54. 加純さん、発泡酒の泡を描く。
お久しぶりです。
もうすぐ8月ですわ!
前回「絶賛、春の絶不調祭」の中、「テスクリ」の挿し絵のお話をしてから、すでに5ヶ月。気が付けばもう盛夏ですよ。読み返してみれば、前回も3ヶ月ぶりのご無沙汰……で始まっているのですが、今回それどころではありません。
ほぼ半年だぁ~!
これだけインターバルが空いたのも、初めてのことです。
全く描いていなかったわけではないのですが。
いえ、むしろいろいろ書いていた(&描いていた)はずなのですが……。
「再会!」 テスとクリスタ挿し絵
溜まりに溜まった分を、少しずつご紹介していこうかと思います。
「chrsta 25」 テスとクリスタ挿し絵(紅棗楼にて)
****
頂き物のご紹介です。
ちはや師匠こと、ちはやれいめい様から。
「テスクリ」のマリア・エルチェシカをいただきました。そう、あのマリアちゃんです。
どーん!
いかがです、良い面構えでしょ。
機嫌悪そ~なこの目つき。最高です。
きっとまたテスののほほんとした態度にムカッときているのでしょう。あれ、アダムとディーの方かしら。
なににしても、マリアちゃんのイライラの種は尽きないのでした。
ちはや師匠、ありがとうございました。
そういえば、春は詩を何編か書いていました。そのうちのひとつ、「枝先の恋」に相内充希様よりバナーをいただきました。
心許ないと嘆きながらも内に情熱を秘めた恋を謳ったこの詩に、これまた情熱的な構図のバナーが!
見上げる女性のシルエットが美しいですよね。
相内様、ありがとうございました。
描きます企画で抽選に見事当選し、管澤捻様に描いていただいたのは「こんりゅー」のリューゼ。
騎士らしい力強さと激しさを感じる絵です。
ちょっとアオリのアングルで、この視線! ですよ。不遜さが表情に出ちゃっているところが、とっても素敵です。「スラリ」と、剣を抜く効果音が聞こえてきそうです。カッコいい!
管澤様、ありがとうございました。
****
昨年参加した『渚と空の展覧会』ですが、本年度は装いも新たに『渚と空のミュージアム』として還ってきました。
今年度も、加純さん参加しております。
第一回目、5月展には作品を2点出品しました。
今回はそのうち、SS用のイラストとして描き起こした「ピンクの発泡酒」のお話をしていきたいと思います。
ご来館いただいた方はご存じだと思いますが、こちらは総勢12名のクリエイター様方が集う合同展覧会。ユーチューブ上で約4分の曲に会わせて、画面上で美術館の展示を巡るように、次々とイラストやSSが展開されるという趣向なのです。
今年も参加者は個性溢れるメンバーなので、そのなかに立ち混じることが出来るのはとても光栄ですし、楽しい。だから精一杯頑張った作品を提出したいのです。
さて、どんなイラストにしたものか。
毎回、これを考えるのが楽しい。
先ず取りかかったのは、SS用のイラスト。
わたしの描いたイラストに、文章担当のクリエイター様がショートストーリーを付けてくださるのです。ですから元となる画が無いことには、SSも仕上りません。責任重大です。
では、どんなイラストを描こうかと考えまして。
イラストを描くときは、なにが描きたいのか決めなければいけません。別にお堅いテーマでなくていいのです。例えば「かわいい女の子を描きたい」とか、「美味しそうなスイーツを描きたい」とか。
まあ、加純さんの場合はその程度。だって崇高なテーマを持ってきたら、なに描いていいのかわからなくなってしまうのですもの。
今回は、「春らしいもの」と「(SS担当者に)自由にいじくってもらえそうなもの」。
春らしい……はわかるけど、いじくって……とは?? とお思いでしょ。
要するに、このイラストはビジュアルだけで成立するものでは無く、文章あってのイラストとなる訳ですよね。だから絵だけで明確なテーマ――「かわいい」とか「美味しそう」といった主張を押し出してしまうより、ちょっと抽象的なものの方が、いろいろな角度からストーリーを付けやすいのではないかと考えたのです。自己主張を抑える、というのかな。
でも、加純さんが描いた絵だとわからなければ、観る方はつまらないですよね。
あらら。なにを描いていいのかわからなくなってきましたよ。
そういえば――。
しょーわな少女漫画を読んで育った加純さんは「キャラのバックは花と点描を描いておけば、ほぼほぼ大丈夫」という思考の人間なので、キャラの背景に好んで花を描き込んでいます。だからわたしの絵の印象は「お花」だとお思いの方が多いというのは、ツイッターのアンケートで見たことがあります。
幸い、花を描くのは苦にならないですし。
「あ~、もうこれは花を描こう!」
ということで、お花。それも薔薇の花を描くことにしました。
薔薇の花なら、資料いっぱい溜め込んでいるのですもの! (←単純な理由だわ)
ただ薔薇の花だけだと構図に間が持てないので、華やかさを増すために真珠とクロッシェレース風なモチーフの飾りを追加することにしました。
ちなみにクロッシェレースとは、かぎ針で編んだレースのことです。
ところが線画を始めてしばらくすると、なんとなく「主役不在」な感じがしてきました。
まあ、それはそうですよね。明確なテーマを主張しないように、静物を配置している構図なのですから。自己主張を抑えようとか言っていたにも関わらす、今度はなんとなく物足りない感じが。なんだか絵が締まらないのですね。
そこで薔薇の花の中に、グラスを置いてみることにしました。
なぜか……と問われると困るのですが、インスピレーションで。薔薇の花は自然物なので人工物がいいかなぁ~、くらいのノリでしょうか。要するに、薔薇や真珠やレースとは全く異質のものを置きたくなったのでしょう。
それもスラッとした、シャンパングラスが良かったのです。春なので、泡の沸き立つシャンパンが似合うかしらと。(←完全に個人の意見です)
今思うと、そこまで描き込まれていた物が「丸い物」ばかりだったので、縦長な物体が欲しくなったのかもしれませんね。
描いてみたら、それとなくまとまった(気がした)ので、そのままペン入れをして彩色に入りました。
実は。
この絵は、一度描き直しているのです。
しかも、まるっと!
修正くらいで済めば良かったのですが、色の選択ミスをしまして、しかもこれだけ色を入れてから「やっぱり、ちょっと……」と思い直し始めたので、もう最初から色を入れ直すしかないと。
理由は一目瞭然で、色が重すぎる! これですね。
5月展用のイラストですよ。「春らしいもの」を目指しているのに、深紅の薔薇とシャンパングラスではクリスマスにしか見えない……。
5月に赤い薔薇が似合わないとは思いません(実際我が家のベランダでも咲いていますし)が、絵に思った以上の重厚感が出ちゃったわ!
はい。アナログ描きは潔く修正のための描き直しに入ります。
同じ下絵をトレースして、今度は色の組み合わせを考える!
軽やかさを出すのなら、白色や黄色、ピンクも素敵なのですが、もうちょっと捻ってみたいと思いませんか。
真珠とモチーフに色を入れた状態。薄い色から入れていきます。
完成作品では目立ちませんが、一応こんな感じで色が入っています。
このあたりで、先にタイトルは「ピンクの発泡酒」にしようと思いついた(タイトル降臨と云うやつです)ので、当然グラスの中身はピンク色で、薔薇の花にピンク系は避けることになりました。発泡酒のピンクを際立たせたいので、背景色は水色あたりでしょうか。
真珠とレース風モチーフも白色系で主張を抑えたい……と使える色を選別していったら、薔薇の花の配色がかなり個性的になってしまった!!
あはは、まあ、いいかぁ~。こんな配色を平気でするのはなろう界隈ではわたしくらいなものよ、ある意味間違いなく「加純さん作」だよね。
――と、開き直る。
下の紫色の薔薇、並べてある5本のコピックの他に、アクセントで淡い黄色やピンク色、緑色も入れています。
配色よりもこの構図で気を使ったのは、遠近感。
グラスの手前の薔薇の花と葉、グラス越しの花の色、グラスの奥に見える葉の色。一輪一輪、一枚一枚、全部塗り方を変えています。デジタルだと不透明度を調整するだとか、もうちょっと簡単に調整できるのでしょうけど、そこはアナログ根気が勝負!
色見本と検討しながら、左手の指に間にコピック3~4本差して、微妙なグラデ塗りを展開するのよ。(←ちなみにこの間6本差しをやりました!)同じ系列の色でも、組み合わせを変えると印象が全く違ってくるのが色選びの面白さ。
例のごとく、気合いは入っているのですが写メは全く撮り忘れました。末尾の完成品でご確認ください。
けど、グラスの質感がいまいち(←作者の欲目!)なのはパースが上手く取れていないかなのかな。
パース……、永遠の課題かも。
肝心の発泡酒の泡は、もう少し大きめに描いてもよかったかも。注いでからしばらく時間が経って、炭酸の気が抜けかけているようなシャンパンになっていますが、この辺は次回の課題としましょう。
(SS作家様がその辺を汲んでくださったのか、オトナなストーリーを付けてくださいました)
とか悩みながら、全体のバランスを調整し、目立たなくなっちゃったレースのモチーフに影を入れたり、最後にホワイトでアクセントを付けて。
それよりタイトルが「ピンクの発泡酒」なのに、いまいちピンクが弱かったのね。原画だと、もっと華やかなピンクで、むしろ浮いちゃうのではと心配していたのですが。
写真に収めたら、意外と地味になっちゃった……。
フラッシュで色が飛んでしまったのもあるし、絵全体の配色のバランスに問題があったのかしら。
完成品はこちら。
「ピンクの発泡酒」 コピック使用
いかがでしょうか。
ご来訪、ありがとうございます。
本文中でご紹介した、『渚と空のミュージアム ~未来へ向かうSTORY~』5月展。
WEB上で展開する展覧会です。
ご来館、お待ちしております。なお近日中に8月展も開催の予定です。