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050 結婚したい男

 俺と美月はショッピングエリアの方へ足を運ぶ。

 高所恐怖症で絶叫マシーンに乗れない俺を美月は気遣ってくれている。

 頭を撫でてくれれば恐怖心は無くなるが、毎回毎回お願いするのも何だか情けない絵面になってしまう。


 でもまぁ……こうやっていろんな施設を見て回ったり、パレードを見たりするのは決して悪くない。

 美月はスマホで楽しそうに撮っているし、2人喋りながら買い物をするのはとても楽しかった。


 次のアトラクション施設へ向かう。


「占いの館か」

「ここは有名な占い師さんがいるらしいよ」


 入園時にもらったパンフレットにも書いてあったな。

 メインアトラクションの1つと言われている。

 今の時間、そんなに並んでいないようだ。俺と美月は入ることにした。


「何か占いたいことあるのか?」

「……ドジな所が治るかどうか占ってもらおうかな」

「それは自力で何とかした方がいいじゃないか」


 美月のポンコツは愛すべき所がある。

 若干運が悪い所もあるが、致命的な所はないし、見ていて本当に微笑ましい。

 今日の弁当もよく出来ていたし、初めての時はマジで悲惨だったからな。


「こちらどうぞ!」


 係員さんの案内で中へと入る。


 占いの館は少しダークな雰囲気となっており、ホラー的な印象がある。

 部屋も若干暗いし、中世をイメージしているのだろうか。

 列になって客が並んでおり、俺達も後ろへ並ぶ。1組ずつ順番が呼ばれて、奥にある占いの部屋へ行くようだ。


 20分ほど待ったら奥の部屋に行くように呼ばれた。


 部屋の中にはちょうど2人分の丸椅子があって、女性の占い師さんが奥に座っている。

 全身をマントで隠しており、確かに占い師といった感じだ。

 占い師の側には水晶玉が置かれており、意外に本格的な雰囲気すらも感じる。


「何を占いますか」

「適当に聞いてみるか?」

「うん、何でもいいよ」


「じゃあ、俺とこの子が結婚したらどうなるか教えて頂けないですか」

「小日向くん!? 適当を通り越しているよ!?」


 今日の朝から好意を伝えてきたつもりだが、美月はまだ気付いてない可能性がある。

 ここまで大胆に押せばよほどの鈍感じゃなきゃ気付くはずだ。

 あとは……俺の告白に怖じけて逃げる可能性も考慮している。

 フラれて、気まずくなるくらいなら逃げられた方がいい。仕切り直す方がマシかもしれない。

 この後トイレ休憩をするからここで美月に逃げられなければ……大勝負へと進む。


 正直、占いは当てにしていない。適当なこと言われた所で俺が美月を想う気持ちに変わりない。

 参考程度に聞かせてもらうか。


「分かりました」


 占い師さんは頷いた。


 ちなみに隣の美月は動揺して、手で紅くなった顔を隠している。

 恥ずかしがってるならいけるはず……。俺だって正直恥ずかしいんだぞ!

 

 もし美月がここで真顔だったら俺は死を選んでいたかもしれん。


 占い師さんは水晶玉を見ている。


 でも、どんな結果が出るんだろうか。

 順風満帆に行くなら心配はない。

 波乱が待ち受けているなら2人で協力して立ち向かっていけばいい。

 どんな回答も4歳からの絆の力で跳ね返してみせる。


「面白い結果が出ましたね。……いずれ、2人の間に修羅場が発生するでしょう」

「それはいったい!?」


 占い師さんは一呼吸置いて俺達をじらしていく。

 

「……奥さんの性欲の強さに惑わされる旦那さんの姿が見られます」


「ぶふぉ」「げほっ!」


 予想外の発言に俺と美月は吹いてしまう。


 俺はちらりと美月を見る。


「ちょちょ、私を見ないでよ!? 私えっちなことなんて興味ないし」

「でもカバンにアレが入ってますよね」

「入ってますけど!? って何で知ってるの!?」


 何が入っているんだろうか。


「良かったですね。お客様方の性の相性はばっちりです。体力のある旦那さんに精力の強い奥さん。是非とも少子化問題を解決してください」


「そんなこと言われても! こーいう系はさすがに気まずくなるんで勘弁してください!」


 俺の言葉にも占い師さんはくすりと笑うだけだった。


「旦那さん、ちょっと」

「旦那さんって言うのやめてくれませんか」


 占い師さんの手招きに応じる。

 占い師さんは俺の耳元で声をあげた。


「お家のことなどで順風満帆にはいかないかもしれませんが……それをしっかり乗り越えることができたら良い結果になると思いますよ」

「占い師さん? ……あなたいったい」


 なぜ家のことまで……、いったいこの人何者なんだ?


「あなたと彼女さんの相性は最高と出ています。まるで神が決めたかのような相性ですね」

「え」

「だから絶対逃しちゃダメですよ」



 ◇◇◇

 


 占いの館を出た俺と美月は無言のまま、前を歩いていた。


 名家有栖院グループのせいで順風満帆にならない可能性がある……か。

 参考にするだけって思ってたのにこんなことを言われると信じてしまいそうだ。

 だけど、絶対負けない。

 俺は美月と絶対結婚して良き夫婦になるんだ。


「小日向くん……」


 少しだけ美月の表情が憂いを帯びている。

 相性がばっちりと言われると実感を帯びてしまう。

 何て顔をして俺は美月と話せばいいんだろう。


 でも臆するわけにはいかない。

 

 覚悟を決めている内にふと、美月の口が開く。


「私、子供を5人くらい欲しいんだけど……どうかな」

「何考えてんの!?」


 美月の考えが全然読めない!

 でも、何人でも俺が養ってやるけどな!

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