加純さん、「淑女」を考える。【第5回イラスト交換企画 初心者ウェルカム部門】編
お待たせしました! 「イラ交」初級者部門、発表当時✕(旧ツイッター)をお騒がせした麗しの貴婦人、「淑女の鑑」ジェシカ様の登場です。
夏まつり様からいただいたテスも掲載。
秘蔵ネタや描きおろしも加え、豪華にお届けします。
さあ。2023年の秋。
今年も、あの大型企画に参加します!
ご存知、長岡更夜様主催の「イラスト交換企画」。
第五回は「初級者ウェルカム部門」と「上級チャレンジ部門」に参戦。
今回と次回はその作品と顛末記。
★キャラクター依頼内容★
【部門】初級者ウェルカム部門
【絵師】澳 加純
【作者】柴野いずみ様
【出演作品】【連載版】大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
【作品URL】https://ncode.syosetu.com/n8156ii/
【ジャンル】異世界〔恋愛〕
【名前】ジェシカ・ハパリン
【性別】女
【種族、人種】人間、白人
【年齢】19
【身長】165cm
【体重】50kg
【髪型・髪色】盛り髪、黄金色
【目つき・目の色】吊り目気味、翠色
【肌の色】色白
【体型】スレンダー
【服装】孔雀色のドレス
【表情】キリリとした顔
【性格】淑女の鑑という感じ
【その他】
皇太子妃。顔は少しきつめの美人。
これはできればで構わないのですが、小物として金の扇とペリドット色のネックレスを描いてくださるととても嬉しいです!
よろしくお願いします!!
――ということで。麗しの皇太子妃ジェシカ様を描かせていただくことになりました。
設定と作品を拝見したところ、ジェシカ様は内面に複雑な心境を抱えた貴婦人、という印象でした。
完璧な貴婦人過ぎて感情をストレートに出せない、想いを伝えられないのですね。淑女の鑑とまで評されているのに、そこだけ不器用。まあ、淑女がみな恋愛上手ということもないでしょうけど。(個人の感想です)
さらに具合の悪いことに……と続くのですが、そこは原作をお読みいただければ。(←ネタバレ禁止)
そんな彼女をどんなふうに表現すればいいのか、悩んでしまいました。ドレスを着て美しく着飾ったお姫様、ではなくて「淑女の鑑」ですからね。きりっとしたお顔立ちできつい性格に見えがちという作者様からのアドバイスもありましたが、わたしにはいつも心の内にさみしさを抱えているように映っていました。
なので、にっこりとほほ笑んだだけのお顔は描けないなぁ、とも。
だからといってクヨクヨしているだけの女性ではないので、意志の強さは感じさせたい。
む……難しい。
それとネックレスと扇子を描き込みたかった(作者様の希望は叶えたいに決まっています!)こともあり、最初にデザインしたのは肩を大きく露出するクリノリンドレスのスタイルでした。下の見本図を見ていただければ納得いただけるかと思われますが、クリノリンスタイルの夜会ドレスは胸元が大きく開くので、ネックレスが映えると考えたのです。
髪型:盛り髪ということで、冗談で帆船模型を乗っけたちょっとクレイジーなロココスタイルもおまけで描いてみたりして。
お伺いを立てた結果、作者しばっちのリクエストでドレスはロココ(ローブ・ア・ラ・フランセーズ)風に修正。ヘアスタイルの方はさすがにヒロインに帆船乗せは奇抜すぎるだろうと、同時代の貴婦人たちの肖像画をあれこれ鑑賞して、詰め物をして大きく結い上げサイドを少し垂らすスタイルにアレンジしてみました。
当時の流行に倣って、羽飾りやリボン、ばらの花を飾り、うんと華やかにしてみるのも楽しそうです。
ということで、ざっと描いたカラーラフ。
顔立ちはきつめの美人という設定でしたので、こんな雰囲気に。とにかく美人で。絶対美人で!
ここだけの話――ジェシカ様を美人に描くために、何枚もラフを描いて下書きの練習をしたのですよ。ペン入れの練習ではありません、下書きの練習です。(平たく言うと、落書きかな)
美人さんですから彼女のご尊顔アップでも良いかと思いますが、ロココドレスを描くのでしたら、やっぱり全身を描いてみたい。
ドレス好きは、ついそんなことを考えてしまう。ドレスに限らず、コスチュームものは燃える加純さんでした。
でもそうなると、ネックレスや扇子がどうしても小さく目立たなくなってしまいそうです。なので扇子は広げて存在感をアップしたほうが良いと思うのですが、あまり顔に近い位置に持ってくると、今度は首元のネックレスが隠れてしまう。
しかも、薄い黄緑色のペリドットと金色の扇子。色が似ているのであまり近づけたくはないのですが、距離を取り過ぎると重要なアイテムぽくなくなりそうで(←個人の見解です)、ポージングでどうにかできないかと悩むことになりました。
……というか、11月初旬までずっとポージングで悩んでいたのです。
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ここで一旦休憩。
頂き物のご紹介です。
「イラスト交換企画」ですから、加純さんもイラストを描いていただきました。
どなたに、どのキャラを? そこは、テンプレートからどうぞ。
★絵師情報★
絵師:夏まつり様
描きやすい性別 :女性(少年も好きです)
描きやすい年齢 :0〜20くらいの若者
描きにくい人物:中年〜年配は未経験です
描けない人物:人外キャラは難しいです。耳が尖ってるとか、猫耳とか、パーツであれば大丈夫です。
何かあれば:通常絵orミニキャラ、どちらがいいかのご希望があればお知らせください。
★キャラクター依頼内容★
【部門】初心者ウェルカム部門
【絵師】夏まつり様
【作者】澳 加純
【出演作品】「テスとクリスタ ~あたしの秘密とアナタの事情」
【作品URL】https://ncode.syosetu.com/n5837di/
【ジャンル】SF
【名前】テリーザ・モーリン・ブロン(愛称テス)
【性別】女性
【種族、人種】人類。表面上はアングロサクソン系の特徴が強くでている。
【年齢】18歳
【身長】155センチ
【体重】52キロくらい? 少しぽっちゃり体型。
【髪型・髪色】プラチナブロンドのくせっ毛ショートヘア
【目つき・目の色】大きくて垂れ目。色はライトブルー
【肌の色】色白
【体型】小柄でグラマラス。お胸は豊か、プロポーションは意外と良いです。
【服装】物語の中ではプチプラ系を着せていますが、イラストを描くときは、かわいい系のファッションをあれこれ着せています。お任せします。
【表情】ベビーフェイス、年齢より幼く見られるタイプ。
【性格】真面目で正直。やさしくて素直。反面、甘えん坊で泣き虫。依存心が強くて、何事も親友のクリスタに頼りがち。
【その他】惑星レチェルのカヌレ総合大学でリベラルアーツを専攻している女子大生。物語の冒頭で超常能力に目覚め、その巨大すぎる能力に振り回されることに。その他、散々な目に遭わされる本編の主人公。
今回はミニキャラでお願いします!
Mission complete!
というわけで、まつり様にテスのミニキャラを描いていただきました。
絵師情報を見たときに、もうミニキャラを描いていただくことは決定していました。加純さんがミニキャラを描くのが苦手なので、もうこれは描いていただくしかないと思ったのですね。それに、だって、まつり様の描くミニキャラのかわいらしさは垂涎物ですよ! お願いしない理由なんて無いでしょう。
問題は、だれを描いていただくか? でした。
悶々と考えたのですが、企画が始動した9月頃といえば加純さんはコロナの寝たきり生活から開けたばかりで、倦怠感がどど~んと天から降ってきていた状態だったので、思考はどこまでも空回りしていた時期でした。本音を言えば、「しんどくて考えるのが面倒くさい(←関係者の皆様、申し訳ございません)」状態だったのですよ。考えてもまとまらないし。
そこで、困ったときの「ウチのセンター」。
幸いまつり様にもお気に召していただけたようで、とってもかわいいテスを描いていただきました。幸せ!
――で。思惑どおり(←こら!)とってもかわいいラフ画が3枚送られてきまして。しかも3枚とも「実にテスらしい」スケッチなんですもの。今度は選ぶのに困っちゃいましたよ~~! わかりますよね、この気持ちッ!
悩んだ末に選んだのは、テスの超常能力のレッスンシーン。
本編では先輩能力者のアダムとディーにいいように弄ばれておりますが、初心者能力者のテスが強力すぎる能力の使い方を学ぼうと、必死になって取り組んでいるところですね。
実は、こう見えても彼女は超A級のパワーを持つ超常能力者なのです。
でもその能力に突然目覚めたばかりで、それをどう扱っていいのか、当の本人が一番わかっていないという危険人物でもあるのでした。それで彼らにレクチャーを受けることになったのですが、この先輩方も一筋縄ではいかない性格だったのでした。
思うようにならない能力の加減に、口をへの字にして汗だく。なによりテスは感情も、能力も、コントロールすることが大の苦手。
なので、油断すると暴走しそうになる能力に押され気味。どうしても腰が引けてしまう。
そんな彼女の頼りなさとか気怖じしている感が、愛らしいながらも存分に表現されていて、とっても素晴らしい作品だと思うのです。
目の前で、こんな調子であたふたされたら……。
思いっきりからかいたくなったアダムとディーの気持ちもわかるわ~と、思ってしまう。
ここは序盤のワンシーンなのでサクサクっと通り過ぎてしまいますが、テスが自分の意志で能力を発動させる最初の場面。「超常能力を使うって、どんなことだろう?」と悩みながら書いたシーンなので、作者としては思い出深いエピソードだったりするのでした。
このシーンを選んでくれたまつり様のセンスにも感謝♡
さらに、没なんてもったいない……と思っていた残りの2枚も結局いただいちゃって。もう大喜びするわたしの顔が連想できますでしょ。
まつり様、誠に、誠にありがとうございました。
宝物にいたしますね。
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話はジェシカ様に戻ります。
ようやくポージングが決定して、下書き。これをコピックライナーのクールグレイ色と一部ウォームグレイ色でペン入れして、
コピックで彩色開始。ここからはスピードアップ。
加純さんはキャラの表情が決まらないと全体が決まらない性分なので、顔から仕上げていきます。
ちょっとだけ上向きの横顔、でも少し伏目という、かなり複雑な表情になってしまいました。ジェシカの憂鬱感(←理由は作品を読んでください)を演出するのに横顔……というか、最初からわたしの中で彼女の印象は横顔だった気がするの。
当初はドレス地にも模様を入れようと考えていたのですが、調子の乗ってレースを細かく描き込んでしまったので、地模様は止めにしました。両方だと、ごちゃごちゃとうるさいでしょ。扇子も、結構模様描き込んじゃったし。
ドレスの色は孔雀色。ピーコックブルーとピーコックグリーンで迷ったのですが、瞳の色が翠色なのでおそらくグリーン系に近い方だろうと想像しまして、ブルーグリーン系の色でグラデーションを作っています。コピックBG18、BG72、BG11を使用。
生地が薄っぺらに見えない様色の重ね方に気を配りつつ、出来ればサテンとか、ダマスク織の様に見えて欲しいな~と考えつつ塗っていました。技術が追い付かない。
グリーン系の色は、基本何色とも相性がいいので組み合わせは悩まないのですが、髪の色と扇子に発色の良い黄色を持ってくるので、リボンは華やかなピンク色とストライプ柄のくすみピンクでコントラストを出すことに。
ピンクとグリーンの組み合わせは、個人的に好きですね。赤や黄色と合わせるより、柔らかい感じになります。それにあまり個性の強い色を多用すると軽々しく見える(←よく言えばポップ)ので、淑女はアクセントを効かせて、奇をてらった組み合わせにならないよう心掛けました。
でも、実際にコピックで塗っていく順番は薄い色から。画面の大部分を占めるブルーグリーンを想定しながら、羽飾りやレース、ペチコートなどから先に色を入れ、最後にドレスの色を入れていきます。アナログはやり直しが利かないので、この辺は最初にきちんと計算しておかないと、後々とんでもない羽目になるのね。修正とか描き直しとか。
もう慣れているけれど。
なのでグラデーションの出し方とか、色の組み合わせとかは、別の紙で散々実験してから入れています。(※61.加純さん、グラデーションを考慮する。参照)
細かい部分は、コピックの筆先の先っぽで、まさに息を止めての真剣勝負だったりするのよ。
もひとつ。完成画では目立たなくなっちゃったけど、羽根飾り、すっごく頑張ったのです。華やか、かつ軽やかに、フワッとさせる。ここがそれらしく塗れた時、「よし! この絵仕上げられる」という根拠のない確信が生まれましたっけ。
ええ。仕上げられなかったら困るのですけれど。
実は、ここでものすごいミスをしでかした!
「イラ交」の解説では書かなかったのですが、「インクぽっとん(インクのボタ落ち)」をやらかしました。
「インクぽっとん」ことボタ落ちの原因として考えられる理由は、
①インク補充の際に要領いっぱいに入れてしまった
②コピックを縦置きしてインク残量が一方に偏っていた
③作品の上でキャップを外した
こんなところでしょうか。全部経験したことあります。
そして今回は「彩色の途中でニブ(筆先)を下に向けたまま考え事をしていた」という初歩的なミスでした。
ボケっとしていたわけじゃないのよ。いつも塗り始める前に大まかな配色は考えておくのですが、ふと塗りながら「こっちの色もいいかも」と閃くことがあるのです。直観みたいなもので、それが良かった時もあるし、外れる時もある。
この時はその直感に素直に従えないなにかが信号を出して、手が止まっちゃったのです。
なにせ塗った色は修正が利かないので、そこは慎重にならざるを得ない。すでに11月に入っていて、もう一枚はまだほとんど手を付けていない状態だったので、描き直しはなるべく避けたかったの。提出期限は、11月末ですからね。わかって!
思い浮かんだ色よりも、こちらの方がいいかも? とか、思い切って反対色を持ってきちゃおうか? とか、あれこれプランが浮かんできたので、つい手元から注意が逸れてしまいました。その間にインクが下に偏ってきて……。
ぽっとん!
ひぃぃぃぃぃぃ。塗ったばかりの髪の毛の上に!
きれいに塗れた金髪の盛り髪の上に!
初心者だったころのわたしならここで描き直しとなるでしょうが、6年も扱っているとさすがに「対処法」というものを覚えるのですね。
このインク染み、消します!
コピックはアルコールインクですから、ここからは時間勝負。処置は早い方がラクなのです。
要領は、洗濯の染み抜きと同じだと考えてください。
広がった染みの下に、ティッシュペーパーなど吸収力の強い紙を敷きます。そして広がった染みの上から、0番のブレンダーを塗り重ね、しみ込んだインクを紙の裏側に押し出して行くのです。この時、ブレンダーの量を渋ってはいけません。丁寧に、何度もブレンダー液を塗り重ね、徐々にインクを押し出しましょう。
すると、あら、不思議。
インクが紙を通り抜け、裏側に出てくるのです。
表側からインクの色が消えたら、色を塗り直して修正完了。
ね、ちょっとわからないでしょ!
肝心の作業中の写真はないのかって?
すみません、修正に必死だったので写メ撮る余裕はありませんでした。再現で許してください。
その代わり、一首詠みました。(※1)
転んでもタダじゃ起きない加純さん。面目躍如ですね。
髪には赤いばらを飾っていますが、ジェシカのイメージ的には白いばらのほうが似合うような気がします。
そこで前面のばらは白で。でも真っ白で塗ることはできない……というか、塗っても見えないし、コピックに白色はないので、影の部分にクリームイエロー系の色をグラデーションで入れています。
見えないと思いますが、3色使って入れているんですよ。これでも。
同じような理由で、葉も緑色で塗ったらドレスの色と被るので、ブラウン系の色に置き換えています。でもシックな感じになったでしょ。
背景だけデジタルで、スプレーを吹きかけています。
ここだけの話、アナログでエアスプレーを使って色を入れたのですが、どうにも気に入らなくてデジタルでやり直しました。最初からデジタルで色を入れていたら半日は早く仕上がったのに……と涙を飲んだとか、飲まなかったとか。
肉眼で見るだけならそちらでもいいのですが、ウェブにアップするために写真に撮って縮小して……という手順を踏むと、色が思っていたとおりには画面に映らなくて。
今回は、あまりに想定とは違う色になってしまったので、潔くデジタルで色を入れなおすことにしました。
アナログ絵描きは、失敗してもへこたれないのよ。
なんたってジェシカ様が美しく見えることが、最優先事項ですからね!
そして、ようやく仕上がったジェシカ様。ロココドレス、盛りヘアに巻き髪。美しいネックレスに扇子、レースにリボンと、お姫様要素を全部投入したらこうなるでしょう的な路線になりました。
皆様の目に、ジェシカ様が魅力的に映っていればよいのですが。
Mission complete!
しばっち。
素敵な貴婦人を描かせていただき、誠にありがとうございました。
感謝の気持ちを込めて、最後に描きおろしを一枚。
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XのDMでのやりとりの記録では、イラストの完成は11月18日。この後大急ぎでテンプレを書いて19日にしばっちに送っています。
締め切りは11月末。
大切なことなので、もう一回。
締め切りは11月末です。しかも11月は30日までしかありません。
残りあと何日?
ここから未だ真っ白な【上級チャレンジ部門】の制作に入ります。例年よりも制作速度が遅いです。
さすがに焦ります。
なんて言っていても始まらない。
さあ、気合いを入れ直して。次へ行きましょうか!!
【追記】
ご質問があったので。
原画はヴィフアール紙細目F4のスケブに、枠取りして300×233位のサイズで描いてありました。横のリング跡が証拠(ビラビラを付けておいたままでよかったよ)ですね。現在は切り取ってポケット式ファイルに保管。
画面見辛いですが、周りを青でうっすら枠取りしてあります。
コピックと比較すると、こんな感じ。
背景が違うのは、ボツになった、アナログで吹きかけたエアスプレー仕様のモノだからです。(←ある意味貴重!)
ご来訪、ありがとうございます。
(※1)の一首、わたしの短歌集「お絵描き好き、たまに短歌を詠む」の中に収録されています。ちょうど同時期開催されていた公式企画「俳人・歌人になろう!2023」に参加いたしまして、その中でちっともイラストが仕上がらないもどかしさを詠っております。
よろしければ、こちらもどうぞ。
https://ncode.syosetu.com/n7379im/
さて、次回は上級チャレンジ部門。キュートでかわいいニニコ・スプリングチケットの登場です。
お楽しみに!