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焦げたパン

 コイツがばあちゃんの友だちか…。

 思ってたのとかなり違うな。

 そもそも人間じゃないし。

 うん。でも、イノシシでもないな。普通のイノシシがどれくらいか知らないけど、コイツかなり大きいよな? 大型犬より一回り大きいくらいか? いや、ライオンくらい? でも、全体的に丸っとしているからそれほど大きい感じじゃないなぁ。


「何か焦げっぽくない?」

「えっ? ヤベッ、パン、パン!」


 慌ててパンを火から下ろす。

 セーフ。少し焦げ目ついたくらいだ。


「なぁ、パン食うか?」

「いいの?」

「少し焦げたけどな」

「いやぁ、ありがたいな。物を食べるなんて何百年ぶりだろう」

「何百年って今までどうしてたんだ? 守一族と一緒にいたんだよな?」


 ばあちゃんの話じゃ、じいちゃんについてたみたいだけどオレは見たことない。

 そもそもオレに霊感はないし、じいちゃんだってなかったと思う。


「うん。でも、ずっと寝てたからねぇ。一二(ひふ)から聞いてない?」

「そんな詳しくは」

「そう? 一二はね、あの時消滅する筈だった俺を助けてくれたんだよ」

「それは、ばあちゃんから聞いたけど…」

「あの世界にとって異物でしかない俺を助ける為に、一二は自分の魔力、あの世界じゃ霊力って言ったか? まぁいい。とにかくその霊力をすべて使い切ったんだ。そんな事すればどうなるかなんてわかってただろうにね」

「どうなった?」

「霊力が失くなったんだ。彼女だけじゃなく、その子どもたちもね」

「ばあちゃんだけの霊力じゃ足りなかったって」

「うん。守一族は、強大な力であやかしを封印する一族だったらしいよ。でも、俺を助けたばっかりに」


 そうか…。だからじいちゃんも霊感なかったんだな。全部コイツを助ける為に使ったんだ。でもさ、


「なぁ、そんな顔すんなよ。ばあちゃんは後悔なんかしてないんだからさ」


 コイツにこんな顔させたくなくてばあちゃんは終わった事だと詳しい話をしなかったんじゃないかな。あやかしを封印する一族が霊力を失くす事がどれだけ大変なことか、ばあちゃんにわからなかったはずがない。それでもばあちゃんはコイツを助ける事を選んだんだ。


「それにさ、じいちゃん達ご先祖さまも後悔なんかしなかったはずだぜ。ばあちゃんに頼まれたとはいえ、自分で選んだんだからな」


 オレもそうだったからわかる。ばあちゃんから聞いた使命を果たすと決めたのは自分だ。そこに後悔なんてあろうはずがない。


「…そうか、そうだね。彼らならそう言うだろうね」

 

 ずっと寝てたって言ってたけど、何か感じるものがあったのだろう。ご先祖さまたちを思っているんだろう表情が柔らかい。


「あーーーーーーーーーー!!!!」

「何、何? 急にどうしたの?」

「オレさ、ばあちゃんからアンタをこっちの世界に連れて行ってくれって頼まれたんだけど、もう用事終わっちゃったじゃん! もっと色々かかると思ってたのに! これから何すればいいわけ??」


 オレの冒険が始まったと思ったら終わったよ! こんなのって有りなわけ?


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