08 コンテニュー
朦朧とする意識の中で頭の中から声が聞こえる。
「まったく、雛が弱過ぎるわ。」
私も少しは歯が立つ妹だと思ってたんだけどね。
まぁ、コンテニューぐらい私が何度もさせてあげるから私が殺す時まで死なないようにね。
「雛凪…。」
雛凪の記憶が流れ込んで来るのだ。
どうやら治癒魔法とは根本的に違う魔法らしい。
私は死んだはずだった。
私の心臓の鼓動が再び動き始めた。
「どうして…。」
「怪我が勝手に治ってる…!?」
その現象はまるで時間を巻き戻したようなものだった。
そんな異常な光景を口を無防備に開けて見ていた。
回復ではなく再生。
ビデオの巻き戻しのような光景だ。
「いたた…。」
いつの間に意識を失っていたのか分からない。
目が覚めたら最初に痛みを感じた。
そのおかげで何が起きたのか分かった。
「一体どうなったの…?」
私は痛みがある所を撫でると痛みが引いた。
「雛先輩は一体何者なんですか?」
私は言葉が詰まった。
「魔女と同等かそれ以上の回復力…。」
あの魔法を受けたはずが、欠損部分も治ってしまった。
「貴女も魔女だって言うの?」
こんなのは何かの間違いだと思いたい。
「それは違うっ!!」
「魔女は膨大な魔力を持つため、どんな願いも叶えると言われてます。」
私は唇を噛み締める。
唇の痛みの方がマシだ。
「それに比べたら雛先輩の魔力は元々無いのに等しいです!」
「ひどっ!?」
確かにそんなに無いけどさ。
言い方があると思う。
「もしかしたら複製魔法がそれに類似する何らかの力を持っているのかもしれません。」
「そうね。魔女なんて言ってごめん。」
「き、きき気にしてないから良いよっ!!」
でも気になる事はある。
雛凪がどうして私を助けたのか。
それに魔女は憎むべき敵じゃないかもしれない。
「雛先輩、生徒会長に立候補して下さい。」
雪に生徒会の仕事をして欲しいと頼まれた事は度々あった。
それに雪が亡き今は私がなるしかない。
「そうだね。」
その立場は雪が居るべきだった場所だ。
「雛先輩は1人で悩み過ぎなんです。」
「悩みがあったら友達に相談するのが当たり前なんじゃないですか?」
「私…今まで友達と呼べる人が居なかったから…。」
「ぼっちだったんですね…。でも、今は違います。」
「私が居ますから。」
私も刹那ちゃんの事を見習わないと行けないね。
雪が1番だけど!
「あれ、私達じゃないの?」
「真琴さんも友達だったんですか?」
「ありがと…。」
ようやく長かったような戦いが終わり、私達は笑うことが出来た。
こうして私達の非日常は幕を閉じた。
「ええっと…。」
「これをここに置けば良いだよね?」
私は棚上に段ボールを置いていく。
「それにしても写真ばっか撮ってたんですね。」
「まさか勝手に撮られてるとは思いませんでしたよ!」
最近は言葉遣いを緩めたように感じている。
まぁ、私が敬語は硬いって言ったのも少しは影響あるのだろう。
「私もだよっー!!」
「私も寝顔を撮られてるとは、あの時は気付かなかったよっ!!」
恐らく雪の仕業だ。
「え、雛先輩が撮った物じゃないんですか?」
ここで何か違和感を感じた。
「私はカメラなんて持ってないよ?」
「絶対に雪が撮った写真だってっ!!」
私の寝顔とかの写真も中には何枚も含まれている。
「雪さんって誰ですか?」
学校全体から雪の事を忘れられていた。
「もしかしたら、記憶操作の類いかもしれないわね。」
私は真琴に聞いてみた。
困ったら最近は頼りにしてる。
「真琴も雪の事は覚えてないの?」
「えぇ…。そうなるわね。」
「ただ雛が覚えてるというのもイレギュラーよ。」
確かに皆が忘れたのに覚えてるのはおかしい。
「私は…。」
雛凪が私の傷の治る速さに絡んでるなんて言える訳が無かった。
「自分でも複製魔法の制御が出来てないからその影響のせいね。」
「万が一に備える策が必要ね。」
確かにそうだ。
「犯人を捕まえれば良いんじゃ…。」
「誰か分からないのに?」
「うっ…。確かに…。」
真琴が魔法陣を展開していく。
「何の魔法?」
「雛まで忘れたら困るでしょ?」
「意識干渉の魔法よ。雪の記憶が消えた時に発動するようにしたわ。」
「記憶操作の魔法ですか?」
刹那ちゃんにも話す事にした。
「もし存在するならば、それを扱う魔法使いを殺す事も考えた方が良いかもしれません。」
「学校の生徒がやってたとしても殺すの?」
「それだけの危険があるという事です。」
「記憶操作なんて使われたら勝ち目がないよ…。」
他人を洗脳する事も全ての記憶を消去してしまう事も可能かもしれない。