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013 世界一かわいいよ

 ふぅ……。

 今日も良い練習ができた。

 俺自身のモチベーションが高くて指導にも熱が入ってしまうな。


「おい、寝てる暇はないぞ。さっさと立ち上がれ」

「いや無理でしょ」


 肩で息をしている悠宇が近づいてくる。

 体力がまだついていない1年達は運動場で寝転がっていた。


「30周の最後に全力疾走、その後に全力でノック。鬼のおかんの再来だったよ」

「これから夏が始まるんだ。今のうちに体力つけておかないと大変だぞ」


「おー、落ち着いたか」


 俺と悠宇は声のした方を向く。

 野球部のマネージャーの吉田鈴菜(よしだすずな)が嬉しそうにまわりを眺めていた。


「おらっ、ちゃんと水分補給しろー。でも汗で体を冷やすんじゃねぇぞ」


 運動場にどかっと持ち運びできる収納ボックスを置く。

 そこにはたくさんのコップとスポーツドリンクが納められていた。


「姐さん!」

「姉御!」

「姉さん結婚して!」


「かあー! 汗くせぇ! さっさと飲んで着替えろバカ共!」


 口は悪いが面倒見のいい吉田は部内でも慕われている。

 確か美月と同じ2年1組だったか。

 150ちょいくらいの身長なのに結構力持ちだ。男兄弟が多いんだったか。

 吉田がドリンクを注いだコップを俺と悠宇に手渡してくれる。


「ほらっ小日向、浅田も飲めよ」

「悪いな吉田」

「ありがと〜」


 スポーツドリンクといっても水に粉を溶かしたものだ。吉田特製のブレンドで費用のわりに効果は絶大らしい。


「小日向、今日ははりきってんじゃねぇか。なんかいいことでもあったのか?」

「ああ、盆と正月が同時に来たような嬉しさがあった」

「ええー。夏と冬の宿題が同時に来るのはやだなぁ」


 悠宇はいつも後ろ向きな発言をする。

 美月に手を振られた俺にできないことはない。

 もうちょっと練習したいところだが、他の部員の体力が限界だ。今日はこれで終わりだな。


「3年は主将と一緒に最後の調整お願いします。2年と1年は片付けに入れ!」

「ああ、小日向。ちょっといいか?」


 ◇◇◇


 吉田に連れられて校舎の方へ歩いて行く。

 ついでにもの運びまでさせられることになる。


「あんたもレギュラーなんだし、3年と一緒に練習すりゃいいのに」

「分かってはいるんだがな。しかし、俺がいないとすぐサボりやがる」

「野球部のおかんは厳しいな」


 吉田はくくっと微笑む。

 お互い世話好きということもあり、一緒に行動することは多い。まとめ係兼雑用係といったところか。

 俺が次期主将ほぼ確定ってことで話を通してくることも多い。


 吉田鈴菜は口は悪いが綺麗な顔をしており、学年の中でも人気が高い。

 ただ高校野球好きの結果、女子のソフトボール部よりもこっちを選ぶ変わり種の女の子だ。


「それで話ってなんだ?」

「野球部のマネージャーになりたいって子がいんだよ。ただかけ持ちだから週にそんなに来れねー」


 これから夏も始まるし、マネージャーが増えるのはありがたい。

 吉田も優秀なマネだが、やはり20人超える野球部の雑務を1人でこなすのはなかなか大変だ。

 1年や俺も手伝ってはいるが……やはりな。


「監督がいいなら問題ないだろ。今は人も足りてない……。けど俺に聞くってことは理由があるんだな?」

「察しが良くて助かるぜ。その子、あたしの友達なんだけど可愛すぎるんだよな」

「吉田もそれで苦労してたからな」


 男所帯の中のかわいい顔をしたマネージャー。今でこそ落ち着いたが、俺たちが1年の時はそこそこ大変だった。当時、3年の先輩から言い寄られたりしてたことがある。


「今は落ち着いたからいいけど」

「それでも時々告られてるんだろ。……。もし勘違いだったら悪いが」

「はん、問題ねーし、もう吹っ切ってるよ。それにあたしは150キロのタマを投げられる男がいいのさ」


「星斗なんてぴったりじゃないか」

「介護しなきゃいけない男はちょっとなー」


 分からんでもない。

 星斗はおそらく神月夜(かみつくよ)学園一の人気のある男だが、あのマイペース男を選ぶのはなかなか勇気のいることだ。

 お世話係で慣れている俺や吉田ですら手を焼いている。


「あんただって、最近は結構声かけられてるんだろ? クラスでも話題になってたぞ」

「んー。どうでもいいな」


 美月以外の女子に告白されたって、何にも響かない。

 付き合う気もないので部活一筋ということで避けている。

 そもそも俺への告白って、俺が名家、有栖院(ありすいん)屋敷に住んでいるということが噂になっているだけだ。

 ……別に御曹司なわけでもない。ただ住んでいる所が金持ちなだけだ。


「それで? 誰がマネージャーになりたいんだ」

「ああ、そこで待ってんぜ」


 ま、かわいい女の子が入ってくれるなら他の部員のモチベアップに繋がるだろう。

 色恋沙汰で揉めないように俺と吉田でカバーすればいい。


 そもそもどんなかわいい女の子が来たところで世界一かわいい美月に比べれば雲泥の差。

 俺の心が揺れ動くことなどありえな……。


 校庭のベンチで待っていた美少女に思わず息を飲んだ。


「小日向くん、こんばんは」

「この子がマネージャー志望の朝宮美月。あたしの親友なんだ」


 世界一かわいい子来たあああああああ!

本話を読んで頂きありがとうございます。


部活動のマネージャーって何か魅力を感じますね。妹、マネージャーには言葉の力を感じます。


この作品を少しでも面白いと感じて下さったお方、作者のモチベーションが上がってもっと頑張れるような気がしますので是非ブクマ、評価、感想等、応援を頂けると嬉しいです。


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