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魔王様行方不明事件

数ある作品の中からお選び頂きありがとうございます!

『……ザザッ……人界に会いに来い……』



「!?」


突如届いた魔王様のお声。


『魔王様!! どこにいらっしゃるのですか!?』


「ニーナ!? どうしたの!?」


ニーナの驚きの様子に、育ての母マリリアも驚く。


「魔王様から念話が!!」


「なに!? 魔王様が見つかったのか!?」


朝食を囲んでいた育ての父ガルスターも驚く。


『魔王様! 魔王様!』

「…………ダメ……もう念話が届かない」



魔王様が人界から帰ってこなくなってから10年が過ぎており、その間魔界は、魔王不在で混乱ののち、やっと落ち着いてきたところだった。


「気になることがある、すぐに1度戻ってくるよ」


そう言ったきり戻って来なかった魔王様の身に、何かあったに違いない。

いや、それ以前から、すぐに戻ると言って戻ってこなかった魔王様の事を、魔界の皆は常に気をかけていた。

魔王様は昔から度々人界へ行っていたけど、念話が繋がらなかった事は無かった。


魔王様が10年前人界に行ってからは最初で最後の念話だった。


「お父さんどうしよう! 魔王様が人界に会いに来いって!! 魔王様に何があったの!? 魔王様はやっぱり生きてた! すぐに行かなくちゃ!!」


そう言って勢いよく立ち上がったニーナは、木製の器に入ったスープに手をひっかけながら立ち上がったため、盛大に服を汚しながらこぼれたスープに足を滑らせ、未発達で肉付きの薄い尻を椅子の角にぶつけて転び、床に落ちた木製のフォークに軽くこめかみをえぐられる、という見事なピタゴラスイッチをキメた。


「ぎゃぴぃ!!

血! 血がぁぁああ!! ……出てないぃぃ……」


「落ち着けニーナ! 近衛隊隊長のリオル様にまずは報告しよう」


「その前に着替えね……」


「ニーナってばいつもこうだよな……」


兄のレイスターも呆れる。


恥ずかしさで真っ赤になったニーナだが、そのおかげで少し冷静になれた。


「お父さんがリオル様に念話して謁見してこよう」


「私も行きたい!! 魔王様が私に念話したってことは、私に何か関係があると思うの!」


「ニーナはまだ14歳だから謁見できないんじゃないかしら」


「ぎゃぴ」


「ニーナの言うことも一理あるな……ニーナも同席出来るか念話で聞いてみよう」


「お父さん大好き!」


「取り急ぎ念話するから着替えて朝食を食べなさい」


「はひ……」



魔王様……捨て子だった私を拾ってくれて、あたたかい家族を見つけてくれた私の最も敬愛する恩人。


漆黒の髪で左目が隠れていて、目付きが鋭い所がちょっと怖いけど、笑うととっても優しいお顔の魔王様。

物心着いた時には、初恋とはこの事だと思った。


でも魔王様は魔族を統べる最強で崇高なお方。

初恋に気づいた瞬間には失恋していた。


それでも、命の恩人である魔王様に、自分の人生を捧げていつか役に立つことが生きる目標になった。


状況的に、魔王様はきっとトラブルに巻き込まれて、私にしか念話を送っていないであろう。


ならば私が魔王様をお助けするのだ!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「魔王軍第一分隊隊長ガルスターと、娘のニーナ、ただいま参上致しました」


魔王様が失踪するまでの子供の頃以来、初めての魔王城

勢いで着いてきちゃったけどなんかお偉いさんがいっぱいいて怖いよう……。


ニーナはプルプルしながら跪いていた。

頭を下げすぎておでこと床がチュッチュしてしまっている。


「ニーナは魔王様が拾った子供か……」


藍色の髪を、サイドだけ残して三つ編みを左肩にかけている30代くらいの男性が言った。

この人がリオル様かな?


「面をあげよ。 話は念話で聞いた。 ニーナ、お主に念話が届いた心当たりはあるか?」


「は、はひぃっ! わかりません!」


「ふむ……何故私ではなくニーナに念話を……」


「ニーナに人界に来いと言うお話でしたな、ニーナの力が必要なのかもしれませぬ。

魔王様探索隊が既に人界におりますが、ニーナに護衛を付けて新たに人界に向かわせるのはいかがでしょう」


白髪混じりのおじさんが言った。

ローブを着てて長めの髭をたくわえており、the宰相って感じだぁ。


ってそんなことぼんやり考えてる場合じゃない!

私が人界に!?

魔王様を探しに行ける!?


「行きますっ!!」


「ニーナ! ダメだ! せめて来年成人を迎えてからだ!」


「ガルスター、確かにニーナは未成年だが、魔族では稀なユニークスキルがある。せっかくの魔王様の手がかりだ、精鋭を付けるので行かせてやれ」


「……はっ! リオル様のご命令とあらば」


「ご、ご命令ううううけたまり、うけまたりっ!……承りましたっ!」


あぅっ! 怖い人達にプックスされた……。


かっこよく魔王様を助けに行きたいのに!


死にかけの蝉みたいに肩を震わせて口元を一生懸命引き攣らせている重鎮達は、ちょっとだけ、ちょっとだけ先行き不安になったのであった。




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