表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/80

第9話 暗殺を目論む王

更新再開!(11/30)


 魔族と人間の間に生まれたカンサ王は、悪行の限りを尽くす所謂悪王であった。苦しむ国民の姿を憂慮した神々は、ヴィシュヌ神の化身としてクリシュナを人間界に誕生させ、カンサ王を殺させることとした。

 だが、それを魔族からの進言でいち早く知ったカンサは、逆にクリシュナの命を狙うようになった。実際、彼と思われる赤ん坊や子供を殺し回ったと言う。

 酷い奴だな。これが今、クリシュナを狙う敵対勢力だとアルジュナが教えてくれた。


「カンサは彼ら魔族の戦士、アスラ族をクリシュナ暗殺に寄越しているのだ。奴らは当然手練れの戦士ばかりだし、死ぬことすら恐れない」

「なんだよ。さっさとカンサとか言うの、殺せばいいじゃないか。神様からの命令なら簡単じゃないのかよ」

「神々の命と申しても、その姿を見た者がいるわけではない。全ては神仙から告げられたこと。それに魔族にも神はいるし、全ての神が善神ではない。第一時がまだ満ちていない」


 そうか、なるほどね。日本の神様も、確かにみんながみんな人間を助けてくれるわけでもない。万能でもない。カンサ王側にも神様がバックにいるってことか? にしても、その『神仙』ての。やっぱり胡散臭い。


 カンサ王はつい最近まで、クリシュナが自分を殺す命を受けた者とは知らなかった。子供の頃にとっくに殺したと思っていたようだ。でもなぜかそれに気付いたため、城にアスラたちを向かわせたということだ。急襲に慌てたクリシュナは、オレ達の世界に来てしまった……。


「私は神仙から、元の世界に戻る道具をもらってきた。これでクリシュナを連れ帰るつもりだったのだ。だが、身体がなくては! 一体どうすれば……」


 アルジュナがオレの目の前で悶絶している。オレだって同じだ。じゃあ、瞬弥はずっとクリシュナを抱えたまま生きるのか? 冗談じゃない。いや、もっと恐ろしいのは、瞬弥の存在を消されることだ。

 アルジュナはそのことにまだ気付いていないのか、気付かないふりをしているのかはわからない。でも、その可能性は否定できないんだ。あいつの精神を破壊して、瞬弥の体のままクリシュナを連れて帰る。それが今、オレが一番恐れるシナリオだ。


「クリシュナの体を探そう。それしかない」


 オレは、頭を抱え込むアルジュナにそう言った。ヤツは動きを止めオレを見上げる。


「探す? どうやって? どこにそんな手掛かりがあるというのだ」


 アルジュナは背を起こした。少しは落ち着いたのか、声のトーンが変化していた。


「まずはクリシュナによく話を聞こう。ヒントが隠されているかもしれない」


 オレに仮説がなかったわけではない。だが、まずはクリシュナに聞くのが先だ。瞬弥にもアルジュナが追ってきたことを伝えたい。


「そうだな。私も早くクリシュナに会って話がしたい。樹、あいつの居所は知っているのだろう? 今すぐ行きたいのだが」

「無理だよ。今、瞬弥は八王子の向こうにいるんだ。車でも二時間はかかるよ」

「だが、こうしている内にもカンサの手の者があいつを追ってそうで……」


 瞬弥の実家はそもそも警備が半端ない。有名旅館並みの豪邸の回りには、それこそ要塞みたいな有刺鉄線入りの塀が張り巡らされている。加えて腕に覚えのある人たちがウロウロしているのだ。普通の相手ならオレも心配しないのだが。未知の世界の魔族とか言われると、さすがに心配になってきた。


「何か方法はないのかよ。アルジュナは魔法とかつかえねえの?」

「私は武闘家だ。魔術などというものは好かん。魔術を使うものを疎かには思わんが。……そうだな。この薬があれば、可能だ」


 アルジュナは腰に取り付けた袋を取り出した。中に小さな瓶が入っている。


「なにそれ?」

「これは神仙から頂いたものだ。『時渡りの粉』という。これを使えば、時空を渡ることができるのだ。これでクリシュナを連れて戻るつもりだったのだが」

「じゃあ、駄目じゃないか」

「いや、多分五回くらいは使えるはずだ。今から一回目を使おう」


 五回しか使えないのに、ここで使っていいんだろうか? オレはちょっと迷う。アルジュナは体も心も強いけれど、もしかして頭はイマイチなんじゃ(失礼なやつ)。と、オレは思案するが、そんな思念は一瞬にして吹き飛んだ。


 オレのスマホがバイブした。道場の端に置いてあったので、オレも存在を忘れていたくらいだ。アルジュナは何事かと驚いた顔をしている。


「ヤバイ! アルジュナ、すぐに行くぞ!」


 瞬弥からのメッセージがディスプレイに踊っていた。


 ――――助けてくれ!



☆☆☆



挿絵(By みてみん)

幡ヶ谷誓様よりいただいたFAです!

左)樹

右)瞬弥

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ