加純さん、ハロウィンを描く(その前にアップルパイも)。
「#新12ヶ月の小品集 2024」10月のお題絵をじっくりと説明します。
途中、アップルパイでおくつろぎください。
オキ カズミは焦っていた。
それは焦ろうというものだろう。なにせ、15時間後に締め切りがやってくるのだから。
オキ カズミはプロの絵師ではない。加えてその締め切りはアマチュア絵師が合同で開催しているSNS上の企画なので、「都合により提出が遅れます」とことわりを入れて遅刻提出という手段も考慮できた。
だがオキカズミの心の中では、どうしてもその企画は提出日の0時00分に投稿したかったし、自分でそう決めたことなので譲れないところでもだった。
だが、まだ原稿は真っ白なのだ。
その企画、毎月お題があり、それに沿って参加者が思い思いのイラストを描くという趣向だ。
幸い、今月のお題はオキ カズミが得意とするものであったから、プランは比較的簡単に決まっていた。だがプランはあっても、すぐにペンが動くわけではない。そのプランを原稿用紙の上で具体化するための資料集めと云う仕事があるのだ。
主催様の名誉のために記載しておくが、お題の発表は数週間前にあった。「1日でイラストを仕上げろ!」とか云う無茶ぶりは要求していない。
ここ、大事なところである。
主催様に罪はないのだ!
問題はオキ カズミがお題を把握していなかったことと、時間が押しているにもかかわらず、ギリギリまでほかの作品に取り掛かっていたことにある。
これが、ギリギリまで取り掛かっていた作品「アップルパイ」。アイスクリームも添えてしまう悪行ぶり。
当人も大好物だけあって、かなり気合を入れて描いた。その甲斐あってか、美味しそうに描けたのではないかと思っている。
しかし。
あとで知ったことだが、作者の知らぬところで、アップルパイを求めてスイーツ店やパン屋へと探訪の旅に出る漂流者を輩出していた――と云う問題作品になっていた。関係者の皆様、ごめんなさい。
「crista26 秋」
描き始めるにあたって、まずは資料を漁る。時間が無くても、これをやっておかないと、いざ描き始めても細部の描写に疑問が出てきて手が止まってしまう。スイーツを作るときに、先に材料の計測をしておくのと同じようなことだとでも考えて欲しい。
ちなみにアップルパイの時もご贔屓の店のアップルパイを買ってきて、観察、写メ撮り、最後にお腹の中へ収めてから製作を開始した。(←単に食べたかっただけだろう、言わない!)
ハロウィンの衣装に関しては、日頃から集めておいた資料のストックの中から、使えそうなものを引っ張り出してくるだけで済んだ。備えあれば憂いなし、である。
それらを参考に下書きを始める。ラフ画ともいうが、オキ カズミのラフは大雑把である。アタリなので、ざっくりとしか描かない。パーツこのあたり……くらいが関の山である。
面倒くさくなると、アタリ無しでいきなり下書きを始めることもあるが、たいてい目分量を間違えて当初の予定とサイズが変わってきてしまうので、アタリだけは取るように心がけている。
そう、心がけてはいる。
「下書き」
ここから下書きに入り、各パーツや服のデザインなど、結構描き込む。人によってはどうせペン入れの際に描き込むのだから、ここもあっさりとしか描かないという方もおいでだが、オキ カズミの場合は不安になるのでしっかり描き込んでおく。用心深いとかではなく、ペン入れが下手なだけだからだ。アナログ時代の名残で、ペン入れは失敗が出来ないと云う不安から逃れられない。
プロの方の指南書などを拝読するに、下書きは大雑把な方がいいのだそうだ。あまりきっちり描き込んでしまうと、ペン入れの際にその下書きの線をなぞることを意識するようになり線が堅くなるとのこと。それはもっともなのだがオキ カズミの場合、結局ペン入れの線は下書きの線をある程度なぞりつつもどんどん気が向くまま変えてしまうので、とどのつまりなぞっていないのかもしれないという結論に落ち着いた。
結局のところ、どちらなのかと問わないで欲しい。オキ カズミもあまりよくわかっていないのだから。強いて言えばノリ、か?
一方、失敗ばかりしているので修正の技術は上達した。数回の描き直しにもへこたれないメンタルも培った。これが果たして良いことなのか疑問であるが……。
今回、時間節約のため下書きまではアナログで行い、それをパソコンに取り込んでペン入れをした。これにはオキ カズミの使用するハード面の問題が絡んでくる。
オキ カズミの使用しているお絵描きタブレットは、俗に「板タブ」と呼ばれるもので、画面に直接描き込むものではない。
「板タブ」はその名のとおり、板状のタブレットを有線接続もしくはBluetoothなどの無線接続でパソコンと接続して使用する。この板状のタブレットの上に、専用のタッチペンで絵を描いていくのだが、板タブで描いた文字や絵は常に接続先のモニター(パソコンの画面)に表示される。ゆえに手元を見ずに描画する技術が必要となってくる。
お絵描きにご縁のない方にはこの辺の事情はわかりづらいかと思うが、キーボードのタッチタイピングとかブラインドタッチ呼ばれる打ち方と同じような要領だ、と思っていただくとわかりやすいだろうか。(※個人の見解です)
大きな画面で確認しながら描けるのは老眼のオキ カズミにとってこの上ない大きなメリットなのだが、もちろんデメリットもある。
どうしても手元と、描いた線を確認している視線先の画面との間に、感覚と間隔のロスが出てきてしまうのだ。この辺は慣れで解消するしかないのだが、焦ると感覚も間隔もズレてくる。きっちり描きたい下書きが、歪んだ線の修正だけで時間を長々費やすことにもなりかねないのだ。
そこでアナログでそこそこ作画して、それをパソコンへと取り込みペンを入れる。それでも決まらなかったらペン入れまでアナログで済ませ、線画を取り込むという手段もあるが、今回のペン入れはデジタルで何とかなった。遠隔操作(!?)作画も、多少は慣れたということにしておこう。
「下書きから起こしたラフ画」(板タブにて作画)
ペン入れまでは順調に……まあ、順調に進んだ。かなり時短が出来たと思う。しかし、問題はこれからだ。彩色しなければ、カラーイラストにはならない。
そこも策を講じてある。
10月のお題は「ウチの子ファッションショー」だ。
選抜した「ウチの子」はテスとクリスタ。このふたりであれば描き慣れているし、なにを着せても似合う(←そういう設定!)。着せる服に関してはなんでもありという事であったが、普段からオキ カズミはこのふたりにあれこれ着せているので、ドレスを着せても十二単を着せても新鮮味がない。っていうか、すでに着せている。
ならばいっそ、王道を行こうと考えた。10月だ、10月末には大きなイベントがある。
ハロウィンだ。
ハロウィンの仮装をさせよう。
ここ数年、この時期はある企画のイラスト制作に追われており万聖節の前夜祭どころではなかったので、久しくハロウィンを題材にイラストを描いていない。
それにこういう大きな行事は決まりごとがはっきりしているので、それさえ押さえれば雰囲気はバッチリ押さえられるのだ。
ハロウィンを連想させる色は、だいたい決まっている。かぼちゃを連想させるオレンジ色(他、秋の収穫や太陽の恵みを表している)、死や夜の闇を現わす黒色、そして月の光や月明かりの夜空を現わす紫色。
モチーフもかぼちゃや魔女、黒猫、コウモリなどとパターンがあるので、このあたりを描き込んでおけば紙面上に「ハロウィン」が出来上がる。配色に関しては、ハロウィンカラーから選べばいいのだから深く悩むことはない。
魔女の扮装が妥当だろうが、ちょっと捻ってメイドにした。資料の中にかわいいメイドのファッションがあって、それを着せてみたくなったのだ。それに、なぜかメイドファッションは人気が高い。
もうひとつ。テスは何度かメイドファッションを着せたことがあるのだが、クリスタは一度もない。かわいい系のテスと比較すると、どうしてもクリスタが着るファッションは大人ぽいデザインもしくはハード系に傾いてしまう。なのでメイド服を着せたことが無いのだ。
レア、じゃん!!
という訳で、テスとお揃いのかわいいメイド姿にしよう! ということにした。
構図はふたりを椅子に腰かけさせることとした。
メイドが座り込んでいたら仕事にならないだろう、というご意見もあるだろう。だがテスとクリスタは身長差が36センチあり、ふたりをひとつの画面に収めるには、色々とシチュエーションを考えなければならないのだ。
特に今回描いてみたいメイドファッションはニーハイのソックスと高いヒールの靴がデザインのポイントなので、どうしても全身を描きたい。足元が、このファッションのキモなのだ。ちょっ、待てよ。ヘッド飾りもメイドファッションには欠かせないパーツだよ。こうなると全身を描かなければ、意味が無いともいえよう。
されどふたりを直立不動で並べると、身長差が大きいので、テスに踏み台にでも乗ってもらう設定でもしないとつり合いが取れなくなる。そこで脚を前に投げ出すように椅子に座ってもらうことにした。椅子に座ることによって座高はほぼ一緒になるし、脚を前方に出すポーズなら、コスのポイントであるニーハイと靴にも視線を誘導しやすい。
そんな理由からこのポーズに決定したのだった。
いよいよ、下書きを始める。
お行儀よく座られても面白くないので、クリスタには少し気取ってもらい、テスにはおどけてもらう。
「ペン入れ後」
実は、この地点でまだ背景のレイアウトは考えていなかった。
ただふたりを並べて座らせても芸が無いので、画面を縦長に切り替えて、位置をずらすことにした。
ゆっくり描いている時間の余裕はないのはわかっていたので、背景はクリップスタジオの素材を利用するつもりだ。デザインやら、パーツやら、どれを借用するにしても、まずメインキャラが仕上がらなければ考慮のしようもない。
という訳で、メインヒロインたちを先に仕上げる。
「途中1 キャラ彩色」
まず、いかにもハロウィン的なストライプ柄の壁紙を貼り、隅にフレーム飾りを入れる。
「途中2 壁紙」
しかしこれだけではいかにも寂しい。ということで、ジャックオランタンと猫にも入ってもらう。あとおばけにも。
「途中3 脇役ミニキャラ添付」
脇役を揃えたのだが、なんだかまだ物足りない気もする。そこで蜘蛛の巣も加えてみる。ただ不透明度を下げて、あまり主張し過ぎない程度にしておく。
やりすぎ注意!(※「加純さん、ファジィをねらう。」参照)
「途中4 蜘蛛の巣貼り付け」
最後に、画面に華やかさを加えるためにテクスチャを重ねる。一番上のレイヤーをオレンジ色に塗ってオーバーレイ化、不透明度を下げたものを乗せただけだが。全体的に色の統一感も出るので、彩色完成後に色のバランスが崩れているなと思った時も、これで応急処置をしたりする。簡単で効果的なので、オススメ!
時間があるときはこのお手製テクスチャにさらに色を加えたり、削ったり、合成モードを重ねたりして細工するのだが、今回は時間が無いのでここまでで良しとする。それにこの絵はこれ以上デコったら収拾がつかなくなりそうだ。やりすぎ注意!!
「tess&christa ハロウィン仮装」
なんと、ここまで製作日数がほぼ1日!
予定では3日ほど作業日があったはずなのだが、23日に偏頭痛で起き上がれなくなり、仕方なく23日の深夜からラフ画がを描き始めることになってしまった。
オキ カズミは主婦なので、1日中作業に勤しむことはできない。24日は家事その他の合間に作画と中断を繰り返しつつ進め、10月25日0時の20分前に完成。滑り込みで日付が変わるのと同時に投稿が出来た。奇跡である。(※よい子はまねをしてはいけません。時間に余裕を持って行動しましょう)
そしてイラスト制作時間、最速不倒記録を更新したのだ! すごっ!!
めでたしめでたし。
……で、終わらなかった。
オキ カズミには心残りがあった。
「どーせなら、マオも入れたかったのよ! だって、あの子なら吸血鬼コス絶対似合うのにっ!!」
これである。ひたすらオキ カズミのシュミの横暴だが、やりたいものはやりたい。
以前「幻想・夜陰夜会」という作品で吸血鬼の役を演じさせたのだが、
(ちなみに、この作品だ!)「幻想・夜陰夜会」
今度はミニキャラで演ってもらいたいと画策していた。だが、何分にも作画している時間が足りなかった。(←それでもギリだった)
そこでおばけを描いて代用したのだが、やはり登板させたい。
企画の締め切りは押さえたので、ここからは完成度を上げようとオキ カズミはほくそ笑んだ。
そこでミニキャラヴァージョンの吸血鬼マオを描いて貼り付けた。ジャックオランタンと猫も、少し配置を変えて。
「tess&christa ハロウィン仮装(改)」
こうして作品は仕上がった。
来月はもう少し余裕をもって挑みたいとオキ カズミは思っている。
(誰!? そこで「無理だ」って笑っているの~~)
「もみじ」(Xのアイコン用イラスト)
さて次回は再び「クリームソーダ」嬢たちのご登場。
今回一緒に紹介する予定だったのですが、ハロウィン絵の説明が長引いてしまったので、次に回すことになりました。ごめんなさい。
そして、ナレーションも通常運転に戻ります。
ご来訪、ありがとうございます。
今回少しだけ語り口調を変えてみたのですが、気まぐれでやったことなので、次回からはまたいつもの調子に戻ります。お楽しみに!
「#新12ヶ月の小品集 2024」毎月開催中!
お題と参加も毎月募集中!!