55. 加純さん、大輪の「華」を描く。
豪華イラスト10点盛りです!
内描き下ろし3点、かなり頑張って描いた!!
両手に花。
いい言葉ですね。ふたつのよいものを同時に手に入れることのたとえなのだそうですが、よく使われるのは、ひとりの男性がふたりの女性を連れていることのたとえ――だそうです。
ならばその逆もまたあり、ですよね。もっと云えば、「花」は女性に限らないのが当世風。
「悩める王子様系男子」
たとえば。
テスの場合は、クリスタとマオ。
間違いなく、ふたりとも「華」です。後ろにハートマーク付けたくなっちゃうくらいの「華」。しかも大輪の「華」。2人とも高身長だからと言うわけではありませんよ。のほほんヒロインを支える、スーパーな活躍をするお「華♡」なのです。
こんなふたりと手を組んで歩けたら、どんなに楽しいことでしょう。
本編では叶わなかったスリーショットですが、こんな楽しそうな風景がいつか書けたらいいなという想いも込めて描いてみました。
春の遊歩道を歩く3人。
楽しそうになにを話しているのでしょう?
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えー、先に言っておきます。
今回の「両手に華♡」に関しては、制作途中の写メはいっさいありません。
例によって例のごとく、です。
アナログ制作の途中で、写メを撮るのって大変なんですもの。(←加純さんの場合)
せめてあと2本腕があったら、コピックを塗っているところをパシャッと撮影出来るのかもしれません。たとえ腕が余分にあったとしても忘れそうな気がしますけど。
幸か不幸か、今回は技術的なお話よりファッション関係のお話をしていますので、新たに全身図のモノクロイラストを3枚描き下ろしました。
そちらを解説のお供にしてください。
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実はこの構図はずいぶん前に考えていたのですが、まとまらなくて描いては消し……を繰り返していたのですね。
理由は簡単、頭の中で描いたラフ画に実際の画力が追いつかなくて、描けば描くほど理想から遠のいてしまったから。自分の実力以上のもの考えるなよ! ということ。
それでも思いついてしまった以上、なんとかカタチにしたいではありませんか。――と云うか、なんとかカタチにして決着をつけないと、ずーっと痼りになって残ってしまう。
「あれ、まだ描けないんだよなぁ」
どれだけそんな未解決のわだかまりが残っているんだよ……ともいえますが。ええ、死ぬまでには片付けたいです。
――などと云う個人的な事情はあっちに置いといて。
『渚と空のミュージアム』5月展の、もう一点は、本当は別の作品を提出する予定でした。
昨年『渚と空の展覧会』で、「テスとクリスタ」のキャラで春夏秋冬を描いたので、今年は別のお話のキャラを描こうと思っていたのです。幸いにも描きたい構図がありましたから、この機会にそれにチャレンジしてみよう! と単純に考えていたのですが……。
そうは問屋が卸さなかった。
その絵、下絵を引っ張り出して見たら、あまり「春」という雰囲気ではないのです。作者のよく目を入れても、春のイメージは無い。もっと云えば、その物語自体がほのぼのとした春の雰囲気じゃないのですよね。
ならばそのキャラを使って、春のイメージで新たに描き起こせばいいとお思いでしょ?
加純さんもそう思ってラフ帳に向かったのですが、これが浮かんでこなかった。
いえ、野原で寝転がる主人公と相棒……という案は浮かんできたのですが、どういうわけだかカタチにならなくて。
締め切りもあるし。あまりのんびりと取り組んでもいられない。
そこで仕方なく「テスとクリスタ」に再登場を願ったのですが、こちらもスケブに途中まで描いてそのままお蔵入りになっていた下描きに手を加えたものでした。
いっぱいあるのですよ、途中で放り出したお蔵入り作品って。
そのまま忘れ去られてしまうものもありますが、ふとした拍子に手直しをしてまたお蔵に仕舞われて、またなにかの拍子に引っ張り出されて続きを描いて。「寝かしています」といえば聞こえはいいのですが、一向に完成しないのが難点。
ですが、これを機会に頑張って完成させてみましょうか。いいえ、意地でも完成させて提出しなければ、展覧会に穴が空きます。
それは避けたい!
お尻に火がついていれば、さすがの遅筆もなんとかしよう、いやするだろう!! ――という短絡思考のもと、「両手に華♡」の制作が始まりました。
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ここで頂き物のご紹介。
ひだまりのねこ様から、テスとクリスタをいただきました。
これがめちゃ楽しい絵で。
クリスタの抱き枕を抱くテス、ですよ! このアイディア、上手い!
テスの性格からすると、こんなグッズがあったら即購入して、ベッドサイドに置いていそうだと思いませんか!?
さみしくなったら、間違いなく抱き付いていそうです。
ねこ様、ありがとうございました。
贈り物を一点。
貴様二太郞様の「学園戦隊! 風林火山」の紫先輩。
この美貌と才知で、このお方の趣味は……。ネタバレ厳禁なので、答えはぜひ本編で!
にたろ様、お受け取りありがとうございました。
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お話を「両手に華♡」へ戻しますね。
キャラの下絵はほぼ完成していたので、あとは衣裳の再検討と、細かい手直しをするだけ。
問題は背景をどうするかだよなぁ~、なんです。ちまちま描き込んでいる時間もないし、3人はロクム・シティの遊歩道を歩いているという設定とし石畳を描いてみようか……ぐらいの軽~い気持ちで描き始めました。
元の下絵では、この3人そこそこドレスアップしていたのですが、場所を「春の遊歩道」に変更したので、カジュアルダウンさせなければいけません。テスとクリスタは肌見せ度を低くし(誰、露出度が多い方が良かったって叫んでいる人!)て、マオのジャケットもドレスダウンさせましょう。
どうやって変更後のコスチュームを決めたのかはよく覚えていないのですが、マオにジャケットを着せたので、クリスタにもジャケットを着せようかな、とか考えたような記憶があります。
相変わらず、アバウト。
でもカチッとしたジャケットを着せても面白くないので、襟無しのデニム生地、お腹がチラ見えするくらいのクロップド丈で……と遊んでみました。アクセサリーも大きめのデザインで、主張強め。彼女はモデルだから、このくらいは着こなすよね。
スカートはボリューミーなロング丈にして、甘辛ミックスに。
「christa&tulip」
クリスタが個性的な装いなので、マオのシルエットはスタンダードで。その代わり、ジャケットにシャツ、ネクタイの色は遊びました。パンツも春らしく、ライト系の色で。チーフとピンブローチでお洒落度を上げてみようかと。
「mao&sakura」
春物にしてはジャケットの色が重い、かもしれません。が、ここも軽い色を持って来ちゃうと、画面右側だけ色の配色が濃くなりそうな気がしたのです。クリスタは背が高い(191センチの設定)し、褐色の肌色がとっても目立つのよね。
う~ん、マオのジャケットはもう少し淡い色でもよかったかなぁ。でもそうすると、ライト系の色ばかりになってしまい、彼の黒髪だけが重たい印象になりそう。
髪の毛を軽めの色に変えるとか、重たい色の占める面積を変えるとかって手段もあったけど、どっちがよかったのかしら?
で。肝心のテス。
ドレスアップしていたときは、黒のチェックのドレスを着せようかと思っていたのですが、周りをカジュアルにしたので、黒は着せられなくなりました。それより主人公ですから、華やかな配色にしたいではありませんか。
そこで濃い目のピンクを持ってきました。ほら、もう1枚の絵も「ピンクの発泡酒」でしたしね。(←……そこ?)
でもドピンクだと、それこそ悪目立ちでしょ。そこでトップスは切り替えデザインのブラウス風ワンピース(ノースリーブ)にしてみたんです。
昭和のアイドルっぽくなっちゃったけど……(笑)
「tess&gerbera」
なににしても、キャラを描くときって「顔が命」。表情を描こうと思うと、どうしても上半身のアップまたは腰丈の構図が多くなります。だからトップスにデザインがあるものの方が扱いやすくて(顔周りが華やかになりますものね)、ボトムスは付録みたくなりがち。
今回のテスのコスも、ボトムスを今風にするならゆるパンとかなんだけど、画面下を埋めたくてティアードのスカートっぽいデザインで誤魔化しています。マオのジャケットが青銅色、クリスタのスカートも落ち着いたベージュ系なので、ここに華やかな色を持ってこないと画面がさみしくなっちゃいそうですもの。
なんて反省点を並べていると、また描き直しをしたくなってくる……(泣)
「華」に花を持たせて更なる華やかさを出そうと思うのですが、クリスタにはチューリップを、マオには桜の花を持たせました。こうするとクリスタとマオも、片手に生花の花束、もう片手には「華」という構造になるでしょ。
このイラストのタイトル、「両手に華♡」だから!
クリスタのチューリップはイメージから決めたのですが、マオが桜なのは原作を読んでくださった方ならすぐにピンと来るはず!
だって、他にないじゃーん!! (←本当は芍薬もシーズン的にはOKなんだけどさ)
2人が花を持ってテスだけ無しっていうのも可哀想なので、胸元に大きな造花のブローチを付けています。
石畳は遠近感を出すために、描き込んだのは人物の後ろくらいまで。実際は、その先もずっと続いているんですよ。遊歩道ですから。でもね、全部石畳で埋めちゃったら画面が窮屈になりそうな(気がした)。
それにテーマは「春」なので、軽さとか抜け感とか欲しいと思いませんか?
最初のプランでは、画面上部の左右には、街路樹の葉を描き込んでいこうかと考えていました。遊歩道ですから、道の端には街路樹が植えてありそうではありませんか。
葉の陰から春の陽射しが差し込み、舗道に影が揺れて……とか考えていたのですけど、これ描くのは大変ですよぉ。それに葉っぱを何枚も描き込んでいたら、画面が狭くなって、それこそ窮屈感が否めない。
そこで画面上半分はあえてぎっちり描き込まず、遊歩道に差し込む街路樹の木漏れ日っぽい空気感――雰囲気だけを出せたらな~と。
ええ。出せたらな~はいいのですが、どうすれば出ると思います?
木漏れ日って、陽射しですよね。陽射しを描かずに(コピックの塗りでこれを表現するのは難しいし、技術が追いつかない)それを連想させるには、陰ですか。キャラや石畳の上に陰を乗せていくのが、一番手っ取り早く失敗が少なそうです。
いえ、もう、時間もありませんから、確実な方法を採らないと!
作品を仕上げるためには、どこかで妥協も必要です。(←さすがに学習した)
問題はどうやって陰を乗せていくか、だわ。
ふふふ。みつけちゃいました。デジタルの素材で、木漏れ日を簡単に作れるアイテム!
タイムリミットオーバーしていますし、使えるものは使って、さっさと仕上げろという絵の神様からのメッセージでしょう。
もちろんですわ、神様。そのために頑張ってデジタル作画に手を出したのですもの。加純さんはアナログ派を公言しておりますが、固執しているわけではないので、使える手段は有効に使わせていただきたいのです。
そこで上半分も下地を塗ったら、その先はPCに取り込み、デジタルで効果を上乗せ。ポンポンポン……で出来るのですから、ほんっと魔法の道具だね!
同じようなことを以前アナログでやったことがあるのですが、あの時は手がインクまみれになりました。それはそれで楽しかったのですが、時間が無いときにはデジタル処理は実にありがたい手段です。
こうして完成にこぎ着けた「両手に華♡」
春らしさ、華やかさがでていれば幸い!!
あ、そうそう。
ちなみに今回回避した「決して春らしくない」作品、物語のタイトルは「混沌の淵に潜む竜は永久を嗤う」と云います。
「ある王の苦悩」 ペン画
「こんりゅーヒールズ」 ペン画
こんなのがいっぱい出てくる物語ですから、ほんわりしたストーリー展開であるはずがない。それでも諦めきれなかったので、8月展用に製作し「その剣、火と水を操る」と名付けて出品いたしました。
そちらのお話は、後日。
お暑い中、ご来訪、誠にありがとうございます。
次回はビタミンなデジタルイラストをお送りする予定です。
本編で話題に出ました「ミュージアム」8月展用のイラストはその次に登場する予定かな?
ようやく仕上げたと思ったら、もうその次の企画を考えなくてはいけなくて。なにかいいアイディアないものでしょうかね、11月展のテーマは「秋」なんですの。