復活の日
二十後半で独身でただのサラリーマンだった。
家族もいなくて、両親もいないが、それなりに生活は楽しかった。
ある日、突然に何が起きたわけでも無く、目の前が暗くなった。
実は、二年前くらいから、フラッシュバックのように昭和のような瓦屋根の屋敷のある家で暮らしてる世界を見てた。
それが何なのか良く分かんなかったが、やっと昨日にはっきりと頭がしたら、どうも昭和のような瓦屋根のある世界が俺の本当の世界だったらしい。
正直、訳が分かんない。
だけど、俺は確かに小学校出て、中学校出て、高校出て、大学出て、仕事について親孝行しようとしたら、事故で両親が亡くし、それでも職場の人間達にいろいろと気を遣って貰いながら、恋人はいないけど、それなりに楽しく暮らしていたはずだ。
だけど、それは夢だったのだろうか?
「蓮様、目が覚められましたか? 」
髪をショートカットにした二十歳くらいの女性が俺に言った。
黒い髪がしなやかで、くりっとした目が印象的な子だ。
身長は百六十センチくらいで出るとこは出た良い身体をしていた。
彼女の名前は、神無月唯だ。
「ああ、ありがとう」
答えながら、身体を起こす。
俺の名は八重樫蓮と言うらしい。
年齢は十六歳。
まあ、身長は百七十二センチくらいで体重も五十二キロと普通だ。
この俺が住んでいる島を実質的に支配する八重樫家の御曹司と言えば聞こえはいいが、単なる種馬用の雄である。
しかも、種馬なのにち〇こが立たない不良品と来たものだ。
どうも、数百年前だかの大戦争で、こちらの世界の大半が沈み、その残った島々でなんとか人間が暮らして生きていると言う世界らしい。
しかも、一種の遺伝子攻撃もあったらしくて、圧倒的に女性しか生まれない世界。
男は百人に八人くらいで、しかも、ほぼ何らかの問題を持って産まれている。
立たないのもその問題の一つらしい。
各島はそれぞれ本家と呼ばれる家に差配されていて、それが一個の集団として暮らしている。
八重樫家はその一つで全部で八百人くらいの集落を持つ、まあまあの集団らしい。
それを名家と呼ぶ。
名家は、それぞれの家から産まれたうちの男の子を世継ぎとして、どこも存続している。
勿論、この御時世産まれない事も多いので、その場合は養子になるが。
実際、どこの名家も家中と言う臣下達全部は、男性は女性に比べて一割といない。
うちはさらに少なく。俺を入れてニ十五人で、四十くらいの中年は六人いて、さらに十五人は親父を含めた老人だ。
適齢期になると、俺ともう一人しかいない、後は二人の子供だけだ。
だからこそ、俺は凄く凄く大事にされていた。
随分のフラッシュバックとかのせいで寝たきりも多く、その上にち〇こが立たないなど、普通なら廃嫡されているだろう。
だが、近年どこも男が産まれなくなっており、その辺でも仕方なく置いておいたような感じだ。
こちらの世界は瓦屋根でまるで昭和初期のような古い屋敷に皆が住んでいるので、古いと言われそうな世界だが、実は前いた世界とほぼ同じような電気製品とかある。
あまり科学技術レベルは俺が居たはずの世界と変わらないようだ。
俺はフラッシュバックを受けてずっと寝たきりだったのかと思えば、普通に起きてた様で特に身体の方はかなり鍛えられていた。
意外に自分自身がかなりの筋肉質で驚く。
ひょっとすると、もう一人のこちらの世界の俺がいるのかもしれない。
「大殿がお呼びです」
唯さんがどうも、いつもと雰囲気が違う。
まあ、いつもと言っても、ここ数日しか知らないんだけど。
「ああ、そうなの? 」
大殿と言うのは俺のこの世界の親父だ。
六十歳近くて、最近では寝たきりのようだ。
「分かった」
俺が唯さんが出してくれたワイシャツとズボンを着て立ち上がった。
着ている服は老人は作務衣や着物を着るが、俺達若者は前の世界と同じでジーパンとかコットンシャツとか着ている。
その辺はあまり変わらない。
「今日は、どんな話が来ても気をしっかり持ってください」
唯さんが震えるような顔で俺を見た。
何か、ヤバイ話でもあるのだろうか。
正直、不安しか無い。
長い廊下を無言で唯と歩く。
畳が三十畳くらいある大きな部屋の一段上の所で、布団から身を起こした八重樫仁がいた。
俺の親父だが、結構渋い顔だ。
若いときはモテまくったらしい。
おかげて八百人のうち四十人は俺の姉や妹に当たるそうな。
「良く来たな。蓮」
「はい」
言いながら、前回に教え込まれたように正座して静かに頭を下げた。
名家の当主と言えば、昔の大名家の殿様みたいなものだ。
親とはいえ、立場が違う。
「蜜蜂のオスを知っているか? 」
こちらの世界の親父さんが訳の分からない事を聞いてきた。
「はあ……」
「女王蜂と交尾するために産まれて、その為に何もせずに飯を食べて巣の中でのんびり暮らすことが出来るが、交尾が出来なかった場合、秋になると飯を貰えなくなって、巣の中で餓死する。そして、死んだオスは働き蜂に巣の中から運び出されて捨てられる」
「え? 」
一瞬、何の話か分からなくなった。
「お前は、それと一緒だ。立たない以上は使えない」
「え? 」
「どうする? そのまま死ぬか? 」
「大殿様っ! 」
唯さんが怖い顔をした。
「唯には蓮の育て役として、さらにお友達役として、世話になった。蓮はわしの大事な息子だが、それだけでは、もうここでは生きていけんのだ」
親父が辛そうに答えた。
「ガーン! 」
えええええええええええええ?
俺、捨てられちゃうの?
「お前がな、お前が種馬として頑張れたらよかったんだが、残念ながらお前は立たなかった。だから、どうにもならない。だが、わしはお前にチャンスをやりたい」
親父が涙ながらに訴えた。
親父の横に居る女性。
俺の母さんは第四夫人として亡くなったので、こちらは第十二夫人の楓さんにあたる。
その女性、まあ義母さんと呼ぶべきなんだろうけど、楓さんが手紙を持ってきた。
そして、その手紙を開けて、一枚のカードを出した。
俺が恐る恐るそれを見ると、殺人決闘許可証と書いてある。
「はああああああああああ? 」
「お前だけが悪いのではないのだが、もはや、子作りを出来る男は世界に少ない。それを金銭で売って貰ったりしても良いのだが、今はその金額がとてつもなく巨額だ。我が八重樫家も昔なら出せたが、今は無理だ。だから、その殺人決闘許可証で、我が八重樫家と名家の他家の男の子とを賭けて戦って貰いたい」
「ええええええええ? 」
「何を怯える。その為の訓練を唯がお前に施してくれたはずだぞ」
「ふんがぁぁぁぁぁあ! 」
何てことでしょう。
その記憶がすっぽり無いのです。
「昔と違って、今はこういう時代だ。これはどの家も男しかしてはいけないことになっている。お前には何としても、これに勝ってほしい」
「いやいや、流石にこれは……」
「断るのなら、すまんが餓死だ。もう、食べ物はやれん」
「えええええ? 」
「おかしいな、唯。蓮の戦闘能力は、お前のお墨付きでは無いのか? 」
親父が訝しげに聞いた。
「そ、それが、ここ数日前からおかしくなられていて」
「何だと? 」
親父の顔が鈍く歪む。
「もうしばらく延期は出来ませんでしょうか。才能はずば抜けておりますし……」
唯さんが必死だ。
どう言う才能なんだか。
「何という事だ。あの三日月家とすでに対戦が三日後に決まってしまった」
「ええええええ? 三日月家はこの対戦で十六度も勝ち続けている難敵ではありませんか」
唯さんが非難がましく言った。
「足元を見られたのよ。八重樫家は男子が少なくて、今や風前のともしび。それゆえに」
楓さんがくやしそうだ。
「仕方あるまい。ここ二十年近く、我が家の男の子はなかなか生まれず、このままでは適齢期の娘をたった一人で相手をせねばならん、三日月家はその適齢期の男が二十人も居るからな」
「対戦相手は噂の三日月兄弟のどちらですか」
「ああ、兄の方になる」
「す、凄腕なの? 」
俺がおろおろと聞いた。
「凄腕だし、残忍で有名です」
「マジか」
眩暈が止まらない。
何でだ。
「試合は早くてすまないが、明日の午後だ。一応、うちの武器として、これを渡す。もし、追加で何か必要なら楓に言え。楓の実家は鍛冶屋だからな」
親父が厳しい顔で俺を見た。
楓さんが、アタッシュケースを持って来て、開けると、そこに、コルトガバメントカスタムが入ってる。
こちらの世界では銃器はずっと昔の型を再生して使っているそうな。
「えええっ? 確か、三日月家はミニUZIのサブマシンガンを使うはず。こんな拳銃一つでは……」
「銃は一人一つしか持っていけない。その拳銃以外になるとうちには豊和のボルトアクションのライフルしか無い。ただ、弾数はあらゆる銃器は五十発までと制限がある。場所がいつもの古い家が並ぶ、第一対戦島なのだ。どちらが良いかはお前に任せる」
「あ、あの古い建物だらけで、密集してる島ですか」
唯さんが焦っている。
「遠くから撃つなら、良いが、狭い場所だらけだから、ボルトアクションライフルは不利になると思って拳銃を出した」
「でも、相手はミニUZIですよ」
「そうだ。圧倒的に不利だ」
「では、せめて、私が参加しては駄目でしょうか? 特例として、女性の補助も一人だけなら認められるはず。向こうも一人補助が来るでしょうが、私がボルトアクションのライフルで後方から支援いたします」
唯さんが答えた。
「いいのか? 負ければ嬲り殺しにされるぞ? 」
「え? 」
俺が横で驚いて聞いた。
「分かっております。それは覚悟の上です」
唯さんが真剣な目で親父を見た。
なんてこった。
唯さんもやばいし、俺もやばい。
「どうなんだろう。もしも、それまでに俺のちんこが立ったら、決闘は無かった事に出来ないかな? 」
俺が親父に必死になって聞いた。
「もう、諦めろ試合は明日なのだ」
親父が涙を流した。
俺はその場を立ち上がると俺の部屋に急いだ。
「あの、大殿様。私の参加の件も……」
「分かった。すまないな」
親父か後ろで答えたのが聞こえた。
俺が廊下に出て立ちすくむ。
記憶がはっきりした途端に殺し合いなんて。
「何か、こうなると生きるために戦略を考えないと……」
唯さんが後ろから声をかけてきた。
「生きるための戦略か……そうだ、毒とか駄目なの? 」
「毒は対戦上の島にあるものしか駄目です。しかし、毒になりそうな草と言うのは……」
唯さんが首を振った。
無いと言う事か。
「弓とかどうなんだろう? 」
「手榴弾とか以外なら、大丈夫なんで使えますが、夜ならいいのですが、嵩張るので昼は不利になるかと」
「昼なんだ……」
「ええ、昼です」
「どうしょう? 」
「とりあえず、山側に行ければ、私のライフルで狙撃できますが、古い建物が密集してる接近戦だと流石にミニUZIにはかないません」
「と、とりあえず、家は鍛冶屋だっけ? 」
「はい、母と叔母がやっておりますが」
「こんなの作ってくれるかな? 」
俺があるものを提示した。
古い古い中世の武器だ。
とりあえず、ざっと親父が渡してくれた地図を見ると昔のホームセンターがあった。
その古い古い武器に加えて、あれがあればと思った。
無ければ無いなりにするしかないが。
とにかく、銃の練習とかしていたらしいのだが、全く覚えがない。
本当にしていたのだろうか。
そうやって、鬱々と部屋で考えているうちに寝てしまった。
試合は明日なのに。
★★★★★★★★★★
目が覚めて慌てて起き上がった。
もう次の日の明け方だった。
すでに、唯さんは居なかった。
恐らく、あの武器を作りに行ってるんだろう。
まあ、たいしたものでは無いんだけど。
さて、どうするか。
親父に貰った、ガバメントカスタムのケースを開けてみる。
ずっしりと重い拳銃がそこにあった。
持って見ると、不思議と使い方が分かった。
どうも、身体が覚えてるらしい。
となると、俺に戦闘教育してたのも本当のようだ。
とは言え、勝てるのだかどうなんだか。
そもそもミニUZIサブマシンガンとなんて出来るはずないだろうに。
ただ、五十発限定だと、連射と言うより、小刻みに引き金を引く感じで、3点バーストみたいに3発ずつ撃ってくるんだろうな。
何気にそう考える。
「そろそろ、お時間です」
唯さんが部屋に入ってきた。
「ええ? 早くない? 」
「島まで船で時間がかかりますから」
「……そうか。あれは出来たのかな? 」
俺が心配そうに聞いた。
「何とか三十だけ出来ました」
「そうか……」
とりあえず、一カ所にしか使えそうに無さそうだ。
それでも、無いよりはマシだが……。
不安は尽きないな。
俺がため息をついた。
★★★★★★★★★★
船で対戦の島に渡るとすでに相手の船は来ていた。
それだけでなく、戦いを全国の名家に見せる為に、撮影スタッフも大量に来ていた。
全国ネットと海外ネットで放映するらしい。
人気が出れば出るほど対戦してる名家にお金が入るようになっている。
三日月家はこの対戦の常連で、それで裕福らしい。
「何だ、可愛い坊ちゃんじゃねえか? 」
ワイルドに無精髭を生やした二十位のお兄さんがこちらに来た。
顔は間違いなくハンサムだが、ヤクザみたいにガラが悪い。
これが三日月兄弟の兄の三日月龍一だ。
身長は百八十センチくらいで、鍛えられた筋肉が半端ない。
とても勝てると思えない。
「蓮様、こちらでお待ちください」
雰囲気を読んだのか唯が間に入った。
「おお、これはそそる姉ちゃんだ。こりゃ、楽しみだな。知ってんだろ? 負けたらレイプしようが何しようが自由だって」
三日月龍一が舌舐めずりした。
「分かっています」
唯さんが睨み返した。
「いいね、いいね。気の強い姉ちゃんをいたぶるのは最高だ」
三日月龍一がゲラゲラ笑った。
「龍一様、あまり、そのような事をすると三日月家の品位が……」
龍一の背後から、真面目そうな、二十歳位の唯と同じ背丈の綺麗な女性が止めた。
三藤美優と言う名前らしい。
しかし、龍一はそれが気に食わないのか殴りつけた。
「美優は俺に意見をすんじゃねぇ! 」
「申し訳ありません」
慣れているのか殴られて痣になってるのに美優は無表情に答えた。
「まあ、たっぷり楽しませて貰うさ」
龍一がゲスな笑顔で答えた。
こいつ、本当に最低だ。
龍一が唾を吐き捨てると自分のクルーの元へ向かった。
その時に、親父からスマホに連絡が入った。
嫌な嫌な話を聞いた。
三日月家は最後に男の方側に反撃できるチャンスを一度だけあげて、女性がいる場合は、その女性をレイプするそうだ。
そして、恐怖で反撃できない男は嘲笑われ、反撃した男は必ず殺すと。
唯さんはそれを知ってて俺に教えてないらしい。
本当に胸糞悪い世界だ。
★★★★★★★★★★
午後ちょうどに対戦は始まった。
唯さんの話通り、モトクロスバイクに相手は乗っている。
この機動力を殺さない為のミニUZIサブマシンガンらしい。
ルール上で徒歩と相手が機動力のあるバイクや車に乗ってる場合は、三十分のタイムラグが与えられる。
俺はその間に、ホームセンターに行くつもりだ。
「こちらも、モトクロスバイクはあるのですが、ご使用なさらないのですね」
唯さんが最後に聞いてきた。
一応、モトクロスバイクに乗れる訓練はしていて身体も覚えているようだが、不安だ。
「ガバメントも反動が強いし、ライフルも使いづらいから良いよ」
俺が答えた。
「分かりました」
本当は使いたいのだろうに、唯さんには申し訳なかった。
だが、俺は相手が勝ち誇る状況を作りたかった。
だから、そうしたのだ。
「おい、俺だけでやってやるよ」
にやにや笑って龍一が俺達に声をかけてきた。
「龍一様、それは……」
「お前は黙って、言う事を聞いてりゃ良いんだ」
言いながら、龍一が美優を殴った。
美優は無言でそれを受けている。
こいつ、本当に最低な奴だ。
こんな奴に、唯さんを酷い目に会わされるのは嫌だ。
何とかしなくては……。
その時、スタートの号令である大きな鐘が鳴った。
俺達は必死に古びた家の上の方にある廃校になった小学校へ向かう。
草がぼうぼうなのだが、あちこちに無理矢理バイクとかで作られた押しつぶされた道や、昔の血痕が変色して残ってるのが分かってぞっとした。
ここは地獄の島なのだ。
★★★★★★★★★★
俺達がようやく汗だくになって、古い閉店したホームセンターに着いた時に、三十分が立ったらしく、次の鐘が鳴って龍一の追撃が始まったようだ。
俺がホームセンターの扉をこじ開けて入った。
棚が残っていて、少しだけ古い在庫が残っていた。
必死になって探すと見つけた。
石灰乾燥剤だ。
やった、これであれが使える。
唯の鍛冶屋に作ってもらったカルトロップだ。
四つの鋭いスパイクを持ち、常に一つは地面から上を向くような形状になっている。
まあ、日本で言うならマキビシだが、日本のよりは遥かにスパイクが長く抜けないように返しが付いている。
アレキサンダー大王の時代から使われていて、実は騎士の時代にも大量に使われていた。
馬が踏み抜いて、倒れた時に上の騎士の頭蓋骨を突き破って殺したりして、草むらに隠すと分かりにくく、非常に有効な武器だ。
本当は無茶苦茶使われてたのに、騎士道に恥ずかしいとかの理由で殆ど歴史に残って無い逸品だ。
これに乾燥材の生石灰をかける。
中世では貫いた後、生石灰を塗りこめて、生石灰が血液に反応して結構な高温になり、たくさん人を殺した武器になるのだ。
これをあいつが回り込んでくるルートに撒く。
そして、引っかかった後に撃ち殺せばいいのだ。
まあ、引っかかりゃいいんだけど。
「おいおい、籠城かよ」
俺が巻き終わって、おびき寄せようとホームセンターに隠れようとした時に、龍一が来た。
流石にモトクロスバイクだけあって早い。
唯さんがボルトアクションライフルを撃ち続ける。
唯さんも手練れなだけあって早い。
だが、龍一はそれを難なく、唯が撃ちにくい方へモトクロスバイクを走らせて逃げる。
厄介だ。
戦い慣れしてる。
そして、やはり、死角からガラスの割れる音がして、ホームセンターに乗りこんで来た。
やはり、指切りの形で三点バーストになるようにこちらに牽制して撃ってくる。
俺達は出口に誘い込むように動いた。
そこにカルトロップが仕掛けてあるからだ。
ガバメントを撃つが、まあ拳銃なんてまず当たらない。
もはや、けん制の意味しか無いので逆にわざと当たらないように撃つ。
「おいおい、予想以上にしょうもない射撃だな」
龍一が嘲笑った。
よし、このまま舐めたままでいてくれ。
そのまま出口に俺達が逃げると同時に左右に飛びのいて、奴が出て来るのを待った。
完全に舐めている龍一はまっすぐに猛スピードで出てカルトロップを踏んでこけた。
近代戦でも使われているだけあって、タイヤはバーストしてる。
「ぐぁあぁぁあぁぁぁぁっ! 何だ、こりゃ! 何か塗ってやがったな! 」
龍一が叫んだ。
倒れ込んだ時に、左肩をカルトロップが突きぬいたようだ。
利き腕で無いので、ミニUZIサブマシンガンを怒りを込めて乱射してる。
勝ったと思った。
しかし、俺と唯さんが拳銃とライフルを構えたら、別の方角からミニUZIサブマシンガンの攻撃を食らった。
唯はライフルと右手を撃たれた。
俺は足を撃たれた。
目の前に美優さんがモトクロスバイクに乗ってミニUZIサブマシンガンを構えている。
「おおお、すまんな。保険を賭けといて良かったわ」
言いながら、龍一が立ち上がって、左肩のカルトロップを抜いた。
「予想が当たりましたね。龍一様」
美優がにやりと笑う。
「ああ、助かったわ」
龍一が苦笑して答えた。
「貴方は参加しないのでは? 」
唯さんが傷口を抑えて唖然としてる。
「嘘に決まってるじゃないですか。最初から挟み撃ちする計画でしたよ」
美優が冷たく笑った。
「あたりまぇだろ! こっちが言ってるのを信じる方がアホだ! 」
龍一が嘲笑った。
「殴ったりとか全部演技だったのか……」
俺が撃たれた足を抑えながら唖然として答えた。
「このくらいの保険はかけるものですよ」
美優が笑った。
「さあて、痛い目も見たし、いつものいたぶりタイムを始めるか」
龍一が残忍そうに笑った。
唯さんを何度も殴りつけると引き倒して、強引に唯さんの服を破る。
「私は見てるだけです。貴方が勇気を見せて見なさい」
美優が俺に薄笑いした。
「さあ、良いぞ、撃つなら撃ってみろ」
龍一が右手の近くにミニUZIサブマシンガンを置いて笑った。
嘘だ。
今までの奴は恐怖で撃てなかったんじゃない。
この美優がいるから撃てなかったのか。
親父の話と違う。
美優は撃たないと言いながら、こちらを撃つ気満々だった。
「良いんです。蓮様」
唯さんが優しく笑った。
「おいおい、御嬢さんは優しいぞ! 蓮様ぁぁぁぁぁ! 」
龍一が服を破いて、下着を引きちぎった。
その時、フラッシュバックのように唯さんに育てられて姉のように過ごしていた過去の情景が浮かぶ。
こちらの世界の俺が姉のように慕っていたのが良く分かる。
「ほらほら、胸も露わだ。レイプしちまうぞ」
唯の豊満な胸をみて、にやにや笑いながら龍一が俺を見た。
その時、こちらの世界の俺が動いた。
やはり、いたのだ。
そして、俺の身体を動かし始めた。
俺の筋肉が異様に隆起した。
一体、何が!
「あぁぁあぁぁあぁあぁああぁぁぁぁぁ! 」
身体のコントロールは完全にこちらの世界の俺に奪われた。
俺は何もできないが、そうか彼女はこちらの世界の俺に大切な人だったんだなと思った。
それを待ち構えてたように、龍一がミニUZIサブマシンガンを手に取った。
こちらの世界の俺もガバメントを向ける。
そして、それより早く俺のスボンがビリビリに裂けた。
ちんこが立ったのだ。
それもズボンを突き破って丸出しだ。
しかも、でかい。
というか、三十センチくらいある。
なんだ、これはぁぁぁぁぁあ!
デカ過ぎるだろぅがぁぁぁぁ!
「「は? 」」
突然の出来事に龍一と美優が戸惑う。
超巨大なちんこ丸出しの男が叫んでいるからだろう、一瞬だが龍一と美優が躊躇した。
それを、こちらの世界の俺が神速のガバメントの抜き打ちで龍一と美優のミニUZIサブマシンガンを破壊した。
「嘘だろ? 」
龍一が呆然とする。
それほどの早撃ちだった。
その時、俺はこちらの世界の俺の過去のフラッシュバックを見ながらある事に気がついた。
思春期なったらしくて唯さんを見てるのかと思えば、こちらの世界の俺は他の男ばかり見てる。
あ、あれ?
しかも、尻とかばかり見てる。
ど、どゆこと?
「お前がレイプすると言うのなら、俺がしてやる! 」
筋肉隆々の勃起した、この世界の俺は龍一の服をビリビリに裂くと、後ろから龍一を抑え込んだ。
え、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「え? 待って待って、やめてぇぇぇぇぇ! そんなの裂けちゃうぅぅぅぅう! 」
さっきまで、ドスの効いてた声の龍一が女子小学生のような悲鳴を上げる。
勿論、俺もこちらの世界の俺の中で悲鳴を上げてた。
待って!
待って!
向こうの世界込みで、これが俺の初めてなんだけどぉぉぉぉぉお!
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「はががががぁぁぁぁぁ! 」
龍一が悲鳴を上げた。
祝開通!
ほんげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、しかも、この三十センチ砲、ミニUZI並みの連射でやんの。
全然、激しい動きと連射が止まらない。
止めて欲しいと唯と美優をこちらの俺の中から見たら、二人とも、ほうっと頬を染めてその惨劇をじっと見てる。
最後に龍一君は泣いてました。
俺もあまりの初体験で意識が飛びました。
★★★★★★★★★★
目が覚めると八重樫家の屋敷の布団の上だった。
どうも、こちらの世界の俺は寝たようだ。
夢だったのだろうか。
俺が身体を起こすと、布団が三角錐のように立っている。
ほげぇぇぇぇぇ、何ちゅう朝だち。
しかも、でかっ!
「ああ、起きられましたか」
唯さんが優しい笑顔だ。
「ええと……」
「良かったですね。夢を果たされて……。数百年ぶりにホモが現われたと今、世界で大騒ぎですよ」
唯さんが嬉しそうだ。
俺はホモじゃないんですけど。
しかも、唯さんはこちらの世界の俺がホモだって知ってたんだ。
「そ、そうなんだ……」
ため息しか出ない。
「映像が物凄い売れ行きで、大殿様も大喜びです。私も感動しちゃって。やっぱり、俺様気質で筋肉隆々の美男が可愛いボーイッシュな男の子の巨根に掘られる。これ王道ですね」
唯さんが興奮してるのか何か言ってる。
「は? 」
「今、蓮様の世界的な人気が凄いですよ。私も映像ディスク買っちゃいました。見てて震えが止まりません」
唯さんが目をキラキラさせている。
あれ?
ひょっとして……。
「腐女子さんの間では、あの日は<復活の日>とか呼ばれてますよ」
俺が貫いてるカバーの映像ソフトを胸に抱いて、唯さんが凄い笑顔だ。
それを見て、俺はもう一度気が遠くなった。
唯さん腐女子だったのか……。
悲しい。