先祖からの贈り物 3、4
「レベル上げかぁ。いよいよ異世界って感じだな」
レベル上げなんてまるでゲームみたいだ。
じいちゃんと二人暮しのオレんちにはゲーム機なんて高価な玩具はなく、絶対オススメだから! と、友だちがゲーム機ごと貸してくれたドラゴンを倒しにいくRPGをやったくらい。
なんとか頑張ってクリアしたけど、あの世界はどうもピンとこなかった。
いきなり出てくる勇者だとか、モンスターやら魔法やら。
そもそもカタカナ名前が辛かった。人物なのか、技の名前なのか、魔法の種類なのか? 悩むオレについたあだ名はファンタジー音痴。
ちょっと魔法とモンスターの名前を間違えただけなのに。
オレの事を ‘文明に乗り遅れた旧人類’ と笑った奴! どうだ! 今のオレはものすごいファンタジーだろ! 恐れ入ったか! ハハハ!
ガサッ
「えっ」
目があった。
木の影から突如現れたウサギのようなものと、目があった!!
「ヤバい…」
アレはウサギじゃない!
だってアレには角がある!
「逃げなきゃ」
背中を見せたらやられる。
一歩下がると、ウサギがこちらに突進する様が見えた。
「うわっ!!」
とっさに手にとった石をウサギに投げつける。
石はウサギに当たり、その動きを止めさせた。
が、ウサギはますます怒り狂っている!
ヤバいヤバいヤバい!
どうしよう!?
「先生! 何かやっつけるの! アイツをやっつけるのを下さい!」
震える手で玉を取り出し、そう叫んだ。
ピッコーーン。
《投げるレベル1》を贈ります。
「投げる?? お、おりゃああああ!!!」
手元の石をウサギ目掛けてぶん投げた!
ドスッ!
1度目よりも格段に威力の上がった石礫にウサギの体がぐらつく。
確実に倒さねば殺られる!
もう1度石をぶん投げると、ようやくウサギはその場に倒れた。
「やったのか?」
恐る恐る近づくとシュワシュワとウサギの体が溶けて消え、代わりに1束の草が現れた。
「何だこれ?」
『薬草です』
「薬草…これってあれか? ゲームでモンスターを倒すと手に入るアイテム?」
『はい』
「そっか…」
ウサギのようなものを倒して、アイテムを手に入れた。
ここはそういう世界なんだ。
「先生、さっきのウサギなんて名前?」
『一角ウサギです』
「モンスター?」
『この世界では魔物と呼ばれています』
一角ウサギ。
名前を覚えておこうと思う。
「先生、魔物近くにまだいる?」
『はい』
「そうか、なら願うよ。危険を知らせる能力を下さい」
ピッコーーン。
《危険察知レベル1》を贈ります。
「よし!」
魔物避けの結界の魔道具は朝になったら消えていた。
あれがあれば良かったのだが、無いものは仕方ない。夜になればまた復活してくれるのを願うばかりだ。
魔物がいるかいないかをずっと先生に聞きながら進む訳にはいかないし、敵が現れる前に気付く能力は絶対必要だ!
臆病じゃないからな。
慎重なんだ。
うん、うん。