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第52話 後宮探索!

 武芸大会前日、オレと弟達、それに鷹のカワリは、一足先にマトゥラー国に入った。双子が操るドローンで後宮内の情報を得るためだ。

 いくら忍び込みに成功しても、後宮はマトゥラー宮殿の半分を占める広さだ。敷地面積なんか一つの街くらいになってしまう。


 そんな広いところで右往左往しても仕方ない(多分ウロウロできないだろうし)。なので、ドローンを飛ばし、粗方の地図と怪しい場所の目星をつけておくのだ。

 ドローンの映像や音声の電波が届くのは限りがある。宮殿の近くに宿を取り、三人で画面を食い入るように見る。


 双子はノートPCを持って来ていた。充電はソーラーなので、雨季とは言え、強烈な太陽が数時間でも照るこの地であれば問題ない。ドローンも同様。


「これ、バレないかな。どう見ても怪しい飛行物体」

「サイズはこれが精一杯なんだよね。これ以上小さくすると、今度は飛行時間が短くなってしまう。誰かが気が付いて叩き落されたらおしまいだけど、大丈夫。僕の操縦を信じて」


 これは、航。ホントにおまえ達は無敵だよ。『時渡りの粉』を生成しながら、二人は粛々と作戦を立て、準備をしていた。ただただトレーニングしていたオレは恥ずかしい……。


 宿の窓からドローンが飛び立っていく。それをコントロール機で航が見事に操っていった。まずは上空の高い所から宮殿を見下ろす。しかし、一望にそれを見渡すには、まだまだ高度をあげないと足りないだろう。


 この時代、物理的に見えるもの以外には遮るものはない。難なく宮殿の奥へとドローンは空を縫っていく。宮殿の中庭のようなところに広場が見える。多分、これが武芸大会の会場なんだろう。明日の準備か、大勢の人々が砂ぼこりを捲き上げながら忙しそうに立ち働いている。


「兄さん、見て、この塀の向こうが多分後宮だよ」


 ドローンはオレの思考を無視していくつもの屋根を越えていく。見ると、大きな門を携えた分厚い塀が見えてきた。それはどっしりと構えた宮殿そのものと、その後ろにひっそりと、だが見事な真っ赤な屋根に彩られた後宮を別世界のように別け隔てていた。

 後宮の建屋は西と東に分かれていて、それぞれ第一正妃と第二正妃が中央に館を持ち、それを囲むようにそれ以下の側室たちが住む屋敷がある。部屋数は優に百を超えると聞いている。


「趣味の悪い宮殿だなあ」


 十四歳で、この装飾が好きとか言われたら、それはそれで嫌だ。高くて厚い壁を見下ろし、それよりも背の高いヤシの樹々の生垣と幅5メートルくらいの運河を乗り越えると、確かに趣味の悪い装飾が施された館が見えてきた。

 朱い屋根瓦にそれよりは少し薄い色の壁、夜になると妖しく灯りを灯すであろう、ランタンが軒に連なっている。


 この地方では、暑さのために壁よりも窓の方が面積を取っているのだが、ここは中が見えないようにしているのか大きな窓がない。そのかわり、蛇腹のようになった薄い板が壁を這っていて、そこの隙間から風と光を入れているようだ。


「二階建てくらいかな? 本殿とはだいぶ違うな」


 本殿、王族や家来たちがいる宮殿は瞬弥の住むタワマンくらいの大きさ、高さがあったが、後宮の住居は二階建てくらいだ。そうは言っても高さ的には一階分がオレ達の感覚では二階分くらいの高さはある。


 アルジュナ達から聞かされていた通り、後宮は東と西の二棟に分かれていた。間にはご丁寧に川、多分人口の、が流れていて、それを渡る橋は上空から見て三つしかなかった。


「まずは上空から見て、全体像のマップを作るね」


 翔がそう言いながら、PCのキーボードを叩きだした。叩くっていうか、滑らす、かな。

 それに呼応するように航がドローンの高度を上げる。人の姿はまばらだが、誰もおかしな物体が空を飛んでいることに気付いていないようだ。


 東と西は見事なくらい相対していて、まるで鏡図形のようだ。双方の真ん中に多分正妃がいるであろう主殿があり、その周りを囲むようにロ型に建物が作られ、それが二重になっていた。主殿に近いほど、位の高い妃たちが住んでいると言う。


 ところで、そのロ型の形成された屋敷群ではなく、独立した長屋のような建物もある。これは、王達が居住する宮殿と隔てる壁に最も近いところに位置し、後宮を守る最後の壁のように見える。ここには妃の身の回りの世話や、後に妃へと昇格する予定の女官たちが住んでいる。

 そこでは雑居房のように一室に雑魚寝させられるらしい。弟達は明日、そこに入る。すぐにも助け出してやらないと、もしかして女官たちの餌食になったら大変だ。


「じゃあそろそろ、少し低くしていこう。人の話も聞けるといいね」


 航がコントローラを操ると、視界は少しずつ低くなっていく。


「主殿に近い所から行こう。体を隠し持っているということは、それなりの部屋にいるはずだ。だが、正妃ではないだろうから」

「了解!」


 ドローンは主殿を取り囲む内側の輪へと進んで行く。館に沿って造られた朱色の廊下の天井に貼りつくように浮遊していった。

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