61. 加純さん、グラデーションを考慮する。(第四回イラスト交換企画 初心者ウェルカム部門)
「第四回イラスト交換企画」と、同時期に参加した「つれないメイド企画」のお話です。
10月に入り、いよいよイラスト交換企画に着手。
「ゴールテープを切ったよ!」 天界音楽様主催「#12ヶ月の小品集2022」10月のお題「運動会」
もちろん、イラストを描く作品が決まった地点で作品は拝読させていただいていたのですが、第4回は2部門のエントリー。ちょっとしたウラ事情もあり、まずは初心者部門から着手することとなりました。
初心者部門、加純さんが絵師としてキャラクターを描かせていただく作者様は、キハ様。
初顔合わせの方でした。
加純さん、この企画で絵師としては初顔合わせの方と組む確立が高いようです。
そんなことは、さておき。まずはいただいたテンプレートから。
★キャラクター依頼内容★
【部門】①初心者ウェルカム部門
【絵師】加純
【作者】キハ様
【出演作品】戦う美少女戦隊「ビューティーフラワーズ」の毎日
【作品URL】https://ncode.syosetu.com/n3954hu/
【ジャンル】アクション
【名前】萌葱美登利
【性別】女
【種族、人種】人間。
【年齢】大学一年生
【身長】175cm
【体重】50kg前後
【髪型・髪色】淡い緑色の美しい縦ロール。
【目つき・目の色】鋭く意志が宿っているエメラルドの瞳。
【肌の色】綺麗な美白肌
【体型】背が高く、細い
【服装】(変身後)マリー・アントワネットなどが来てそうな重圧なドレスの裾を短めにした感じ。
【表情】嫌味なく「オホホホ」って笑ってる感じ。「ふふふ」って笑いますが。
【性格】よくできる女性。微笑むのが多い。優しくて陽だまりのような暖かさがあり、微笑みは聖母マリアのようです。
【その他】整っている顔で美人ですが、悪役令嬢系の少し棘のある美女とも言われることもあります。
ですが……口調はあれですけどでも、優しい子です。
縦ロールに重厚なドレス。あ、得意分野じゃん!
絵師情報に「縦ロールから十二単まで、コスチュームものはどんと来い! です」と記載しておきましたから、きっとキハ様が考慮してくださったのでしょう。
そして美少女戦隊モノ。咄嗟に浮かんだのはセーラー〇ーンだったりして。
まあ、少女漫画色全開でいけることは間違いなさそうです。
と、ここで考える。加純さん、戦隊モノにもご縁が深いのかしら?
昨年も描いたような、描かなかったような。でも今年は2作品描かなきゃならないから、5人も6人もは描けないぞ、描かないぞ。と考えつつ、先に進む。
原作を拝読して印象に残ったシーンは、序盤のビューティーフラワーズのメンバーがドーナツについて議論……というか大好きなドーナツを主張しあう場面(第一章 ドーナツ戦争)。そのわちゃわちゃ感がとてもかわいらしかったのです。
作者キハ様ご自身がとてもお若いこともあるかもしれませんが、元気いっぱいで愛らしくもあり、ガールズトークがとても楽しい。まさに「話に花が咲く」といった雰囲気、ドーナツ愛も微笑ましくて。
今回は賑やかに、楽しく、カラフルで美味しそうに! をテーマにしよう。
そんな調子で美登利さんのだいたいのヴィジュアルと、描いてみたいイメージは固まりました。
第一稿。美登利さんは悪役令嬢風。
なんだか速攻で初志が覆っているような気がしない――でもありませんが、右端が美登利さん。
テンプレどおりの、髪の毛は縦ロール。そして服装はマリー・アントワネットが着てそうなロココ風のデザインにしてあります。
ですが、描いていて思ったのですよね。物語の舞台は現代、彼女の素顔は女子大生ですから、そのまま床を擦って歩くような丈のロココドレスを着せたらギャグになってしまう。そういうキャラならいいのですが、ストーリーの中での彼女の立ち位置はそこじゃない。お嬢様キャラだけど、知的なお姉様といった役割だと思ったのです。
それに「裾(丈)を短めにした感じ」とありましたから、キハ様もそのままロココドレスを着せるつもりはないのでしょう。そこでロリータ系でいかがなものかと打診して、アントワネットが着ていそうなドレスを現代風にアレンジさせていただくことにしました。
ロリータ系にも、色々ありますからね。ふわふわフリフリ系のデザインから、ゴスロリ系、スチパン系……。
ネットでいろいろ検索してみました。楽しくって、観ていると終わらない。作業進まない。
もうひとつ第一稿を描いて思ったのは、「悪役令嬢系の少し棘のある美女」という美登利さんの顔立ち。これをそのまま描くとテンプレどおり悪役令嬢っぽくはなるのですが、なんとなくわたしが抱いたイメージと食い違ってくるのです。
物語が進行するに従って彼女の役割がどう変化してくるのかはわかりません(依頼を受けた地点では、物語はまだ第三章水樹ちゃんのお話の途中。美登利さんがメインを張っているストーリーは書かれていなかった)が、少なくとも「ドーナツ戦争」の彼女はもっとおおらかで愛嬌があるように見えました。
その時わたしが美登利さんというキャラに抱いていたイメージは、外見は「悪役令嬢」風ですが、あくまでも風であって、自己主張と意志はきっちり通したいお嬢様キャラといったカンジでしょうか。だから「悪役令嬢」っていうのでは? といえばそうなのかもしれませんが、その押し通し方に悪意は無いので、嫌味は感じませんでした。
最近は「悪役令嬢」もいろいろなタイプが量産されていますから、彼女の強気もそのどこかのパターンにはまるのでしょうか。そこそこ人生長いおばさんから観ると、かわいいものですが。
だからでしょうか。「悪役令嬢」で描くと、棘というより灰汁が強くなり過ぎちゃう。
そこでヒントにしたのは「微笑みは聖母マリア」の一節。「ちょっと気が強くてお茶目な聖母マリア」で舵を切り直したら、今度はすんなり決まりました。
こちらのモノクロ絵でキャラデザのOKをいただいたのですが、お顔立ちが少しお姉さんになりすぎてしまったので、カラー画にする際にはもう少し丸顔で若々しくしています。
先にも言ったとおり描いてみたいと思ったのは、ドーナツ戦争のイメージシーン。
となると、ビューティーフラワーズのメンバーを全員描かねばならなくなりました。ひとつの画面に5人の美少女。華やかになってよいのですが、タイプの違う少女を5人。それぞれのパーソナルカラーを踏まえて、デザインの違うコスチュームを着せてとなると、なかなかに大変な作業なんですよ~!!
だから回避したかったのにぃ。
ええい! 描かねばならぬならサクサクッと進めるのが一番。っていうか、この地点で脳内では残りの4人も、ほぼほぼキャラデザインが出来上がっていたところが……なんともいえない。
描くとしてもバストアップが精々だとは思うのですが、どうしてもやりたくなってしまう性分らしいのです。
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ここで、頂き物のご紹介です!
「イラスト交換企画」ですから、当然わたしも描いていただきました。わたしのキャラを描いてくださった絵師は、天界音楽様。いつもお世話になっております。
さて、誰をお願い致しましょうか? 散々悩んだ末に、このキャラをお願いしました。物語後半まで隠していたという、文字どおりウチの秘蔵っ子です。
それではテンプレートから。
★キャラクター依頼内容★
【部門】 初心者ウェルカム部門
【絵師】 天界音楽様
【作者】 加純
【出演作品】 『テスとクリスタ ~あたしの秘密とアナタの事情~』
【作品URL】 https://ncode.syosetu.com/n5837di/
【ジャンル】 SF
【名前】 鷹栖マオ
【性別】 男性
【種族、人種】 人類、表面上は日系の特徴が強く出ている(……といってもたぶんどこかで混血していそう)
【年齢】 16歳 (あと3日で17歳になる予定:本人談)
【身長】 175センチくらい? (成長期につき変動の予定あり)
【体重】 62キロくらい? (成長期につき変動の予定あり)
【髪型・髪色】 黒髪ストレートのロングヘア。腰の辺りまで。
【目つき・目の色】 琥珀色。主人公に言わせると、香りの高い紅茶みたいな色。
【肌の色】 色白
【体型】 スレンダーな筋肉質。
【服装】 私服はヨーロピアンカジュアル系を着せていますが、お任せします。
【表情】 クールで、感情がおもてに現われないタイプ。花をも欺く美貌の持ち主で、主人公が本気で女の子と間違えました。
【性格】 紳士的な礼儀正しさと気遣いも出来るけど、案外悪戯好き。普段は物静かですが、本当に怒ると怖いタイプです。
【その他】物語後半戦の鍵を握る人物。主人公のバイト先に現われた謎の老人の関係者らしいが、素性はまだ謎。……というより、素性がバレて欲しくないような素振りも。
月の高校に在学中らしい。博学多才で、どこか老成しているような一面も。
Mission complete!
天様の透明感溢れる絵柄だと、彼をどう描くのでしょう? もう、超個人的な興味と欲望。以前テスやクリスタを描いていただいたので、ここはマオも観てみたいと思うではありませんか!
ですから完成した作品を最初に拝見したとき、心躍りました。脳内ではアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲の荘厳なテーマ曲が流れ始め、絢爛豪華な仮面舞踏会での華やかなナンバーまで、加純さんの脳内再生装置はメドレーで流してくれましたとも。
「ファントム~~~~!!」
もう、なんてハマり役なのでしょう。さすがです! なんて素敵なキャラクターを当ててくださったのでしょう。
マオ、ヒール役が似合い過ぎです。流し目が妖しすぎて、目力だけでシャンデリアを落としそうです。いや、これならオペラ座そのものを崩壊させるかも!?
いつもは前髪ダウンスタイルですが、アップにすると少し大人っぽくなっていいですよね。夜会服も、白手袋もカッコいいです。
彼はこの表情で、この先も主人公のテスを悩ませ続けるのでしょう。クリスティーヌのように、囚われたら逃れることが苦しくなるような。
たくさんの資料を集めて、描いてくださったのだと思います。とってもセクシーで、罪作りなファントムをありがとうございました。
天様、力作を誠にありがとうございました。宝物にいたしますね。
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さて、話はビューティーフラワーズに戻ります。
ようやく構図が完成。
メンバー全員を画面に描き込みたいとはいえ「集合写真」にはしたくないので、構図には凝りました。
キハ様からのOKも出ましたので、ここからペン入れ、彩色へと移っていきます。
今回は、コピックで彩色したキャラクターをPCに取り込んでコラージュしていく作戦。
わたしがもたもたしていたので、この地点ですでに日付は11月第2週に入っていました。のんびりとはしていられません。
締め切り、月末だよ。
課題はもう一枚(中級部門)あるのよ。
さすがに焦る、でも作業は丁寧に!
質問:コラージュなんて面倒くさいことせずにオールデジタルで製作すれば良いのに
答:この頃はデジタルでキャラクターをカラーで彩色する自信がまるで無かった(現在も無いけど)からです。
それに修正できない(←出来ます!)と敬遠されますが、アナログ塗りって楽しいのよ。
加純さんの宝物
――と、それはともかく。
今回ポイントにしたのは、キャラによってパーソナルカラーが決まっていているということ。戦隊モノなので、当然このカラーを主張したいではありませんか。しかし、同時に悩みにもなりました。
テンプレを拝見しても、美登利さんはパーソナルカラーがグリーンということで、髪の色も(能力を発揮するときの)瞳の色も、コスチュームのカラーもグリーン。なのですが、絵に描き起こしてこの設定どおり全部同じ緑色で彩色したら、トンデモ重くなってしまうの。
だから色の濃淡やグラデーション、アクセントなどを入れて、色が一本調子にならないように変化を付けていきます。そこは加減の失敗が許されないところだから、予め色見本表を作りました。
あくまでもわたしがわかればいい見本表ですので、なんじゃこれ?? だと思います。
掛け合わせるカラー種と順序、その横にナンバリングのメモ。
実は色決めに関して、一番難航したのは桃奈ちゃん。完成画では美登利さんと重なる位置に配置するので、目立ち過ぎずでも映える配色にしなければならず、なによりコピックのピンクは難しいの。特に、淡いピンクの色! わたしはR80番台かRV系、もしくはV系の薄い色を持っていくのですが、いつも上手くいかない。あれだけ本数があるのに、なぜにピンクの色は微妙なんだろう?
というわけで、色見本表も桃奈ちゃんのスペースが多いですね。
しかし、なんといってもこの絵のヒロインは美登利さんなので、彼女の配色にも力が入っています。
特に彼女のトレードマークでもある巻き髪は、グラデや影色を含めると10色くらい使っていたりするのですよ。一見では、そこまで複雑に色を変えているようには見えないと思います。というか、はっきりわかっちゃったらグラデーションの意味がなくなっちゃうので困るのですけどね。
あの細かく分量の多い巻き毛を華やかかつ軽やかに見せるために、青みがかった緑色から黄緑、薄緑から濃い緑、影色に紫系の色まで使用しています。原画だと、もうちょっとハッキリ見えるのですが、う~ん……。
ドレスも緑なので、髪の毛を重く見せないように! を最重要課題として考えていましたっけ。
「美登利さん途中経過」
反対に、ドレスは生地の重量感を出してあります。髪の毛との対比もありますが、画面は斜め上からのアングルなので拡がるスカートが一番遠くにあるように見せたかった(でたよ遠近法! 前回のパースの応用編だよ!)のと、ここに濃い目の色を持ってこないと後で全体のバランスが取れないので、ベルベットを思わせるようなしっとりとした感じにしてみました。
ティアードの3段目だけ色味を軽くしてみたのですが、同じにしておけばよかったかしら? とか、後から思うのよね。
「美登利さんオンリー」
このドレスのポイントは袖のデザインで、シースルー。だからポージングも、その辺が活かせるようなものにしたつもり。アクセントのくすみピンクのりぼんや腰のシースルーのりぼんが大きくなびいているのは、彼女が「風」の力を操るからです。
お茶目な美登利さんの能力に乗って、ビューティーフラワーズのメンバーやドーナツ、ガーベラが、彼女たちの会話もリズミカルにはずみ、舞い踊るのですよ。
「メンバー勢揃い」
予定では全てコピックで彩色するつもりだったのですが、デジタルの色味も加えて、さらに変化を付けても面白いかもしれないと途中で思いつき、人物意外はデジタル作画に変更。おかげで空飛ぶガーベラ(彼女たちのパーソナルカラー!)とドーナツの大きさや位置を、思う存分検討できました。
デジタルの強みですね。
こうして11月中旬、ようやく完成!!
では、完成した作品を。
「ビューティーフラワーズ ドーナツ戦争」
女の子たちのお話ですから、華やかに軽やかに、明るく楽しい画面になるように心がけたつもりですが、いかがなものでしょうか。物語の楽しさが、このイラストで少しでも伝えることが出来たのならうれしいのですけれど。
いいえ、それよりキハ様に喜んでいただけたのが、なによりの喜び!
キハ様、ありがとうございました。
余談ですが、第四回のなろう美術館では、展示順のトップを飾らせていただきました。
「なろ美」の開幕に少しでも華を添えることが出来ていたのなら……下手っぴ絵師が頑張った甲斐もあった、といえるでしょうか?
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ビューティーフラワーズの合間に、こんな企画にも参加していました。ひだまりのねこ様主催「つれないメイド企画」。
主催者のねこ様が冷淡なメイドさん、無表情なメイドさんがお好みだそうで、それで「つれない」メイドさんを大募集していたのですよ。
そこにイラストで参加したのですが、「メイドさん」というと、ある程度スタイルは決まっていますよね。
そう、あの白いエプロン。
なんなら和風で、着物姿に白いエプロンでも……と思ったのですが、主催者のねこ様がもう描いていらっしゃる。同じものを描いても、面白くは無いですよね。
だからといって、ヴィクトリアンの正統派も……出遅れ感しか無い。
わたしの絵柄で、メイドさんと云ったら――?
加純さん和装描けます。では、女中さんスタイルは?
白いエプロンならぬ、割烹着。いいですよね、割烹着。なんのことはない、唯々割烹着が描きたかっただけなのですが(←こら!)
あれ、「つれない」よりベツモノになっていませんか、これ?
やり直し!
ならば和装のメイドさん、もうちょっと時代を遡ってみよう!
とか、変なことを考え始める。
「つれないじゃぱにーずくらしっくめいどさん(文字ナシversion)」
大奥にたどり着きました。
白いエプロンも、割烹着もどこかへ消えちゃったけど。その代わり鉢巻きたすき掛けで!
さすがに斜め上の解釈だったので企画の趣旨に添っているのか不安でしたが、そこはねこ様のユーモア感覚と度量の広さをお借りしましょう。
それに正統派メイドさんと言えばヴィクトリア女王の時代(在位:1837年~ 1901年)となるのですが、江戸時代(1600〜1868年)後期と重なっていますから、時代が一致していると言えなくもないかな?――とか。
平安時代の女房も考えたのですが、あちらは宮仕えの女官で「メイドさん」というよりは「家庭教師」としての印象の方が強いような気もします。
やはりここは御殿女中さんで!
ねこ様、楽しい企画をありがとうございました。
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次回は中級者バッチコイ部門の制作ウラ話。
初級部門とはガラリと趣向を変えて、ダークでドラマティックな世界に挑戦してみました。次回も、どうぞお楽しみに!
ご来訪、ありがとうございます。
季節は春だというのに、まだ秋の話をしています。あれやこれやと先延ばししているうちに、ついに半年季節がずれてしまいました。少しピッチを上げていかねばなりませんね。
今回は文章書き上げてから用事が立て込んでしまい、更新まで時間が掛かってしまいました。読み直して修正したりしているうちに、また時間が過ぎて……(泣)
次回はもう少し間隔を開けずに更新したいのですが(……どうなることやら、え〜ん)
こんな調子ですが、続きも懲りずによろしくお願いします。




