試してみよう、そうしよう
「あー…」
やっちまったよ…。オレのバカ。無意識に手慰みする癖をなんとかしなくては! いや、もう遅いんだけど! あー、オレのバカバカ。最後の1個なのに!
「あらら。最後の願い使っちゃった? どんな願い?」
「ウリ〜」
「はいはい、泣かないの。で? 何かスキルもらったの?」
「うん。 ‘ランダムドロップ’ ってスキル。先生ー、このスキルって何?」
『ドロップするアイテムが、ランダムになります』
言葉通りの意味だった!!
なんて安直な…。そりゃ薬草ばっかりでつまらないって言ったよ? でもさ、そんな安直に…。最終確認とかあってもいいんじゃね? ほら、使いますけどよろしいですか? 的な何かがさ、あってもいいと思う!
「なんか、ドロップするアイテムがランダムになるスキルらしい…」
なるほどと、ウリは頷いているけどこのスキル微妙なんじゃね? ようは何が出るかわからないガチャ的なものになった事だよな。
「ま、楽しそうでいいんじゃない。早速試してみなよ」
魔物出ないかねぇなんて言うウリは相変わらず能天気だ。
オレも試してみたいって思ってるから、ウリのことどうこう言えないけど。
そんなこんなで30分。
ようやく次の魔物、スライムが現れた。
「よっ!」
スライムなら安心して倒せるレベルになったオレ。スキルってホント、ありがたい。ばあちゃん、じいちゃん、ご先祖さまありがとう。
シュワシュワと魔物が消えていく。
ここからだ。ここから何が残るのか。
チャリチャリ。
金属の擦れる音。聞き覚えのある小銭の音に思わず駆け寄った。
「何だ、これ?」
拾い上げたのは、8枚の硬貨。くすんだ銀色っぽい硬貨3枚と、十円玉みたいな色した硬貨5枚。
「先生、これがリレラ?」
確かこの世界の硬貨はリレラと言っていた。
『はい。350リレラです』
「もう少し詳しくお願い」
『銀貨3枚と銅貨5枚です。銀貨は100リレラの価値があり、銅貨は10リレラの価値があります』
なるほど。確か1リレラは10円だったから350リレラは3500円だよな。薬草1個3500円はしないと思うからこれは儲かった?
チャリチャリと、手の中で硬貨を転がしながら歩く。
もっと色々試してみたい。魔物いないかな?
ん?
この考え方ヤバイかも。
戦闘民族じゃないんだから、楽しむ為に魔物を倒してはいけないよな。
うん、うん。
「瑛太、そろそろ森を抜けるよ」
「えっ」
ウリにそう言われて周囲を注意深く見れば、辺りの木の間隔がまばらになった様に思える。
そのままザクザクと歩く事5分。ようやく開けた場所に出た。
「やったーーーーーー!!!」
ようやく、ようやく森を抜け出した!!
前方に遮るものが何もない!!
「ウリ、ウリ! すげぇな! 何もない!」
たった1日森を歩いただけのウリにはこの感動が伝わらないようだ。歩けど歩けど森の中のあの閉塞感。永遠に森が続くかのような恐怖。それが今、開放されたのだ。オレは自由だ! I'm free!!!
ハハハ!!
浮かれるあまり妙なテンションになったオレを、ウリは若干引き気味に見ている。
いいじゃないか、少しぐらい浮かれたって!
「さあ行くぞ! アルサの街に向かってレッツゴー!」