11 悪魔
私は1戦は勝利する事が出来た。
ただ失敗した事が一つだけある。
「むむ…。」
手札を見せ過ぎたのだ。
月蝕は切り札のような魔法だ。
これより強い魔法は私は持っていない。
「無刀無象を複製出来たのは良かったのかな?」
剣のある一定の範囲の魔法を無効化する魔法だった。
確かに強力ではあるが、剣が地面から抜かれると効力は無くなる。
「んがー!!強いけど微妙な魔法じゃんか!!」
それに気づかなかった私もいけないのだけども。
「でも、あれは使わざるを得なかったよね。」
私はまだ戦える。
「複製魔法があれば手札が増えるようなもんだね。」
ただし複製した魔法は劣化するけど!!
「どうしたら、剣作成する魔法が木の枝を生産する魔法になるの…?」
ここまで来たら笑えてくる。
あと3戦か…。
「…よし。木の枝で勝とう!」
「アホですね、雛先輩。」
刹那だった。
「いや、しょうがないじゃん!」
無刀無象も完全に魔法を無効化出来ないものだ。
出来ても魔法の妨害程度だろう。
「なんで最初から木の枝頼みなんですか!?」
「炎無効化されたらほとんど何も出来ないもん!!」
月蝕は魔力を吸収する。
でもすぐに吸収出来るわけじゃないし、術者が棒立ちなのだ。
「無刀無象と月蝕組み合わせるとか…。」
恐らく難しいだろう。
月蝕自体周囲の魔力を勝手に吸収し消滅させる魔法だ。
「もう複製魔法で頑張って見るよ。」
そうして決勝戦まで登り詰めた。
「で、貴女が私の敵なのです?」
小柄な少女だった。
胸辺り見ても膨らみは一切ない。
「そうだよ。」
私は自分の胸と比べてみると辛うじて勝っている。
「無刀無象!」
ステージの隅っこに木の枝が4箇所に刺さった。
「月蝕!!」
これで相手は魔力は吸収され魔法も発動出来ないはずだ。
「それが貴女の秘策というやつですか?」
少女の周りから炎がどんどん燃え上がる。
「それ魔力なの?」
月蝕は魔力吸収はかなり膨大な量を取り込む事が出来る。
それは一気に吸収出来るわけじゃない。
「見て分かりませんか?」
少女の魔力、いや炎が私の足元にも燃え移って来る。
「複製…いや、純粋な魔力を複製なんて出来るの?」
純粋な魔力を複製するには同じ量の魔力がいるはずだ。
そもそも月蝕を発動中に出来るはずがない。
魔力の差があり過ぎる。
「どうすれば…。」
いっその事、記憶干渉して炎を相手に…。
それは駄目だ。
「意識干渉。」
魔法妨害してる無刀無象の木の枝を燃やされた時点で負けだ。
「私の魔力は膨大ですよ?諦めて降参して下さい。」
確かに魔力が具現化するなんて有り得ないぐらいだ。
「諦めれない理由があるからね。」
月蝕を一旦止めて、あの魔法を使えば勝てるかもしれない。
私はゆっくり月蝕魔法を解いた。
「精霊召喚。」
私は魔力を一点に集中して集める。
空間をねじ曲げていく。
「これが私の精霊だ。」
暗闇から異形の化け物の腕が出てくる。
その姿はまるで悪魔だった。
私の身体のあちこちから悲鳴が鳴り響く。
「………。」
気付いたら頃には悪魔が私の腕を食べていた。
すぐに私の身体が修復される。
「思い付きで悪魔を召喚するなんて…!?」
複製魔法で精霊との空間を作っても、精霊自体は劣化しない。
「悪魔。アイツの魔力を喰らえ!」
悪魔は少女の腕を押さえ付けてると、
炎ごと魔力を飲み込んでいく。
少女の魔力が無尽蔵に近くても、悪魔は全て飲み込んでいくだろう。
気付いたら頃には少女は意識を失ったようだった。
「勝ったの?」
悪魔がにやりと私を笑う。
悪魔はよだれを垂らしながら消えていった。
私はもう呼ばないようにする事にした。
流石に生贄無限の悪魔大量召喚なんてしたら捕まってしまう。
下手したら戦争に駆り出されてしまうだろう。
「かなりやばかった。」
私は疲れとともにその場に倒れた。
「雛先輩!起きましたか?」
「…うん、何とか。」
あの悪魔一体なんだったのだろうか。
「そう言えば、雛凪の目的が分かったかもしれない。」
真琴が私を睨み付ける。
「それ本当に分かったの?」
私は生唾を飲み込む。
「雛凪は魔女の術式を全ての魔法使いに埋め込んで、」
「この世界から魔法を失くすつもりなんだよ…。」
「そんな事をしてしまえば、魔法使いは迫害される事になりますね。」
「魔法を持たない人達から…。」
雛凪はあの日から魔法を憎んでいたの?
「雛凪は戦争をするつもりって事ね?」
「魔法使いを皆殺しにするつもりなら、命懸けてでも止めないと…。」
私は唇を噛み締める。
ここで覚悟を決めなきゃ大事な人をまた失ってしまう。
「やっぱり雛凪とは分かり合えないんだね。」
「次期生徒会長として私は雛凪を殺すよ。」
それが正しい事なんだ。