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032 お嬢様とマドンナが野球部に(以下略)

「太一、随分と楽しそうなことをしているじゃないか」


 凜々しく美しい女の声に俺の体は自然と引き締まる。

 この女の声を聞くとどうしても身構えてしまうな。


「夏の大会までもう少しだったか。精力的じゃないか」

「麗華嬢……先輩」

「ふふ、先生と呼んでくれてもよいのだぞ」

「教員免許持ってねぇだろ」


 高級感溢れるビシっとしたスーツを着た女、有栖院麗華がやってきた。

有栖院グループ、総帥の娘でこの神月夜学園の理事長代理として就任した……泣く子も黙る最強の女。

 アリアといい麗華お嬢様といいなぜこう忙しい時期にやってくるんだ。


「やっほ、たーくん元気してる?」

「してない。あとここでたーくんはやめろ」


 麗華のお世話係でもある、生徒会長天童ほのかも側に控えていた。

 麗華が在学中も学校にいる間は一緒だったからずっと一緒にいそうだ。


「アリア、今日1日楽しめたか?」


 麗華の問いにアリアは頷いた。


「はい! まだ男性の方には慣れないですけど、兄様や他の先輩達から良くして頂いて楽しいです」

「暑苦しい男の園にアリアという華を放り込むのは気がすすまないのだがな」


「男性に慣れさせるって点では悪くないだろ。その点は俺が防波堤になってやる」

「ふふ、かわいい弟分もアリアにとってはしっかりしたお兄ちゃんになるのか」


 麗華は戯けるように笑う。バカにされているような感じも受けるが……まぁいい。


「あれ、有栖院先輩じゃないっすか」


「おお! 鈴菜くんにそして美月くんではないか!」


 野球道具を持ってこちらにやってきた美月と吉田を見て麗華は飛び出して行き、両腕でがっと抱きしめた。

 麗華はほのかと同じで女性としては長身である。美月も吉田の体はすっぽり埋まった。


「お、お久しぶりです。有栖院先輩……」

「美月くんもさらに可愛くなったな。体つきもよくなったじゃないか、後で触らしてくれないか」

「何言ってるんですか……」


 美月も吉田も麗華と知り合いだったのか。

 麗華は昨年生徒会長として学園を掌握していたが……2人と知り合いとは俺も知らなかった。

 ほのかが俺の隣に来て、こちらを向く。


「お嬢様は全学年かわいさランク上位5名の女の子を個人的なお茶会に誘っていたからね。あの2人はそれに誘われていたんだよ」

「あー、あの女そういうケがあったな」


 美月は元より吉田も顔立ちの良い女の子だ。特に小さくてかわいい女の子が好きな麗華にはドスライクだったのだろう。


「お、おい! 有栖院先輩がいるぞ!」

「生徒会長の天童さんもいる!」


 野球部の連中がこの騒動に気付いて戻ってきた。


「私が1年の頃は野球部も全国を狙えていたのにな……嘆かわしい」


 そういえば俺の3つ上の世代は奇跡の世代と言われていて、秋の大きな大会でベスト16までいけたと聞いたことがある。今の戦力では到底無理だ。


 麗華は美月や吉田から手を離して周囲の野球部員達を見渡す。


「有栖院先輩も天童さんもマネージャーになってくれるんですか!」

「ん?」


 1人の男子部員の言葉に麗華は大きく反応する。


「私が野球部のコーチになればほのか、アリア、美月くん、鈴菜くんとイチャイチャできる?」

「煩悩だだ漏れてんぞ」


 そんな忠告も聞くはずなんかなかった。

 このお嬢様はいつだって自分の願望に忠実だ。


「喜べ野球部の衆。今日から有栖院麗華が野球部のコーチとして就任しよう! 過去の強豪に私が戻してやる」


「おおおおおおおおおおお!!!」


「なぁほのか。麗華お嬢って野球のルール知ってんのか?」

「うーん、知らないと思うよ。お嬢様の助けになるなら私もマネージャーになろうかな」


「いや、生徒会長の仕事しろよ……」

「ふふ……お兄様、楽しくなりそうですね」

「……俺はめんどくせー」


「鈴菜ちゃん、私達……どうしたらいいのかな」

「マネージャー増えすぎだろ、マジで」


 喜ぶ者と唖然とする者、少なくとも……俺が苦労しそうなのは間違いない。


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