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051 幸せの時は……続く?

 トイレ休憩をして、美月に逃げられなかったことに安心した俺はパンフレットを開いて美月に見せる。


「朝宮、そろそろあそこへ行こうと思う。ちょっと並ぶかもしれないけどいいか?」

「うん! 【ホラーワールド】のことだよね。ピュアランドに来たからにはここに来ないと始まらないよ」


 次に行く所がピュアランドで1番人気と呼ばれるアトラクション、ホラーワールドだ。

 雑に言うならお化け屋敷を3DとCG技術で映像化したもので全周囲から恐怖が襲ってくるというものになっている。

 クオリティはかなり高く、ピュアランドの人気の大部分を占めているといってもいい。

 ホラーと言うが恐怖度はそんなに高くはなく老若男女問わず楽しめることができる。


「怖いのとか大丈夫なのか?」

「ほんとは得意じゃないんだよね。ホラー映画とか苦手だし。でもホラーワールドは何回も行ってるから大丈夫だと思う」


 この感じだと問題なさそうだ。

 得意じゃないと言っても俺の高所恐怖症とはまた違うのだろうな。


「もしかしたら叫び声とか上げちゃって引っ付いちゃうかもしれないけど……いいかな?」

「どんとこい」

「たのもしい~!」


 ここで頼もしい所を見せて、怖がる美月をしっかりフォロー。

 必然的に密着するからお互いの距離がぐっと縮まる。

 そのまま観覧車に行くか、リラクゼーションエリアの奥にある散歩道を歩いて……告白をする。

 そして手を繋いで……帰路につくのだ。

 いける……絶対いける!


 ホラーワールドの入り口に到着した。

 このピュアランドで最も大きい建物であり、すでに行列となっている。

 列の緩和のため北、南、東の3方向から並ぶことになり、少しずつ前に進んで最後に中央で何組かと一緒に入ることになるのだ。

 さっき通りすがった時に待ち時間は2時間になっていた。

 今日からは新イベントとなっており、それ目当てに来ている客も多い。

 2時間待って中で楽しめば終わった頃には夕方にくらいになるという時間配分だ。ぬかりはない。


「ねぇ、小日向くん。野球部のことなんだけど」


 さてとのんびり過ごすこの2時間を美月とお喋りすることで楽しむことにしよう。



 ◇◇◇



「もうすぐだね~」

「おお、もうそんな時間か」

「ふふ、喋ってたらあっと言う間だったね」


 美月と昔話に花を咲かせていたら2時間があっと言う間に過ぎていた。

 まだ喋り足らないぐらいだ。でもこれからもずっと一緒にいるんだ、今はこれくらいにしておこう。


「何かドキドキしてきた」


 美月は胸を押さえて深呼吸をしている。

 新イベントはどうだろう。美月が思わず抱きついてきてしまうようなものを期待したい。


 しかし、うまく進んでいるな。

 最近ちょっと運が良すぎじゃないか。今日一日とかほぼ完璧な気がする。

 このまま何事もなく、ホラーワールドを終えて、告白まで一直線でいきたい。


「次の方どうぞ」


 よし、行くぞ。


 そう、そこで俺は美月と共にホラーワールドの入口広場へ足を踏み入れたのだ。

 この2時間という長い時間を経て、他の2つの長い列から同じように2組がこの入口広場に足を踏み入れたのだ。




「悠宇様、悠宇様、アリア、怖いの苦手かもしれません。引っ付いてもいいですか?」

「え!! いや、その……僕も怖いの苦手だから……」

「アンタのカマトトぶった恐怖顔をしっかり撮ってやるよ」

「あなたには言っていません! 悠宇様と2人きりのはずだったのにぃ!」


「私の最愛の妹が最近冷たいのだ……。ほのか、鈴菜くん。是非とも私を癒してくれ」

「お嬢様! 私に任せてください!」

「先輩はもう何でもいいでしょ。あっ小日向……!?」


 突如現れた吉田鈴菜の声を筆頭に全員の視線が俺と美月に突き刺さる。


「あれ、たーくんじゃない。どうしたの?」

「太一……? 美月くんと一緒だと……。私の美月くんに何をしてるんだ!?」

「あ、美月のやつが遊びを断ったのってこのためだったのかぁ。へぇ~小日向もやるじゃん」


 な、なんで麗華お嬢様に、ほのかも一緒にここにいるんだ。


「み、美月先輩!? なんで、なんでえ?」

「あれねーちゃん、ここに来てんだ」

「……もしかして太一と?」


「あ……え……その……あの」


 アリア、星斗、悠宇の組み合わせに問われ、美月はしどろもどろになっている。

 なぜこの組み合わせがこのタイミングで来るのか。そこは俺が知りたい……。


 今まで培ってきた完璧な運はこの落差のためにあったというのか。

 さ、最悪だ。


 さらに一つ言えることは……。

 今日の告白は駄目かもしれないということだ。


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