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04 旧生徒会その3

「当たり前です。」

雪は即答する。

「それが敵でも?」

その言葉に私は唾を飲み込んだ。

「敵?」

敵さえも助けるなんて誰もしない。

「……えぇ、喜んで助けますよ。」

雪は少し遅れてから言った。

「すぐに答えれていないじゃないか。」

虹葉は小さく笑っている。


「……。」

当たり前だ。

敵までも助けようなんて誰も思わない。

もし居るなら馬鹿だ。


「僕なら、こう言うよ。」

「勝手にくたばれ。」

恐らく言っている事は正しい。

昔の私はアイツを助けようとしなかった。

「それは違います。皆、同じ命を持った人間なんです。」

「同じ人間だからこそ、助け合いをしていくんです。いつか…」

「それでも思考が違う者同士での話し合いは無意味だ。」


確かに最初は無意味かもしれない。

本当に何度話し合いしても無駄なのかな…。


「僕達の組織は魔法使い以外の全ての人間を救うために作られた。」

「それがAinsel。」

「Ainselの活動は魔女と魔獣の発生を防止する事。」


「どういう事ですか!?」

話が見えない。

「魔法使いが過度の魔法行使すると、」

「魔獣化もしくは魔女化する。」

聞いた事がない。

「魔法使いが化物になる。そんな残酷な世界を変える。」

「まずは魔女が存在するか確かめるために封印を解く。」


「固有魔法のデメリットは様々な能力によって違うはずです。」

まるで何かに怯えるように、

その声は震えていた。

「それとは別のモノだよ。」

「魔法そのものを使うと化物に変わるって事さ。」

「そんな話、聞いた事ありませんっ!!」


「だって、上の連中が隠してるから当然。」

「魔法使いは化物にならなきゃいけないって事なの?」

「確かに強大な魔力が学校に存在します。」

「学校に張ってある結界の魔力じゃないの?」

魔法使いを敵対している人間が少なからず居る。

それは魔法が使えない一般人だ。

そういった人達のテロを防ぐためにも防御結界が張られているのだ。


「探知系の魔法か。」

「で、どんな風に身を滅ぼすんですか?虹葉ちゃん?」

敵にちゃん付けする雪は怖かった。

「魔法は心の強さに比例するのは知ってるよね?」

当の本人は溜め息を吐きながら返答する。


「心から憎しみしか生まれなくなったらどうなる?」

「魔力が無尽蔵に放出されるって事?」

「違う、一時的に膨大な魔力が体内でコントロールを失う。それも憎しみだけじゃないし、」

「まるで一種の爆弾そのものだ。」

「身体の方が耐えれなくなる事もあるはずです。」


「魔法を使い過ぎれば脳が故障する。」

「本来、人間の身体に魔力なんて必要ないものだから故障するのも当たり前だよ。」

魔力が必要ないもの?

人間は元々魔法が使えない?

「それが本当だと思う理由は…。」

「それこそが魔獣だよ。」

「種明かしは済んだし、死になよ。」


空間が歪み、ヒトのような形をしたモノが見えた。

これと正面から対峙してしまったら、

私は自分を見失うかもしれない…。

そんな事が目で分かるぐらい異常な光景だった。

「確かに人はいつか死ぬけど、それを早めるのは間違ってると思う。」

誰だって死ぬのは平等だ。

「自分の未来を知って、まだふざけた事が言えるんだったら黙らせるだけ。」

空間に亀裂が入っていく。

震える身体を押さえ付けながら、私は自分自身のために炎を具現化させる。


「さっきの炎じゃ効かないよ。」

「……?息苦しいな…。」

気付かれた…!?

「さっきのやり方では勝てないでしょうね。」

「精霊じゃなくて、魔法使い自身を狙うのは良いセンスだった。」

「けど、もう遅い。」

何だか、身体が重い…。

「雛だっけ?悪いけど死んでもらうわ。私達の為にも…。」

意識が遠退いていく感覚が私を襲った。

やっぱり敵だったんだ。

「この精霊の槍の一撃で天国に行ける。」

「まだ死ぬわけにはいかないんだ…。」

「完全に意識を奪ったつもりだったんだけど…」

相手が槍なら自分も槍で相手すれば良い。

「それに加えて…その槍は何?」

「複製魔法。私の切り札だよ。」

「でも、それ普通の槍にしか見えない所を見ると完全に複製出来る訳じゃなさそうね。」

「その通りだよ。複製しても本物に劣るぐらいちっぽけな物だけど…!!」

「そんな槍で僕に勝てるとでも?」

私の作った槍を簡単に破壊する。

「もう一度…。」

失敗するのは、ただ自分が未熟者だから。

でも失敗しても繰り返せば、きっと…。

成功する。


「……。」


また同じような槍を複製した。

それは敗北を意味していた。

「また失敗の様だし、一瞬で殺してあげる。」

私に向けられた槍は真っ直ぐ身体を貫通した。

もう心臓も潰れてしまっただろう。

視界が狭くなっていくのが分かる。

雪が慌てて私に近寄って何かを言ってるようだった。

「雛ちゃん、もう一度魔法使って下さいっ!!」

人が死にかけてるのに何言ってるんだよ…。

きっと、複製魔法の事を言っているんだろう。


複製魔法?

でも、また失敗するだけだ。


「何故だ?心臓を潰されたのに動けるんだっ!?」

「複製魔法か。まさか、成功した?」

「いいえ、成功なんてしてませんよ。ただ…」

「形の上だけなら複製出来ていたはずです。」

「…ッッ!!」


まだ痛みが残っている。

完全に治った訳じゃないし、きっと虹葉には勝てないだろう。

けど、一撃だけは喰らわせてみせる。

「煉獄の一撃!!」


黒い炎が手の平から弾けて、虹葉に向かって飛んでいったはずだった。

弾けた炎を槍で貫かれたのだ。

「どんな物も貫く槍だよ。」


その瞬間に貫かれた炎の破片が虹葉の身体をすり抜けた。

「そろそろ下準備が出来たみたいだから、遠くで観察しておくよ。」


攻撃は当たったはずだった。

でもすり抜けた。

「結局、敵か味方どっちなの?」

「…敵よ。ただ迷える子羊に救いの手を差し伸べてるだけよ。」

「それが命のやり取りでも?」


少女はそれに小さく頷いた。

「なんで、Ainselなんて組織に入ったの?」

「皆を救う為に作られたのがAinselだからよ。」

「人を簡単に殺そうとしたのにっ!?」

「最初は違ったのよ。」

「だったら、一緒に生徒会で仕事しようよっ!!」

「なんでそうなるのよ?裏切られたのに。」

信じたい。

ここで疑ったままだと前に進めない。

「別に真琴の事は嫌いじゃないよ!」

「む、勘違いしないでよね?別に味方になった覚えなんかないからっ!!」

そっぽ向いて赤くなる真琴。

「たわしっ!!少しは素直になってよっ!!」

「そこは、たわしじゃないですっ!!」

「雪と刹那は先に帰って貰えるかしら?」

雪は刹那に引き摺られるように帰って行った。

「ふぇ?…分かりました。」

「せっつんにも伝えておきますね。」


「で、二人になれたわね。」

「……もしかして、き、ききききき…キスとかするの?」

「何を勘違いしてるのよっ!!」

「別に真琴になら……されても良いよ?」

「もうツッコミ疲れたわよ......。」

私も色々疲れたよ。

「霧雨って苗字。」

「複製魔法と何か関わりがあるんでしょ?」

「複製魔法は霧雨家の遺伝系統の魔法だよ。」

「敵の技を知り、敵を討つ魔法と言われてるんだ。」

「相手の技を知らなければ、使う事すら出来ないし、でも何故か弱体化しちゃうんだ。」

そう複製魔法自体は正直強いはずだ。


「君が弱いのは、その力に頼りきっているから。だと私は思うわ。」

「魔法は使う人の心の強さに左右されやすい。」

「勝手に君が自分自身が弱い事に理由を付けて、その魔法に頼ってしまってると私は思うわ。」

「自分自身に誇りを持ちなさい!!良いわね?」

「負けた私が……惨めじゃない。」

「勝ってないよ。」

「ただ見逃してくれただけ。それだけなんだ。」

「それでも勝ち負けがあるとしたら、真琴のおかげで勝てたんだと思う。」

「そっか。」

「……次は私から聞きたい事がある。」

「精霊使いが何で精霊を探してるの?」

「本当に探してたのは……」

「精霊じゃないのよ。」

「精霊じゃないの…?」


「魔女が存在すると言ったらどうする?」

「魔女って魔法で大罪を犯した魔法使いでしょ?」

「確かに罪人も魔女と呼ばれるわね。」

「魔法使いの成れの果て。私達はそう呼んでいたわ。」

魔力を体内溜めてる存在かぁ…。

「罪が無いのに魔女扱いされるの?」

「魔女は悪魔と契約して魔力を得たとされている。」

「魔女は人間を捨て、無限の魔力で世界を滅ぼすわ。憎しみの限りを尽くしてね。」

「魔女は死なない。どんなに傷を負っても再生するわ。」

「魔女と魔獣の違いなんて、ほとんど無いに等しいわね。」

「ただ知性があるかないかだけよ。」

「あとさ…そろそろ限界ぽっい。」


私の身体から赤い液体が地面へと落ちていた。

「ごめんごめん、忘れてた。あまりにも何事も無かった様に話してたから。」

「所詮は偽物の心臓かぁ…。」

「偽物じゃ駄目なの……?」


まるで最初からいたようにそれはいた。

「……何なのよ、アイツは…?」

「もしかして、あれが魔女!?」

「あれ、本当に人間なの?元が人間なんて到底思えないよ。」


それだけ異様な姿だった。


「伏せなさいっ!!」

その直後、視界が真っ白になった。

視界に色が戻ると旧校舎が半分消し飛んでいた。

「こんな化物を探してたなんて…。」


唇を噛み切るぐらい力が入ってるように見えた。

「私が時間を稼ぐから、学校に避難勧告…いや強い魔法使いを呼んで来て欲しい。」

「もう身体はボロボロよ。そんな身体じゃ…戦うのも厳しいわよっ!!」

「死ぬ為に戦ってる訳じゃないし、」

「それに倒しちゃっても良いんだよね?」

「10分ちょうだい。」

「10分も経たずに倒しちゃっても知らないからねっ!!」

正直キツい。


10分か…。

「ハァハァ…。」

「動きは見えない。それに広範囲の魔法。」

「遠距離型の魔法しか持ってない…。」

「そういう訳でも無さそうだね。」

「だったら当たって砕けるのみ!!」


私はゆっくりと杖を取り出す。

杖が揺れると私の身体ごと揺れていく。


まだ魔法も使ってないのに。

揺れてるのは杖じゃなくて、私だった。


震えてる?当たり前じゃん!!

だって死ぬかもしれないんだよ?



「死んでたまるかあああああああ!!」

気付いたら走り出していた。

その先にある段差に転びかける。

それを杖で態勢を立て直す。


「まだだっ…!!」

今思えば、雪と出会うまでは死んでいたのかもしれない。


一歩ずつ死へと近付いている。

それでも化物の前に立てたのは雪のおかげなんだ。


「貴女が魔女なの?」

返事は無かった。

あるのは威圧感だけだ。


「とりあえず燃えろっ!!」

煉獄の炎を杖で具現化させる。

それを私は化物に放った。


「何で…効いてないんだよ。」

火傷どころか傷一つ付いて無かった。

それを恐る恐る確認すると、魔女は笑っているのだ。

笑う魔女の足元には魔法陣が血で描かれていた。

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