宿屋はこんな感じ
来た道を戻り広場を突っ切り、反対側へ。
広場に面した建物が宿屋だった。看板は丸い輪っか? なんだろう?
「すみませーん」
中に入ってみると、正面にカウンター。宿屋の人はいないようだ。
ここで合ってるよな?
「すみませーーん!!」
もっと大きな声で呼んでみた。
「はーーい、ちょっと待って下さいねー」
奥から声が聞こえ、茶色い髪を後ろで1つに束ねた女の人が小走りにやって来た。
「ごめんなさいね、お待たせしちゃって。宿泊のお客さんかしら?」
「はい。部屋は空いてますか?」
「ええ。一泊朝食付きで、100リレラよ。どうかしら?」
「お願いします! あっ、コイツも一緒なんですけど…」
「あら? 従魔かしら? 珍しいわね。部屋に泊めるなら、あと50リレラ。その代わり、従魔の分の朝食も付けるわよ」
「じゃあそれでお願いします。取り敢えず一泊で」
ウリと二人分で150リレラを渡す。
まだまだ金に余裕はあるけど、早いうちになんとかしないとな。
「はい、確かに。じゃあ、これが鍵ね。そこの階段を上って2階の一番奥、ドアにウサギが付いている部屋よ」
「はい」
「朝食は、そこの食堂に来てね。あまり遅い時間だとやってないからね。何か質問はあるかしら?」
「夕飯は?」
「うちはやってないのよ。隣の食堂か、広場に屋台が出ているからそこで何か買って来ればいいわ。買ってきたものは部屋で食べてもいいし、そこのテーブルを使ってもいいわよ」
「ありがとう」
「出かける時は、鍵をフロントに預けて行ってね。ではごゆっくり」
このまま食事に出かけてもいいが、一度部屋を見てみよう。階段を上って一番奥って言ってたな。
ト、ト、ト。
階段を上る。
えっと…ウサギ、ウサギ…。
並ぶドアには1つずつ違う動物の絵が描いてあって中々面白い。
ニワトリ、リス、キツネ。
向こうと同じ様な動物の絵だ。
「あった。ウサギ! この部屋だな」
鍵穴に鍵を差し込む。この鍵の形は初めてみるが、よく知っている形。鍵と聞いてイメージするあの形だ。先端が丸くなっていて、円柱形の棒に突起が付いている、ゲームや漫画なんかで見るあの鍵だ。
カチャン。
手応えを感じて扉が開く。
「おっ! けっこう広いじゃん」
先ず目に入ったのは1台のベット。大きさからいってシングルだろう。いや、少し大きいかな? ベットなんて今までの人生で数えるくらいしか寝た事ないからよく分からん。オレは布団派だ!
小さめの机と椅子。引き出しが3つ付いたタンス。
うん、十分、十分。
「ウリは、床で寝てもらうしかないかな」
「ん? 別にどうでもいいよ。雨風が防げればそれで」
「悪いな。街で何かクッション的な物があったら買うか。そうだ! 街といえば夕飯どうする?」
「何でもいいよ」
「何でもいいが一番困るんだって」
「そう言われても、何があるかわからないしねぇ」
「そりゃそうだな。んじゃ、何があるか見に行こうぜ。んで、美味そうな物があったらそれを食うって事で」
「了解」
夕飯を食べに部屋を出る。
あっ、結局部屋に入っただけじゃん!
ベッドの硬さを確かめるくらいすればよかったよ。
やれやれ。