076 渚に現れたエンジェル
来た!
アリアとそして美月の声がする。
振り向いたそこにいたのは天使だった。
清楚をイメージする白はまさに天使、いや天女といってもいい。
肩までかかったやや薄めの黒髪がお日様の光をふんだんに浴びており、きっと撫でたらサラサラの肌触りを感じることができるのだろう。
傷1つない柔肌は健康美溢れており、最近ずっと一緒にトレーニングをしていたから、今の美月は理想な体になっているといってもいい。
俺はトレーニングウェアの上でしか見たことがなかったが、こうやって白い肌がさらされるとなるとその瑞々しい身体を撫でまわしたい気持ちにさせられる。特によく鍛えたお腹はくびれはないもの程よく脂肪がついており、手で押すと柔らかな反発が起きるであろうそれは一層の情をかきたてる。
そしてやはり男であれば胸部に目がいってしまうもの。
元々、美月は中学の頃からスタイルの良さで有名だった。体操服やスクール水着で胸の大きさというものはある程度把握できるもの。
美月くらい可愛くて、胸が大きければとにかく男子の間では噂になる。中学では間違いなく1番可愛かった。
ただ決して男子の前で水着になることはなかったらしいのでこうやって目の前で天使の身体を刮目できるのは幸運中の幸運。神の褒美と思っても良い。
「太一くん、どうかな」
恥ずかしそうに頬を紅く染めた表情だけですでにお腹いっぱいだ。
「美月先輩は今日のために水着を新調したのですよ。誰のためでしょうね〜」
「もう、アリアちゃん!」
俺のためにそんな純白のビキニを着てくれたのか?
なんだろう、胸が込み上げてきた。
「兄様泣いてる!?」
やばい……涙が出てきた。
ずっとこんな日が来ることを望んでいた。
叶うことなら小学、中学と一緒にいたかった。
「美月」
「だ、大丈夫?」
「感極まると……涙が出てしまうんだな。すごく似合っている。とっても可愛いよ」
「あ、ありがとう」
「もう! 美月先輩ばかり! 兄様、アリアも見てください」
ちっ、邪魔しやがって。
俺と美月の間に割ってくるとは……。
アリアも自身のスタイルに自信があるのか、大胆な水色のビキニを見せつけてる。
腰まで伸びた黒髪と共にくびれたお腹と大きく育った胸囲は世界の男を魅了するのだろうなー。
ふーん、まぁこんなもんか。
「なんか反応悪いですね」
「いいと思うぞ。うん、いいぞ」
「何ですか! 何が悪いって言うんですか」
「おまえは悪くない。おまえは悪くないんだが……」
アリアは機嫌悪そうに詰め寄ってきた。
正直、アリアはミス日本のグランプリを受賞した母親の容姿を色濃く受け継いでいる。
だからどうしても母親がちらつくんだよな。
「母さんが若作りしてるみたいで年考えろよって思ってしまう」
「アリアは15歳ですよ!?」
アリアはフンと言葉を投げ、俺から離れていく。
そしてそのまま悠宇の方へ行き、その腕を軽く絡め取った。
「ねー悠宇様。アリアの水着どうですか?」
「いいいい妹ちゃ、そ、そのちかちかちかい」
胸が当たるか当たらないかの距離で悠宇の腕を絡めて、ご自慢の顔を見せつける。
あの妹、マジであざといな。兄として妹の将来が正直心配だ。
星斗がカマトト女と言ってたのも理解できる。
完全に悠宇がフリーズし、反応しなくなったので首を動かして星斗の方へ顔を向けた。
「夜凪さん……腕はもう?」
「かすり傷って言ったじゃん。アンタは心配しすぎなんだよ」
「だって……」
「それよりさ、ずっと思ってたことがあるんだけど」
星斗はじっとアリアを見つめる。
その視線は……アリアの顔、ではなく……胸?
「アンタって本当に胸あったんだな。胸パットいれまくってると思ってた」
「なあああああああああああ!?」
小悪魔な顔をして悠宇に迫っていたアリアだったがとんでもない発言に顔を真っ赤にさせる。
ちょっといい関係になっていたから忘れていたが、アリアと星斗ってわりと言いたい放題な関係だった。
「ちょっと見直したのに……、あなたってほんと性悪男!」
最初は心配だったけど、今、こうやって言い合うのは何だか安心できる。
もう……2人の仲に対して心配はしていない。