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096 妹と弟分

 時は学校。 

 美月との触れ合いを弟に見られたからって止める気はまったくない。

 隙をついていちゃつくのは止めないのだ。


「太一くん、私が作った卵焼きを食べさせてあげるね。あーん」

「あーん」


 噛んだ瞬間、トロっとした甘みが口の中にとろけるようでとても美味である。

 本当にメシが美味しくなったな。久しぶりに会った時の料理焼失事件がもう嘘のようだ。


「次は美月だ。あーん」

「あーん」


 俺が作った弁当を美月に食べさせる。

 最近はずっとお互いのため、お互いに弁当を作り合っている。

 そして昼休みに屋上で食べさせあうのだ。


「ウインナーすごく美味しい! 味付けがね、ジューシーでね! ああ、説明できない!」

「そうだろそうだろ。ん? おまえ達は食べないのか」


「食欲失せるわ」

「僕も……」


 一緒に屋上で飯を食っている吉田と悠宇が遠い目をしている。


「飯は食わないと力が出ないぞ」

「誰のせいだと思ってんだコラ」


 吉田は相変わらず口が悪い。

 そもそも俺と美月のラブラブ昼食に勝手についてきたのはそちらだというのに……。


「目を離すとすぐイチャつくから監視しろってアリアちゃんに言われたけど……ここまでとは思ってなかったよ」

「別に普通のことしかしてないんだが」

「太一くん、ウインナーの味を伝えられないからチューして。そしたら味が分かるかも」

「仕方ないな……」


「仕方なくねぇよ。ごく自然とチューしようとすんな」


 美月は吉田に頭をチョップされ、少し涙目になる。


「来週から修学旅行だけど、2人は一緒にまわるの?」

「そうだな。2日目が自由行動だからその予定だ」


 来週、2泊3日の修学旅行が始まる。西日本のとある県への旅行だ。

 1日目はクラス内だけ課外活動をするが、2日目の昼からは完全に自由行動だ。

 是非とも美月と思い出を作りたい。

 恋人になってから初旅行とも言える。


「2日目が楽しみだね~」

「ああ、夜もできる限り一緒にいたいな」


「おい、浅田。夜は小日向が抜け出さないように見とけよ」

「吉田さんもね。昼間は仕方ないとして、野球部の主将が夜に抜け出して不純異性交遊はちょっとまずいからね」


 こいつら……人を性欲魔人みたいに言いやがって……。




 ◇◇◇



 野球部の活動が終わり、当然、朝宮家に向かって俺と美月は一緒に帰る。

 もはや全校どころか日本中に俺と美月が交際していることがバレているので気にせずに一緒に帰ることができる。


 ただ……な。


 俺に寄り添って腕をからませる美月と一緒の中……、後方で星斗とアリアがじっとこっちを見つめながら後ろについてくるのが気になる。



「ねぇ、せーくん。今日友達と話してたんですが、我が目を疑う光景って経験あります?」


「あるよ、わりと最近」


「へぇ、どんなことですか?」


「あの日だよ。東京桐陰に勝った日に野球部みんなで祝勝会したじゃん。あの後家に帰ったらさ」


「帰ったら?」


「ねぇちゃんの部屋でせんぱいとねぇちゃんが裸で抱き合って寝てた」


「っ!?」「んがっ!?」


「あー……あー……あー……それはつらかったですね……」


「ああ、つらくはないけど呆れはした。それより、アリアはそういうの大丈夫なの?」


「大丈夫ではないです! 下ネタは嫌いですし不潔です! ……でも兄のことですから小日向家としても人ごとではないですし……例え【子供ができるようなこと】でも」


「【子供ができるようなこと】か」


「そもそも【子供ができるようなこと】を交際開始の日にするのがおかしいです! 何考えてるんですか!」


「何も考えてないんだろう」


「む……」


「……アリアは姪と甥ができるとして何人くらい欲しい?」


「この歳でおばさんと言われるのは釈然としませんが……仕方ないですね。……まぁどちらもですね」


「どちらも?」


「はい。男の子なら一緒に野原を走り回りたいですし、女の子ならおままごととか……着せ替え人形みたいにいろいろ着せてあげたいですね。美月先輩の娘さんなら大層かわいらしい子が生まれそうですし」


「ふーん」


「せーくんはどうですか?」


「オレは甥がいいかな。キャッチーボールとかしたい。せんぱいの息子ならいいキャッチャーになりそうだ。あと人数多いとお年玉とか面倒くさそう」


「アリア達の年齢なら払う必要はないと思いますが……でもいずれはですよね。何人ぐらい産むのかしら」


「1人、2人なら楽だけどな」


「うーん、でも美月先輩の安産型のお尻なら4,5人は余裕そうですよね」


「ひっ!」


「先輩も無駄に体力あるし、いいカップルじゃん」


「アリアは出来れば結婚式で……ほらっ、あるじゃないですか甥とか姪がフラワーボーイ、ガールをする演出。あれに憧れます」


「あー、親戚の兄ちゃんがやってたな」


「たくさんの甥、姪っ子に囲まれて祝福されるのはいいですね」


「んじゃ……今のウチに拝んでおくか」


「手を合わせておきましょう」


パンパン! パンパン!


「ま、でも子供って授かり物だろ? 【子供ができるようなこと】ですぐ出来るのか?」


「知りませんよ! それにそーいうのって……ただ快楽のためにするって聞きますし」


「……ノーコメントで」


「むっ、じゃあせーくんに聞きますけど男の子ってやっぱりそうなのですか? そのやっぱり付き合ったらすぐに【子供ができるようなことを】したいものなのですか?」


「いや……オレは別に……」


「もったいぶらないで教えてください!」


「ゆ、悠宇せんぱいに聞けよ!」


「聞けるわけないじゃないですか! せーくんはデリカシーがないです!」


「オレにはいいのかよ!」



 過剰に攻められるような気がしていたたまれなくなっていたら……いつのまにか妹と弟分がラブコメし始めた件について……。


 ああ、気まずい。美月も両手で顔を隠してんじゃねーか。



 そして……時は過ぎ、修学旅行の日となる。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


こんな風なバカップルを客観的に冷静に見る2人を書いてみました。


完結まで残り4話。宜しくお願いします。

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