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034 美月とアリアと一緒に

「先に帰ってもよかったんだぞ」

「いえ、アリアは兄様と一緒に帰りたいのです」


 部活動を終えて、各自帰路につく。

 独断で野球部のコーチに就任した麗華は早々にほのかと一緒に車で帰っていった。

 アリアもそれに乗せて帰そうと思っていたのがこの通り否定して俺の側にいる。


 ちょっとした騒動があったがアリアは落ち着きを取り戻し、帰る生徒達の注目を浴びながら微笑んでいた。


「小日向くん、お待たせ」

「ああ」

「あれ? 美月先輩」


 アリアを早く帰したかったのは美月との関係をとやかく言われたくなかったからだ。

 まだ俺が毎日美月の家へ通ってメシを作っていることを知らない。


 美月はアリアに対して慌てるように頭を下げた。


「アリアちゃん、ごめんなさい! 弟が失礼なことを!」


 あの後、星斗の言葉を美月が聞いて真っ青になってしまっていた。


「頭を上げて下さい。気にしてませんから」

「星斗のヤツはどうした? もう更衣室にもいなかったが」

「メッセージが来てたんだけど見たい番組があるから先帰るって」


 相変わらずマイペースなヤツだな。

 なおも謝る美月となだめるアリア。やりとりが何度も続く。


「そ、それより兄様と美月先輩が一緒だなんて……もしやアリアはお邪魔なご関係で?」

「え!? あ、そ、そのそういうわけじゃなくて」


 話題を強制的に変えたがその変えた先がよくなかった。

 美月は顔を紅くしてうろたえる。

 ここをごまかすのは無理だろう。

 俺はアリアに平日に朝宮家に通っていることを説明した。


「そういうことだったんですか。アリアが推すまでもなく嫁候補だったわけではありませんか」

「アホなこと言うな。……それよりアリア、おまえは1人で帰れるのか?」

「道を覚えてないのに帰れるわけないじゃないですか」


 笑顔で言うことじゃない。

 スマホを使えば帰れるだろうが、アリアはアナログ人間なのでスマホをまだうまく扱えない。

 どちらにしろ容姿端麗なアリアを1人で帰すわけにはいかない。事件に巻き込まれたら大変だ。

 今日の朝宮家行きは諦めるか。


「では美月先輩の家へ向かいましょう」


「え?」


 俺と美月の声が重なる。


「兄様の料理をアリアも食べてみたいです。どうせ1人で帰れないならお二人についていこうかなと思いました」


 まさかこっちに来るという発想はなく、少し時が止まってしまう。

 アリアは話を続けた。


「もちろんアリアが食べた分は自分で払います。美月先輩がご迷惑でなければご一緒させて頂きたいのですが」

「め、迷惑だなんてそんな。うん、私は大丈夫だよ!」


 さっきの星斗の件もあって美月はうんと言うしか恐らく選択肢はない。


「朝宮の家に寄って、有栖院屋敷へ帰るのは結構歩くぞ」

「ふふ、アリアはこう見えて鍛えているので体力には自信があるのですよ」


 3人分も4人分も作る手間は変わらない。

 いても、いなくても……だがここだけは聞いておく必要がある。


「おまえに嫌なことを言った星斗がいるんだが、本当に大丈夫か?」

「……」


 わずかにアリアの口が歪む。


「朝宮、星斗はマイペースな男だが、少なくともほぼ初対面の人を露骨に傷つけることは言わない印象だ。どうだ?」


 言い過ぎてしまってもすぐに謝る。麗華にもちゃんと謝ってたしな。


「うん、私もそうだよ。だからちょっとびっくりしてる。帰ったら叱らないと」

「……彼にも何か気に入らないことがあったのかもしれません。兄様と美月先輩が仲良くなるならアリアもあの人と関わっていかねばなりませんから」


 俺と美月はお互いを見合う。

 そうやって言われると何だか照れる。

 互いに視線を外してしまった……。日曜日には一緒にデートなのにこれではいかんな……。


「では兄様、美月先輩。行きましょう!」


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