旨辛麺料理
ブクマありがとうございます!
「隣が食堂って言ってたな」
宿の隣にある賑やかな店が食堂だろう。
しかし、それよりも!
「はあーーっ」
いい匂い!
なんだかわからんが、鼻孔をくすぐるたまらん匂いがする!
「ウリ! これ食べよう! 何か知らんけど美味そうだ!」
「これって?」
「これ!」
背の高いオヤジが鍋で何か麺を炒めている。どんな麺かは分からないがとにかく美味そうだ!
「おう、食ってくか? 出来立てだぞ」
「おっちゃん、いくら?」
屋台の雰囲気と、ひと仕事終わった開放感でオレの口調もいつも通りになっている。
「1杯10リレラだ」
「ウリもこれでいいか?」
「うん」
「じゃあ2杯ちょうだい。あの、コイツにもあげたいんだけどいい?」
「そりゃ金さえ払ってくれるなら何の文句もねぇよ」
オヤジさんは変な事聞くなぁと、不思議顔だ。
「それよりボウズ、辛いのは平気か? これはボウズには、ちぃーっと辛いかもしれん」
オレは辛いのわりと平気だけどウリはどうなんだろう?
犬は香辛料がキツイのだめだって聞いたことがある。
「オレは平気だけど、ウリはどうだ?」
「俺は何でも食べるよ」
いつかと同じ答えが返ってきた。
まぁ、いいか。でも飲み物も欲しいな。
「何か飲むものある?」
「コイツには、エールがぴったりだ」
「エールって酒?」
「おう」
あっちでは未成年だったオレは、酒を飲んだことが無い。成人したら、酒の呑み方を教えたるわっ! と、じいちゃんはぐい呑み片手に酔っ払うとよく言ってたけ…。
酒は止めておこう。
「酒じゃないのは無いの?」
「水だな。水は1杯1リレラ」
「じゃあ水を2杯」
「あいよ!」
オヤジは、出来立てを山盛りで2杯くれた。お礼を言って、店の横に置いてある長椅子に座る。椅子の上に皿を置いて、水のコップを受け取ってから気付く。
「おっちゃん、水1つは皿に入れたいんだけどいいかな?」
「おっ? ああ、そいつ用か。悪かったな、ほら、こっちの皿に入れろ」
「ありがとう」
ウリはコップでは水を飲めない。あっちの世界では、ペット入店禁止とか言われるけどこの世界ではウリがいる事を普通の事として扱ってくれる。ありがたい。
「ウリ、ここでいいか?」
長椅子の上にウリの分を置く。高さは大丈夫かな?
「ボウズ、それじゃ食いにくいだろ。下に置いてやりな」
「えっ、いいの? 汚れるけど」
「そんなん洗えばいいだろ。おっ、いらっしゃい!」
次のお客さんがやって来た。麺を1つ買うと、隣の長椅子に座り普通に食べ出した。オレたちを気にする素振りもない。
「ウリ〜」
「ん?」
「美味いな!」
「そうだねぇ」
麺はつるっとしていて食感がいい。なんの肉かわからない肉と、緑のキャベツみたいな葉っぱ。焼きそばみたいだが、ソース味ではないのが妙な感じ。ベースは塩かな? それにこの丸くて赤いのがめちゃめちゃ辛い!
「ウリ、この赤いのめちゃめちゃ辛いぞ!」
「本当だ、ちょっと辛いね」
「ちょっとかぁ? ウリ、わりと辛いの平気なんだな」
「瑛太より長生きしてるからね」
「それ、関係あるか?」
「あるでしょ」
辛いけど、美味い。
食べ続けるうちに辛さにはまる感じ。
「あっ…」
「どうかした?」
「パン買ってない。もう店しまってるかな?」
「明日、焼き立てを買ったら? 他にも美味しそうなの売ってるよ」
「そうだな! よし、これ食っちゃったら他の見に行くか!」
美味そうな匂いは広場いっぱいに漂っている。
何を食べようか、あれだこれだと相談しながら辛い麺を食べ終えた。
うん、辛くて美味かった!