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第69話 激戦!

 円形競技場は突然のスコールに見舞われた。と同時に、アスラ族の襲撃を受け、興奮が一挙に恐怖に変わってしまった。観客たちは、我先に会場の狭い出口へ殺到していた。

 オレ達は乾ききっていた足元が徐々に緩んでいくのを感じながら、すり鉢のような円形競技場の底で、敵と対峙する。髪も鎧も手にする剣も容赦なく豪雨に晒される。


「クリシュナ! 貴様はさっさとカンサ王を仕留めて来い。ここは私たちが受け持とう。王を殺せば、アスラも退く」

「承知した。アルジュナ、瞬弥、樹、頼んだぞ」

「任せろ!」


 クリシュナがカンサ王のところに向かったのを合図に、それをさせんとばかりにアスラ族が動く。


「おまえ達の相手はオレたちなんだよ!」


 オレはアルジュナに渡された剣の切っ先をもって、奴らの前に立ちはだかる。ドヴァラカ国の戦士が持つ剣だ。今こそ修行の成果を披露する時だよ! 背にはもちろん弓を背負ってる。こちらも必ず使う時がくるはずだ。親衛隊の兵士を加えてもこちらはアスラ族の数の半数にも満たない。それでもオレは負ける気がしなかった。


 いつの間に戻っていたのか鷹のカワリが雷雨の中を矢のように飛び回っている。ヤツもアスラの目を狙って攻撃の一端を担っている。

 負けちゃいられない。オレも瞬弥もアスラ族と刃突合せ戦った。アスラ族は手練れの戦士ばかりだけれど、自分でも驚くほど落ち着いて捌けた。剣で槍を払って、足払いをかけながら、後ろから来る奴の剣を受け、返す刃で薙ぎ倒した。


 アルジュナは一人で十人分くらいの破壊力で敵を圧倒している。ホントにあいつは向かう所敵なしだな。オレはふと観客席からの視線を感じ、上を見上げる。


 ――――あれ……。


 そこには例のレジナ妃の兄ちゃん、オジナが腕を組んで微動だにせず雨に打たれている。そしてよく見ると、その隣にいるのはレジナ妃本人だ。あの屋敷で見た時とは打って変わって、髪をポニテみたいに結い、戦闘服らしき身軽な服を纏っている。そして腰には剣を帯同していた。


「樹! 行ったぞ! 呆けるな!」


 瞬弥の声にオレは自分の目の前に迫る刃に気が付く。


「わ!」


 オレは咄嗟に体を低くして躱すと、腕立て伏せの要領で地面に腕をつけ、後ろに足を飛ばして奴をひっくり返した。たまらず地面に尻餅をついたそいつをたまたまそこにいたバララーマが足蹴にする。あーあ、ぬかるんでいる地面にめり込んじゃったよ。


 ――――だけど、あいつら何で戦わないんだ? 高みの見物でもないだろうに。


 いよいよ雷雨が激しくなり、稲光が轟く雷鳴とともに地面を突き刺してきた。アルジュナの動きが悪くなるのを感じる。やはりあいつは雷が苦手か。前言撤回、完全無欠ではなかったようだ。


 クリシュナの方を見ると、王族達を相手に奮戦している。奴らも王の死は自分達の全てを失う事に直結する。そりゃ必死になるよな。彼らは魔族の血を引いてるわけだから、クリシュナも厄介だろう。何人かの親衛隊も行ったはずだけど、すでに戦闘不能状態だ。

 ヤバイと思ったのか、業を煮やした感のバララーマが応戦に向かった。そうだな。そっちは兄弟で決着を着けたほうがいい。


「ということで、おまえらの相手はやっぱりオレ達だから!」


 バララーマを追おうとしたアスラ族の足を引っかけ、剣を振り落とす。次から次へと沸いて出るアスラ族も数を減らしてきたようだ。瞬弥も肩で息をしていはいるが、足元にはくたばったアスラ族が山になって雨に打たれている。


 バララーマが加わったことで、カンサ王が年貢を納めるのも時間の問題。なんて、そう安心し掛けた時だった。


「おまえは許さない! よくもわらわの大切なものを奪ったな!」


 高みの見物をしてたレジナ妃が半月のように反った片刃の剣を振りかざし、オレの頭上に跳んでいた。

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