先祖からの贈り物 2
「何が必要か、それが問題だ」
オレの異世界転移の目的は、ばあちゃんの恩人を連れて行く事。
長い間守一族と同化していた彼は、今はオレの魂の中にいるらしい。
なら、オレはもう目的を果たしている事になる。
これからコイツをどうすればいいのかは、少し置いておいてもいいかも。
考えたところでわからないし。
異世界。
そもそもここはどういう場所なのか?
元いた世界と次元が違うだけで、たいした違いがないのなら必要なものもわかりやすいのだが。
必要なのは、情報。
情報が欲しいってお願いするか?
いやいや!
それだと先生と被るよな? ある程度わかったら十分だし。
オレは、情報屋になるわけじゃないからな。
「オレみたいな ‘人間’ が住んでいる街ってある?」
『あります』
「おー! なんて街?」
『アルサです』
「アルサ! ここからどのくらいで行ける? 歩いて行けるかな?」
『歩いて3日の距離です』
「3日!」
けっこう遠いな。
「アルサまで行く間に宿ってある?」
『ありません』
うげっ!
3日もあるのに、宿がないとかなんの罰ゲームだよ。
ん?
「先生、まさか ‘歩きっぱなし’ で3日じゃないよな? ちゃんと休憩込だよな?」
『それでしたら、1週間かかります』
ノオオオオオォーーーー!!!!!
そんな江戸時代の人じゃないんだから死んじゃうよ!!
「歩いて行くしかないよな?」
『走りますか? でしたら…』
終わった…。
どんだけ山奥に転生なんだよ!
ばあちゃん、酷えよ!
あんまりだ〜〜!
しくしく。
少し泣いてもいいだろう。
さて、いつまでも山奥で泣いていても仕方ない。
千里の道も一歩から! の精神で、前に進まねば。
「今、何時だ?」
このままなんの準備も無く暗くなったらヤバイだろ。
『現在14:30です』
「時間の感覚は元いた場所と同じ?」
『はい』
1日24時間ね。
「日暮れは? 何時くらいに暗くなる?」
『今の時期は、18時34分です』
微妙だ。何も準備がない状態でこの場を離れるのは危険だろう。
「よし、決めた! キャンプとか、サバイバルとか何かそういうものをくれ!」
ピッコーーン。
《野営レベル1》を贈ります。
「おー!」
パチパチ。
なんかすごいのきた。思わず拍手しちゃったよ。
「野営、ね…」
ドサドサ。
「おー! すげぇ! 魔法かよ! これが寝袋だろ? で、こっちの袋は…おっ! パン入ってるじゃん! 食料袋だな。よしよし。ん? 何だ、これ?」
形は、三角錐。色は、銀色。触ると少しひんやりする。
「先生、これ何?」
『結界の魔道具です。半径2メートルの結界が発動します。これにより、悪意のある者や魔物による襲撃を防ぎます。使い方は、手のひらに乗せ魔力を流して下さい』
ん?
聞き逃せない言葉が出てきたぞ。