6日目の夜
「ウリ、ウリ! 見ろよ、道だぞ!」
森を抜けて少しすると踏み固められた道に出た。道といっても日本と同じアスファルトで舗装されたしっかりとした道でなく、人や何か重いもので踏み固められた道のようだ。この世界に車はあるのかな?
「先生、この道ってアルサに行く道であってる?」
『はい。このまま南下して行くとアルサの街に到着します』
「ありがとう。ウリ、このまま南下して行くとアルサに着くってさ」
「そう。ねぇ、街ってどんな感じなの?」
「ウリは街に行った事ねぇの?」
「ないねぇ。魔物が街に何しに行くのよ」
「えっ!? ウリって魔物なのか?」
驚く俺にウリは今まで気づいてなかったの? と、逆に驚いた顔をした。
いや、だってさ、オマエ内緒とか言って教えてくれなかっただろ!
「そうだっけ? じゃあ内緒で」
「おいっ!」
「まぁいいじゃない。大した問題じゃないでしょ」
「そうかぁ? 魔物ってかなりヤバイと思うけど」
「そりゃあねぇ、頭の悪い魔物ならそうだろうけど。俺は違うよ」
「その自信は何処からくるわけ?」
「そりゃ俺は瑛太の友だちだからね」
フフンと、鼻で笑うウリ。まぁ、ウリは良い奴だしちゃんと説明すれば大丈夫だろう。問題は起きた時に悩めばいい。
「そろそろ日も暮れるな。今夜はこの辺で野営するか」
こんな見通しの良い場所で野営するのは初めてで何だか落ち着かないが仕方ない。おっ、この岩陰がいいかな。
まずは結界の魔道具を作動させて…。
ん?
「先生、結界の魔道具って魔物なんかを弾くんだろ? ウリは大丈夫か?」
『使用者登録をして頂ければ大丈夫です。結界の魔道具に触れて下さい』
「ウリ、ちょっとこれ触って」
「なに?」
「これさ、結界の魔道具なんだけどウリを登録しておきたいんだよ。夜魔物が襲ってきたら心配だし」
ウリの手が魔道具に触れると、初めて使った時と同じく音が鳴り仄かに光った。
「これでよし。さ、今夜のおかずは何かね。おっ、シチュールー入ってるじゃん。ウリ〜 シチュー食える?」
「俺は何でも食べるよ」
「そうか。じゃあちょっと待ってろよ」
毎回現れる食料袋の中は、パンと水と肉(ウィンナーが多い)と汁物を作れそうな材料が入っている。それはポトフであったり、豚汁であったりしたが、今回はシチューが作れそうだ。牛乳がないから多少あっさりするだろうけど、ウリは好きかな?
「そういえば、街がどんな場所かって話だっけな。街はさ、人がいっぱいいてさ、美味いものがいっぱいあるぞ」
「ふーん」
「せっかくだからさ、その街の名物とか美味いもの色々食べてみような!」
「このシチューも美味しいよ」
「おう。ありがとな! やっぱ二人で食べる方が断然美味いな! ウリがいてくれてホント、嬉しいよ」
「どういたしまして」
ウリはすましてシチューを食べている。
「そうだ! 街で何か食べるには金が必要でさ、勝手に何か食べたら駄目だからな」
そんな事しないよ。俺を低級の魔物と一緒にしないでくれると、ウリはフンと鼻を鳴らす。
「これがさ、リレラって金。街では基本的に何をするにも金が必要になるってわけ」
ドロップ品の半銀貨と銅貨を並べてみる。
「今はこれだけしかないけどな、薬草も売ってなんとか金を稼がなきゃな」
「ふーん。こんなのがなきゃ何にも出来ないなんて街は不便だねぇ」
「まぁな。こっちの世界で生きていく為にどんだけ金が必要かわかんねぇけどさ、ウリと2人生きていけるだけの金は稼がないとな」
明後日にはアルサの街に着く。
初めての異世界の街。
どんな街でどんな人がいるのか。
寂しくて泣き言言ってた朝とは正反対のワクワクした気持ちで、オレは眠りに付いた。