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016 突然の出会い

 美月の家へ行くようになってから幾多の日が過ぎた。

 予想以上に上手くいっているじゃないだろうか。

 美月とも仲良くなってきているし、美月にとってもう立派な男友達と言っていいだろう。


「うーーーん」


 そこで俺は自室で考えていた。

 とある土曜日、最初は予定が埋まっていたが、急遽キャンセルとなった。

 明日の部活は朝だけだから、昼からは暇となる。


 美月との距離が近づいている今がチャンスだ。

 何かしらの成果をあげて……美月の男友達で1番の位置になりたい。


 確か、昨日一緒に帰った時に吹奏楽部も活動は朝だけと言っていた。

 何か遊びに誘えるか……? 


「あ、連絡先聞いてなかった……」


 どちらにしろ2人きりはまだ無理だ。

 星斗を上手く使って3人でどこか遊びにいって好感度を上げておけば……。


 そんなこと考えていたらスマホにメッセージが届く。


「星斗からか」


 “せんぱい、冷蔵庫の中身がからっぽなので買い物についてきてほしい。明日の部活後におねがい”


「俺は便利屋じゃないんだぞ」


 だが適当な食材を買われると来週の食事に支障が出る。

 最初の週は特に偏った料理になってしまったからな。

 9割は美月との交流のためだが、星斗の食育もちゃんと考えておきたい。夏まであと少しだ。


 男2人でのんびりと買い物とするか。



 ◇◇◇


「あれ? 小日向くん」


 そんなつもりだった土曜日の昼過ぎ。

 聞き覚えるある声に俺の胸が熱くなる。


 この地区で最も大きいスーパーであるレスコの入り口で美月と出会う。

 まさか……こんな所で出会うとは。星斗と2人で買い物だから適当な格好してきたのは失敗だったな。


「朝宮は誰かと待ち合わせなのか?」

「うん、せーくんと買い物に」

「待て」


 俺は手を頭に寄せる。

 嫌な予感がする。俺はスマホを取り出し、星斗から来たメッセージを確認する。


 そのメッセージには誰と一緒に買い物に行くか記されていない。

 どうやら美月はまだ気づいていないようだ。ニコニコした顔で俺を見ている。


 超かわいい。


「朝宮、どうやら星斗にハメられたようだ」

「へ?」


「俺も星斗と今日ここで買い物をするって約束をしていたんだ」

「つ、つまり……」


「俺と朝宮を呼び出して買い物させて自分はゆっくり家で休むってことだ」

「あ、ああああ!」


 美月もようやく気づいたようだ。まんまと騙されてしまった。

 しかし会話の橋渡し役の弟がおらず、思うように会話できず慌てる。

 落ち着け、落ち着くんだ。


 美月と2人きりか……。

 いずれはこういうチャンスもモノにしなければならないと思っていたし、これは好機と見るしかない。

 できることなら事前に知りたかったが。

 美月も……。


「す~~~~~は~~~~~す~~~~~は~~~~」


 なが~く、深呼吸している。


「OKだよ」


 何がOKだよかわいい。


 今日の美月の格好は白のシャツに茶の何て……なんだっけチノパンツというのか。

 再び出会った頃、夜に会った時に比べて地味な格好となっている。

 だけど美月によく似合っている。というより美人は何着ても似合うもんだ。

 女性の服装を褒めておく……。ここはポイントを稼いでおくか。


「じゃあ、中に入ろっか」

「朝宮」

「な、何?」

「その格好……」

「へ、変!? その……せーくんと一緒の予定だから気を抜いてて普段はもうちょっと」


「素材の味を活かした格好だと思う」

「はぁ」


 びっくりするくらい負抜けた声を出された。


「いや、聞かなかったことにしてくれ」

「ふふ……」


 美月の口から笑いの声が漏れ出す。

 ぐっ、これは何というか恥ずかしい。


「もう、無理して褒めなくていいよ」

「無理してなんか……いや、スマン……気の利いたことが言えなかった」

「小日向くんでも不得意なことあるんだね~。あ、それを言うなら小日向くんの格好も……」


「え? 変だろうか。ファンションセンスは無い方と自覚はしてるけど」

「素材の味を活かしてると思うよ」


 美月はからかうように背を向けた。

 戯けるような声に恥ずかしさで顔に熱が入る。してやられてしまった。


「小日向くんだから言うけど、私、着る服とかいつも悩んでるんだよ」

「悩み? よく似合ってると思うが……」

「私……身長が高い方だから女の子の隣に立つと目立つんだよね」


 今、通り過ぎる女性は基本、美月より小さい人が多い。確か160中盤くらいだったか。女性の平均で言えば高い方なのかもしれない。

 男であれば背が高いほど喜ぶもんだが、女性は高すぎても低すぎても気になるらしい。難しいな。


「鈴菜ちゃんと並ぶとその差に悲しくなるよ。小さい方が女の子らしくていいなって思うし」


 吉田鈴菜は150前後って自分で言ってな。あっちはあっちで小さいことに悩んでるらしい。

 俺は美月の横に並んだ。


「俺は朝宮ぐらいの身長が一番だと思うぞ」

「もう、気を使わなくてもいいよ」

「気を使ってないって。それに男女の恋人の身長差は15センチぐらい理想らしいし、ちょうどいいじゃないか」

「ふえっ?」

「俺と朝宮くらいの身長差が一番釣り合いが取れている」

「それって……私と小日向くんが……」


 ん? 俺何か今変なこと言わなかったか。

 横を見ると美月が顔を真っ赤にして俯いていた。

 言ったな……間違いなく言ったな、恋人の身長差って……。


「よし買い物だ! ネギ見るぞネギ!」

「ああ、もう!! そーいう言い方はずるい」


 美月とのふれ合いは始まったばかりだ。

 まだがっつり攻めるには早い。……ってか俺の胃が持たない。


「でも……直で言ってくれる方が嬉しいな」


 美月の小さな声がこぼれてくるが俺の耳には入らない。

 何と言ったか気になるけど……、今はこれでいい。


 美月と一緒に食料品コーナーを見てまわる。

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