、シャールさんが何となく魔王様に似ている事に段々気づいてからは、少し楽しくおしゃべり出来た。
でも慣れない場所にちょっと疲れてきて、そろそろ終わらないかなって思ってたら、ルルさんがお会計をお願いしていた。
アスティさんがそっとお会計の紙を差し出す。
「30万ルインね、3人にしては安かったわねぇ」
30万ルイン!!??
ぼったくり!!??
でもルルさんが安いって!!
どういうことぉぉおおおおお!!
落ち着くために果実水を一気飲みした。
はふぇ? ぐるぐるしゅるぅ……。
「あっ! ニーナ私のピーチ割シャンパン飲んじゃった!!」
「あら大変! すぐに帰るわぁ」
そんな声を遠く聞きながら目を閉じた。
ホスト達の名前の元になっているお酒がわかる方は感想ください♪
モエピンとピーチの果実水は、本当はモエロゼとネクターと書きたかったのですが、商品名そのままなので少しボカしました




